「自分はDEEPにこだわっている」 名門の看板背負う神田コウヤが挑む超新星との決戦

格闘技団体「DEEP」のフェザー級暫定王座決定戦が11日、東京・後楽園ホールで行われる。何人もの猛者を輩出している“パラエストラ軍団”の神田コウヤ(27=パラエストラ柏)が出場し、3戦無敗の新星・五明宏人(27=トライフォース赤坂)と対戦する。暫定王座をかけた大一番を前に現在の心境やこれまでの格闘技人生について神田が振り返った。

「自分はDEEPにこだわりを持っている」と話した神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】
「自分はDEEPにこだわりを持っている」と話した神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】

11日に暫定王座をかけた大一番

 格闘技団体「DEEP」のフェザー級暫定王座決定戦が11日、東京・後楽園ホールで行われる。何人もの猛者を輩出している“パラエストラ軍団”の神田コウヤ(27=パラエストラ柏)が出場し、3戦無敗の新星・五明宏人(27=トライフォース赤坂)と対戦する。暫定王座をかけた大一番を前に現在の心境やこれまでの格闘技人生について神田が振り返った。(取材・文=島田将斗)

 UFCに行って、王者になっていたはずだった。名門・パラエストラの生え抜き戦士の描いていた夢。現実はそう甘くなかった。

 2018年にDEEPでプロデビュー。これまでのプロ戦績は14戦10勝(6KO)4敗だ。デビュー当時に描いていた夢と現実は全く違う。14回、ケージに上がる中でプロの厳しさを肌で感じていた。

「当時は、あっという間に無敗で10連勝して、もうUFCに行って王者になってというのは描いていました。2戦目で8秒失神KO負けをしたり、4戦目でも1R・一本負け。レスリングだけで戦おうとして通じない部分がありました。そこからレスリングを捨ててMMAで勝てるようにと考えて練習していきました」

 レスリングはファイトスタイルのベースとなっている。大学3年時にはグレコローマンスタイルで全国3位入賞、4年時には準優勝している。そんな競技との出会いを明かす。

「小学1年生のときに柔道を始めました。小学4年生の時に鶴屋浩代表がキッズ柔術を始めると聞いて、そこから1期生として練習し始めました。レスリングは柔術の試合に初めて出たときにレスリング選手と当たって全く歯が立たなかったんです。それで悔しくて柏のレスリングチームに入りました」

 それまで柔道、柔術とやってきた神田にとっては大きなショックだった。「最強だと思ってた柔道より強い格闘技があるんだ」と今でもその感覚は忘れていない。

 そんなレスリングをもってしても、それだけでは通用しないのがMMAの世界。常に進化し続けないと生き残れない過酷な環境だ。4敗のうちの1つは、現在、RIZINで活躍する牛久絢太郎と戦った2021年12月のタイトルマッチ。これも成長の1つだったという。

「やっぱり実力が足りなかった。あそこで勝てたとしても、次勝てなかったと思います。負けて自分は損していないと考えています。成長のきっかけになりました」

 タイトルマッチでの敗戦からは2連勝。昨年5月には青井人に3R・TKO勝ち、11月には中村大介に判定勝ちを収めた。対して、今回の試合で戦う五明は次がプロ4戦目だ。MMAの先輩としてのプライドをのぞかせた。

「中村選手がDEEPフェザー級で1番強いと思っていました。その選手を倒してしまったので、消去法で選ばれたのかなと思います。3Rの選手じゃないというか、2Rで無名の選手ばかりとやってきているので、実力は向き合ってみないと分からないですよね」

五明対策についても明かした神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】
五明対策についても明かした神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】

伝統派空手の現役選手と特訓

 普段の体重は75キロだという神田。試合4週間前から減量プログラムを組み、当日までに9キロを落とす。驚くべきは減量期間もファイトウィーク直前まで一般会員やキッズクラスのインストラクターとして働いていることだ。

「結構、自分の考えがさえてたりするんですよね(笑)。普段教えるよりも会員さんに伝わりやすくなる時もあるんです。もちろん元気がないときもあるのですが、そういうのは見せないように心がけています」。そう答える顔色は良い。コンディションも良さそうだ。

 今回、五明対策として取り入れているのは伝統派空手の現役選手との打撃の練習だという。「まるで歯が立たない」と白旗をあげる。

「MMAの選手とスピードが違いすぎるんです。パンチとかが全然見えないんですよ。こっちが1発打っている間に相手は2、3発打ってくる印象です。空手の偉大さが分かりました」

 五明も伝統派空手をバックボーンに持っている。さらに朝倉兄弟も汗を流すトライフォース赤坂所属。未来とも練習を積んでいる。日本フェザー級戦線の上位と練習を積んでいるということはどう感じているのか。

「特には何も思わないですかね。強い選手と試合をして勝ってきた選手の方が自分は怖い。誰々と練習しているとか、有名な選手と同じ空間で練習しても強くなるわけではないです。自分で頭と体で理解して練習しないと無意味なので関係ないですよね。本当にうち(パラエストラネットワーク)ってたくさんの選手が入ってきて、その分たくさんの選手が抜けているのを見ているので」

 昨年11月の中村戦後には今年の目標について「とにかく肩書きがほしい」と話していた。神田にとってDEEPのベルトは他に替えのきかないものだ。

「今、DEEPは選手層が増していっています。その中で自分がデビューした団体で王者になりたいというのが1番です。それが団体に対しての恩返しでもあります。強いやつがDEEPにきたって逃げることもしないですし、自分はここにこだわりを持ってやっている感じです」

 UFC王者になる夢もまだ諦めてはいない。ベルトを手にし、2023年を飛躍の年とする。

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