黒木瞳「生涯女優と決めていない」 “引退”家族に打ち明けた過去「『やめるやめる詐欺』って」

女優の黒木瞳が映画『魔女の香水』(6月16日公開、宮武由衣監督)で、若い女性を成功に導く魔女と呼ばれるミステリアスな女性を演じている。近年では、クリエーターとしても活動の幅を広げているが、大切にしているのは出会いだという。

インタビューに応じる黒木瞳【写真:山口比佐夫】
インタビューに応じる黒木瞳【写真:山口比佐夫】

映画『魔女の香水』でミステリアスな女性演じた黒木瞳インタビュー

 女優の黒木瞳が最新作『魔女の香水』(6月16日公開、宮武由衣監督)で、若い女性を成功に導く魔女と呼ばれるミステリアスな女性を演じている。近年では、クリエーターとしても活動の幅を広げているが、大切にしているのは出会いだという。(取材・文=平辻哲也)

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『魔女の香水』は、魔女と呼ばれる女性、白石弥生(黒木瞳)が創る香水の香りと言葉で、仕事を失った派遣社員の、若林恵麻(桜井)を華やかな未来へと導くシンデレラストーリーだ。製作統括は、日本最大級の経営者の会「エメラルド倶楽部」の代表理事、菅原智美さん、監督は宮武由衣さんが務め、すべての女性をエンパワーメントする内容になっている。

「菅原さんは今まで出会った女性で、1番エネルギッシュだったかもしれない。失敗しても、壁にぶつかっても、前に進んでいくエネルギーがおありになる。これから起業なさりたい方の背中を押したいというのが映画作りの始まりだったので、私も女優として、お手伝いができたらいいなと思いました」

 演じたのは悩みを抱える女性たちの背中を押す、魔女と呼ばれるシルバーヘアの女性だ。その過去には恋愛の秘密を抱えている。

「弥生は、その愛とは裏腹に孤独を持っている人。すごい女性だなと思いました。あそこまで一途に思えるのは理想的だなと思いましたけど、私はあんな風にはいられない。だから映画として成立しているんでしょうね。映画は、香水をアイテムとして選ばれたのが斬新で面白いなと思いました」

 香水自体にはあまり詳しくはないという。

「私は2種類しか使ったことがないんです。宝塚時代には、イブ・サンローランのリヴ・ゴーシュ、今はマダムロシャスのビザーンス。宝塚時代の香水を、やめた後につけてみたら、現役中のことを思い出すんですよ。退団後は宝塚のことは忘れて、ゼロから出発しようと決めたので、つけるのをやめました。両方とも廃盤で、使いかけのものがメルカリで高額で売っています。あと2本ストックがあるので、2年くらいは大丈夫ですが、今回の映画を機に新しい香りを探そうかと思っています」

 黒木は2016年には吉田羊主演の映画『嫌な女』で監督業にも進出。これまで4本の映画のメガホンを取り、クリエーターとしても活躍している。

「もちろん女優がメインですし、あっち側(製作)に行くときは覚悟します。体力的にもメンタル的にもエネルギーがいります。製作の方にいると、『よくカメラの前で演技できるな』とも思いますし、本当に全く違う脳になるんです」

 最近でも、脚本・企画・出演による朗読劇『ルビンの壺が割れた』(東京・紀伊國屋サザンシアター、6月13~15日)を手掛けたが、これは原作との出会いがきっかけだという。

「面白いなと思う小説(原作・宿野かほる)があって、でも映画では難しいな、じゃあ、舞台かなと、いろいろ考えるわけですよ。何にも決まってないのに、『そうだ朗読劇にしたら成立するかな』と考えたら、もう脚本を書いているわけです」

輝き続ける秘けつについて語った黒木瞳【写真:山口比佐夫】
輝き続ける秘けつについて語った黒木瞳【写真:山口比佐夫】

輝き続ける秘けつは「好きなことしか、してないからですかね」

 宝塚時代から第一線でいきいきと活躍しているが、その秘けつは何か。

「好きなことしか、してないからですかね。中2の時、同級生が体育館で菊池寛の『父帰る』を演じたのを見て、お芝居って面白そうだなって思ったのが、一つの出会いだったんです。それで、たまたま宝塚を見て、素晴らしいなと思って、(宝塚音楽学校に)願書を出してしまった」

 それでも、50代の頃には、女優を辞めたいと思った瞬間があったのだという。

「死ぬまでそういうことを思わないだろうな、と思っていたんですけども、ある出来事があったんです。夫には、『私、女優を辞めるから』って言ったら、3秒ぐらい無言で、 『いいんじゃない』って。娘にも『ママ、女優を辞めるから』と言ったら、やっぱり3秒ぐらい間があって、『いいんじゃない』。それでも、ずっと仕事をしているので、家族からは『やめるやめる詐欺』って言われていますよ」と笑い。

 この経験が、コロナ禍での緊急事態宣言で全てのエンターテイメントが止まった時に生きた。

「舞台はなくなるわ、何はなくなるわって、本当に毎日が日曜日になってしまった。でも、何にも怖くなかったんですよ。一度やめると思ったことが今思えば、逆によかったのかもしれない。今も、生涯女優とは決めていない。何事もご縁、出会いですから。出会いがあれば、何かやっていきたいですし、なければ、遊びますよ」。そう言って、微笑みを浮かべた。

□黒木瞳(くろき・ひとみ)宝塚歌劇団入団。入団2年目で月組娘役トップとなる。映画『化身』(1986年)では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『失楽園』(97年)では、第21回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。『破線のマリス』(2000年)では日本映画評論家大賞女優賞受賞。『仄暗い水の底から』(02年)、『東京タワー』(05年)、『終わった人』(18年)など数多くの映画作品に出演。

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