滝藤賢一、初主演映画でドラァグクイーン役 苦心も2大女優を「デフォルメしまくって」

俳優の滝藤賢一(46)が初主演した映画「ひみつのなっちゃん。」(監督・脚本、田中和次朗)が公開中だ。3人のドラァグクイーンが仲間の死をきっかけに、地方への旅に出て、自身の生き方を見直すロードムービー。滝藤がキャラクターのモデルにした人物とは?

「ひみつのなっちゃん」で映画初主演を果たす滝藤賢一【写真:ENCOUNT編集部】
「ひみつのなっちゃん」で映画初主演を果たす滝藤賢一【写真:ENCOUNT編集部】

「ひみつのなっちゃん。」で映画初主演「役者としてやるべきことは変わらない」

 俳優の滝藤賢一(46)が初主演した映画「ひみつのなっちゃん。」(監督・脚本、田中和次朗)が公開中だ。3人のドラァグクイーンが仲間の死をきっかけに、地方への旅に出て、自身の生き方を見直すロードムービー。滝藤がキャラクターのモデルにした人物とは?(取材・文=平辻哲也)

 映画ではドラァグクイーンを華麗に、時にユーモアたっぷりに演じた滝藤だが、おしゃれなファッションに身を包み、無精ひげを蓄えた姿は和製ジョニー・デップといったかっこよさだ。

 劇中で演じたのは盛りを越えて、ダンスを続けるべきか、悩んでいるドラァグクイーンのバージン。仲間なっちゃんの死をきっかけに、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)とともに自然豊かな地方都市へ旅をし、自身の考え方を変えていく。田中監督の完全オリジナル脚本でデビュー作となる。

 テレビ、映画、舞台、CMに引っ張りだこ。名バイプレーヤーとして知られるが、意外なことに20年以上のキャリアで劇場映画の主演は初めて。

「うれしいですけど、役者としてやるべきことは変わらないですね。共演者とコミュニケーションを取ったり、作品に対する責任はあるでしょうか。僕はそういうことをやっている先輩たちが素敵だなと思ったんで、コミュニケーションを取るようにしていますね。リラックスして、楽しんで帰ってほしいんです」

 キンチョウ「ティンクル」CMでは、女装姿でオネエ言葉を発し、強烈なインパクトを見せて話題になったが、ドラァグクイーン役も初めて。

「あのCMも、実は撮影していくうちにどんどん、女性でやってくれとなっていったんです。ちゃんとヒゲを剃りたかったし、もっと綺麗になりたいなと思いましたけど、そこが狙いではなかったですからね。楽しくやらせていただきました」と笑い。

 それでも、見事にやり遂げてしまうのは名優のなせる技。今回のドラァグクイーン役も苦心したという。

「僕はLGBTQ+ではないですから。自分に全くない要素で芝居していかないといけない。結局、どこまでやっても、(ドラァグクイーンの)ふりになってしまうので、それを自分のものに落とせるのか。それには時間が必要ですし、監督とのコミュニケーションだと思っていました。監督とは、家の近くのピザ屋で台本の1ページ目からセッションしました。性別というよりは、1人の人間が自分のピークを越えて、もう一度返り咲くために葛藤し、悩み続ける物語です。そういう思いは僕にもあります。体も動かなくなってきて、情熱や勢いだけではもう戦えない。この世界は厳しいですから。今、自分に出来ることを模索し、体現しなければならない」と話す。

ドラァグクイーンの役作りについて語った滝藤賢一【写真:ENCOUNT編集部】
ドラァグクイーンの役作りについて語った滝藤賢一【写真:ENCOUNT編集部】

役作りで大事にしているのは準備「そういう意味では本当に恵まれました」

 イメージしたのは、オードリー・ヘプバーンとマリリン・モンローという対照的な2大女優だった。

「最初に登場する黒の衣装はセントジェームス。かかと高めのミュール、カルティエの時計。普段はオードリー・ヘプバーンのように品よく、後輩たちの相談相手でもあるから、表情は柔らかく。ショーの時は、モンローのようなセクシーでダイナミックな感じ。全身の毛を剃ったり、女性らしい言葉遣いや動きをデフォルメしまくって臨みました」

 ドラァグクイーン映画やYouTubeの動画も参考にした。「コロナが大変な時だったので、ショーを見に行って実際の人を研究することはできなかったんです。そこで、もしコロナになったら、『二丁目で飲んでてコロナになりました』とは言えませんからね」。

 役作りのルーティンは決めていないが、いつも大事にしているのは準備だという。

「そういう意味では本当に恵まれましたね。現場はとても穏やかでした。コロナで1年スケジュールが押したということもあって、時間がたっぷりあったので、衣装のアイデアを監督に送ったりもしていました。時間が取れると、とてもいい撮影になります。それまで悩めるし、やるべきことが明確にもなってくる。大概の現場は、瞬時に自分がやるべき芝居を選択していく。厳しい環境の中でスタッフ、キャストがアイデアを出し合って、面白い作品をつくる努力をしてるんです」と告白する。

 その意味では、本作はやりたいことを出し切り、自信も持っている。初主演映画ということで、フィルモグラフィーに長く残る1本になりそうだ。「舞台挨拶やトークショーができるのであれば、可能な限りやっていきたい。そうすべき作品だと感じています。『セイジ―陸の魚―』(12年)や『愛の渦』(14年)は小さなところから発信し、何度も出演者がトークショーなどをやって、映画を盛り上げたのを見てきましたので、そういう映画になったら嬉しいです」と期待を込めた。

□滝藤賢一(たきとう・けんいち)1976年11月2日、愛知県出身。高校卒業後にオーディションに合格し、映画「バレット・バレエ」に出演した後、仲代達也主宰の無名塾に参加。数多くの舞台で活動する一方、映画「クライマーズ・ハイ」やドラマ「半沢直樹」などに出演し人気を集める。近作に「探偵が早すぎる」「家電侍」など。NHKプレミアムドラマ「グレースの履歴」(3月19日22時~全8回)が控えている。

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