馬場さんの興した全日本プロレスは文化財 守っていく福田剛紀社長の固い決意

「ジャイアント馬場さんの興した全日本プロレスは文化財。守っていきたい」。全日本プロレスの福田剛紀社長が熱い決意で臨んでいる。

期待の星・安齊勇馬を見守る福田剛紀社長【写真:柴田惣一】
期待の星・安齊勇馬を見守る福田剛紀社長【写真:柴田惣一】

毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.152】

「ジャイアント馬場さんの興した全日本プロレスは文化財。守っていきたい」。全日本プロレスの福田剛紀社長が熱い決意で臨んでいる。

 秋山準の後を受け2019年、オーナーから社長に就任した福田氏。小学生の時、父と並んで「アントニオ猪木、坂口征二組VSザ・ハリウッド・ブロンズ(ジェリー・ブラウンとバディ・ロバーツ)」をテレビ観戦しプロレスにはまり、自宅に近い埼玉・大宮スケートセンター大会に通い、団体を問わず生観戦を重ねた。

 色紙を手にうろうろするプロレス少年だった福田氏は、さまざまな選手のサインをゲット。「してあげようか」と優しかったマシオ駒の色紙は「6枚ある」と照れ笑い。

 時を経て、不動産事業、広告、ペットと泊まれるホテル……世界を舞台に実業家として活動中に、全日本プロレス関係者と知り合い、関わるようになった。社長になったのは「さまざまなことが重なった結果」と振り返る。

 いったん、決まってしまえば「馬場さんの作り上げた全日本を守りたい」と子どものころからのプロレス愛が爆発。情熱を注ぎ込んでいる。

 全日本の象徴・三冠王座の流出をいつまでも許しておくことはできない。「永田裕志選手(新日本プロレス)から、一刻も早く取り戻したい」と唇をかみしめる。まずは青柳優馬の奪回(7月2日、東京・後楽園ホール大会)に期待だ。

 6・17東京・大田大会での三冠奪還には失敗したものの若武者・安齊勇馬の成長も楽しみ。ノアの「N-1 VICTORY2023」(8月6日、神奈川・横浜武道館で開幕)の参戦も決まった。「今が伸びる時期。どんどんキャリアを積んでいってほしい。新日本プロレスへの本格乗り込みも…」とバックアップを惜しまない。

 ジュンとレイの斉藤兄弟にも「超大型で野性味あふれる兄弟。世界に進出するときの切り札になる」と目を輝かせる。

 実際に世界進出も考えている。「簡単なことではないのは分かっているが、いつかは実現させたい。そのために先をにらみながら、今を大切にしていきたい。やはり全日本プロレスは歴史と伝統ある団体。譲れない部分や守らなければいけないところもある」と燃える闘志をクールに口にする。

 実は自身もスポーツ好き。水泳に取り組み、パンパシフィック・マスターズ大会で銀メダルを獲得したこともある。「今は週に2回、プールに行けるかどうか」というものの、どうやら「ワタシ、脱いだらスゴイんです」とばかり、体は鍛え上げられているようだ。

 Bリーグ・さいたまブロンコスの社長も務めており「コラボイベントや合同トレーニングなど、色々と仕掛けていきたい」とニッコリ。これまで以上に積極的な情報発信に取り組んでいく。

 趣味でもある映画もその舞台となる。映画製作にも関わってきた。「全日本の選手をスクリーンに出したい。イケメンから悪役まで個性豊かな人材がいる。俳優として活躍もできるはず」とプランはいくつもある。自ら「樹海村」に出演しており、映画界との提携はお手のものだ。

 豊富な人脈を駆使して、全日本プロレスをドンドン発信していきたいという。「最近では、全日本プロレスに関して“多幸感”という言葉が散見される。プロレスで幸せを感じてもらえる、これはとてもすてきだし大切なこと。観ていただければ、会場に足を運んでいただけたら、その魅力にハマっていただけるはず」と自信をほのめかす。

 多くの個性的な選手が所属しているが、ヘビー級の選手は大型ぞろい。大きな選手で大きな満足感を得られると胸を張る。「是非、観戦に来ていただきたい」とソフトで温和な語り口だが、キッパリ言い切った。

 多くの斬新なアイデアもある。一歩一歩、実践していくためにも自ら前面に立つ。百鬼夜行、魑魅魍魎とも言われるプロレス界で、常識人として今までは遠慮がちというイメージで見られていた福田社長だが、覚悟は固い。

「歴史や伝統を守りながらも攻める。選手はリングで闘っている。我々フロントも闘わなければ」と社長自ら率先して動く。

「ゼンニチ新時代」というスローガンを掲げる全日本プロレスから目を離せない。

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