まんじゅうを眺めるだけの動画が大反響 創業200年の老舗がSNS発信に込めた狙い

ほかほかの湯気に、真っ白でふわふわな生地。まさに今蒸しあがったばかりのおいしそうなまんじゅうの動画が今、話題を呼んでいる。「実証実験」と銘打たれて公開されたこの動画はいったいどんな狙いがあるのか? 今回、ツイートした「乙(きのと)まんじゅうや」(新潟県胎内市)のSNS担当・久世俊介さんに投稿の意図と反響について聞いた。

湯気が立ち上るまんじゅうの映像が話題に【写真:ツイッター(@kinotomanju)より】
湯気が立ち上るまんじゅうの映像が話題に【写真:ツイッター(@kinotomanju)より】

投稿の裏にあった地域への愛

 ほかほかの湯気に、真っ白でふわふわな生地。まさに今蒸しあがったばかりのおいしそうなまんじゅうの動画が今、話題を呼んでいる。「実証実験」と銘打たれて公開されたこの動画はいったいどんな狙いがあるのか? 今回、ツイートした「乙(きのと)まんじゅうや」(新潟県胎内市)のSNS担当・久世俊介さんに投稿の意図と反響について聞いた。

 週末には寒波の到来が予想される日本列島。身も心も温かくなる映像だ。「ただいま弊社では、蒸しあがった饅頭を眺めるだけの動画がどの位の方に刺さるかという実証実験を行なっております。」と書かれたツイート。久世さんは「朝もお客様からツイート見たよ、と声をかけていただきました。おかげさまで北海道や九州からも注文をいただいております」と喜びを口にした。

 当社が公式ツイッターを始めたのは2019年10月。当初は商品情報やイベントをシンプルに伝えていたが、直後から新型コロナウイルスが流行。外出自粛が要請され、声高に「お店に買いに来てほしい」とは言えない中で、「改めて会社の存在意義を強めていきたい」と考えた久世さんはウィットに富んだツイートを始めるようになったという。

「『60ぴき しか のこっとらんが
 おまえに 1ぴき 売ろう!』

『ほう ゆげの蒸シモン ウマソダネが いいんじゃな?』

何故か頭から離れず懐かしのネタからスタートし蒸した、
おはようござい蒸す。
今日も一日頑張り蒸す。」

 ゲーム「ポケットモンスター」風のツイートに、まんじゅうとかけて語尾に「蒸す」を使用した文面。企業のアカウントであるにもかかわらず、シュールなツイートを続ける理由を問うと、「SNSは入り口が非常に大切だと思っています。創業から200年を超える老舗のため、最初は周囲の反応が気になったが、フォロワーの方からも好反応をいただき、この形に手応えを掴みました」と感触を明かした。

 今回の「実証実験」はどのようにして生まれたのか? 久世さんは「毎年年始から大体15日付近までは、近接する乙宝寺への初詣とお焚き上げに来られる多くの方でにぎわい、お店も大変忙しくなります。その中で自分自身、非常に疲れてしまい、特に投稿するネタも思いつかず、皆さんも同様に疲れているのでは、と思い、ただぼーっとする動画を投稿しました」と明かした。動画を投稿するやいなや、「刺さりまくっています」「美味しそうです」と反響を呼び、18日18時現在で1.9万RT、7.8万件のいいね!を記録している。「実験結果」をたずねると、「通知が大量にきており、全部は追いきれていないのが現状です。新しい方はもちろん、既存のフォロワーさんも喜んでくれており、大変ありがたい」と笑顔を見せた。

 「乙まんじゅうや」は乙周辺の魅力や文化をより深く知ってもらうため、お店として観光ガイドのサービスも行っている。久世さんは「ガイドを通じてこの地域、そして歴史を楽しんでもらい、乙を当店ごと知っていただきたい」と地元への愛着を語った。

 ちなみに今日もまんじゅうの出来栄えは「上機(蒸気)嫌に(笑)」になっていたそう。「まんじゅう自体もそうですが、機会があれば乙までぜひ足を運んでいただいて、ツイッターも引き続き楽しんでいただけますと幸いです」。古くから共にある乙とツイートを楽しみにするフォロワーのために、今日もまんじゅうを蒸しあげている。

次のページへ (2/2) 【動画】蒸しあがったまんじゅうの「実証実験」映像
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