富裕層に学ぶ「一生お金に困らない習慣」 実践していたのは3つのキーワード 意外な共通点はペットの犬

相次ぐ物価高や燃料費の高騰で、庶民の生活はますます厳しくなるばかり。そんなときに、参考にしたいのが富裕層の生き方だ。「富裕層=ぜいたくな暮らし」のイメージは過去のもの。亡くなる間際まで堅実な生活を送っている富裕層も多い。2月に発売した著書『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)が2.6万部を突破し、これまで数多くの富裕層と出会ってきた元国税OB・小林義崇さんに、“一生お金に困らない富裕層の習慣”を聞いた。

1億円超の資産を持つ富裕層(写真はイメージ)【写真:写真AC】
1億円超の資産を持つ富裕層(写真はイメージ)【写真:写真AC】

富裕層のイメージ一変 元国税OBが語る「本当の姿」

 相次ぐ物価高や燃料費の高騰で、庶民の生活はますます厳しくなるばかり。そんなときに、参考にしたいのが富裕層の生き方だ。「富裕層=ぜいたくな暮らし」のイメージは過去のもの。亡くなる間際まで堅実な生活を送っている富裕層も多い。2月に発売した著書『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)が2.6万部を突破し、これまで数多くの富裕層と出会ってきた元国税OB・小林義崇さんに、“一生お金に困らない富裕層の習慣”を聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 小林さんの言う富裕層とは1億円超の資産を持つ人。資産だけ見れば、人生においてはまぎれもない「勝ち組」に当たる。羽振りがよく、豪邸に住み、ブランド服を着て、高級外車に乗る。そんなイメージがあるだろう。

 しかし、東京国税局の国税専門官だった小林さんの見方は違う。

「私も元々税務署に入るまでは、お金持ちの人というのは派手な生活をされているという印象があって、たくさん稼ぐけれどもその分たくさん使う、という印象を持っていたんですね。ただ、相続税調査をして、富裕層の方がお亡くなりになってそのご家族の方のお話を聞いていると、基本的な生活ぶりはそんなに変わらないなと思ったんです。当時まだ20歳そこそこの新卒で入った自分と比べても、特にぜいたくしている感じはなくて、見た目的にも本当に普通の方という印象でした」

 相続税調査では、亡くなった本人だけではなく、家族の分の預金まで調べる。そこでも、印象は変わらなかった。「特に大きな散財をしている印象はなくて、むしろ質素倹約に、絞れるだけ絞って必要最小限の生活費でやりくりされている印象を持ちました」。小林さんは強い衝撃を受けた。

 その後に出会った富裕層も、ぜいたくという雰囲気はなかった。服はカジュアルなファストファッションで、自宅にはあまりモノがない。パッと見では富裕層と分からない姿に何度も直面した。

 そうした富裕層からは、一般のサラリーマンが学ぶべきノウハウも多いと、小林さんは指摘する。著書では実に29の「富裕層の習慣」を紹介している。

 例えば、お金の管理。「普段のお金の出入りをきっちり管理されているご家庭が多いです。例えば、通帳の記帳をこまめにしていて、これは何に使ったものだとかメモされていたり、別途家計簿をつけられていたりする。一般の人よりもむしろ普段のお金の細かいところまでチェックしているところはすごく印象に残っています。お金に踊らされない感じで、収入が増えたからといって、支出を安易に増やさないですね」

 コツコツと貯蓄し、むだな金は一切使わない。塵も積もれば山となる。まさに富裕層から学ぶ「一生お金に困らない習慣」の基本だ。

「なので自然とお金が貯まっていくんですよね。高齢になって年金暮らしでそんなに大きな収入のないご家庭でも、収入の範囲内で生活を賄っているので、結果的にお金がだいぶ増えた状態でお亡くなりになります」。富裕層の共通点だ。

 富裕層は、住宅や土地を先代から引き継いでいるため、そもそも住居費で悩むことが少ないという。どうすれば億万長者に近づくことができるのだろうか。

元国税OBの小林義崇さん
元国税OBの小林義崇さん

億万長者に近づくことができる3つの方法

 小林さんが挙げたキーワードは「投資」「独立」「人間関係」の3つだ。

 まずは投資。これは富裕層が資金を惜しまないことの一つだ。株式、不動産投資…。定期預金に預けるだけで金利の恩恵を得られたのは過去のこと。“失われた20年”で経済も低迷する中、早い時期から資産を運用することでその価値を何倍にも高めることができる。

「今は特にiDeCo(イデコ)やNISAなどで政府も積み立て投資を支援しています。そこにうまく乗っかる形で、ある程度のお金を長期的に運用することですね。20年30年先ぐらいまで積立投資を続けるぐらいやっていけば、いずれ億単位の資産までいけると思っています」

 小林さん自身も実践している。「最初はプロの投資家の方に取材をして教えてもらったんですよ。『分散投資という形でコツコツ育てていくのが結局一番強いんだよ』という話があって、言われた通りやってみれば、確かに着実に含み益が増えてきているような状況になっています。自分が60代70代ぐらいになったときの老後資金にしようと思って毎月やっていますね」

 また、仕事においても、富裕層のキャリアには共通するところがあった。「自営業者が多かったです」。一つの企業で終わるのではなく、独立したり、起業したりして、複数のキャリアを歩んでいる。

「富裕層の方々は、単一のキャリアだけで富を築いたわけじゃないんですよね。例えば新卒で大手企業に入ってそのまま勤めただけでは、なかなか億万長者まではいけない。ですが、途中でどこかで勇気を出して独立をすれば収入を大きく増やせるかもしれません。人がやらないことをやってみて、何回か失敗するにしても、チャレンジを続けて最終的に成功することができれば、サラリーマンよりも多く稼げる可能性が広がってきます」

 終身雇用形態が崩れ、副業や兼業が認められる時代になっている。小林さんも公務員を退職し、フリーライターという新しい分野に飛び込んだ。「実際に独立に踏み切れたのは、富裕層の人たちを知っていたからというのがあると思います。自分でチャレンジをして、経済的に豊かになって家族の生活を守っている人がこんなにもたくさんいるんだということを知っていましたので、自分も何とかやっていけるんじゃないかと思いました」

 そして、最後は人間関係だ。

「これは、今いろんな社長さんとお話をさせていただく中で気づいたことですが、自分一人の力では新しい可能性にたどり着けないんですよね。人から影響を受けて、人から『あなたはこういうことがいいんじゃない』って言われたときに、それに足を踏み入れてみることで、視野が広がり自分が思いもよらなかった可能性に導かれていく。そういう意味での人のつながりが人生を左右すると思っています」

 小林さんも公務員時代は人脈が限られた。「会社の人間関係だけで、そこから出ようとしなかった。何も変化がなかったんですよね。一歩飛び出す意味でライタースクールに入ってみたり、異業種交流会に出たりすると、そこから新しい道が広がっていって、結果的に大きな収入につながるようなこともありました」。そのためには、まず自分を知ってもらうための努力も必要だ。

「自分がどういう人間であって、どういうことをやりたいのかというのを、できれば何かしらの形で表現した方がいいと思うんですね。SNSとかブログでもいいと思います。私自身もライターになりたいっていうことを表明すると、出版社などいろんなところにつないでもらえました。まず自分が何者かっていうところを明らかにしないと、周りの人も動いてくれないと思うので、そこはまず自分で決めちゃうことが大事なのかなと思います」

著書『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)
著書『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)

絶対まねしてはいけない富裕層の習慣とは?

 節約上手な富裕層だが、ためた財産は効果的に使っている。

「普通の人よりもお金をかけているのは教育費ですね。子どもはもちろん、孫に教育費を出すことも結構よく行われていますし、あとはお子さんが家を建てるときに頭金としてまとめてポンと1000万円を出してあげるような、そういう気前の良さがあります」

 庭の手入れに、大金をつぎ込む富裕層もいた。「教育費や庭の手入れというのは、お金かけたあとまたしばらく残るもの。お金を払った後、効果が長続きするようなお金の使い方を実践されている」。むやみに散財するのではなく、賢く使う。ここにも、億万長者の哲学がある。

 また、意外な共通点としてはペットだ。「よく見たのは室内飼いの大型犬です。ペットと一緒に暮らしている富裕層が多かったですね。他の元国税の方々にもお話を聞いたところ、同じ認識でした」。富裕層は子どもが独立しており、夫婦で暮らしているケースが多い。「犬なので毎日散歩に行く習慣ができて、日々時間の使い方や健康にいいメリットがあるんですよ、とおっしゃってましたね」

 一方で、一般人がまねしてはいけない富裕層の習慣も。「富裕層の中には借金を使って投資をしている人もいます。一般の人がこれをやったら絶対ダメなんですよね。借りた金額の分、金利を返済しなきゃいけないリスクを負うことになるので」と小林さんは付け加えた。

 資産や財産は生活の中で大切な要素の一つ。人生に彩りを添えることは間違いない。ただ、それがすべて幸せにつながるとは限らない。

「お金持ちに対するうらましいなという感情は、元々あったと思うんですけれども、相続税調査で資産家の方を知れば知るほど、お金持ちにはお金持ちならではの大変なことがいっぱいあると分かってくるんですよ。一つ言えるのは、自分でお金をコントロールできているという感覚を持っている人は、持っている資産によらず幸せなんだと思います。自分がどれぐらいのお金を持っていて、どういうふうに使っていけばいいかをコントロールできる。要はその生活に安心感がある人ですね。お金持ちの中にもできている人できていない人がいるので、その辺がポイントになってくるのかなと思います」

 富裕層であっても、そうでなくても、心穏やかな生活を目指していきたい。

□小林 義崇(こばやし・よしたか)1981年福岡県生まれ。西南学院大商学部卒業。2004年東京国税局の国税専門官として採用。2年連続で東京国税局長より功績者表彰を受ける。17年に退局し、フリーライターに転身。連載記事多数。

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