「NieR:Automata FAN FESTIVAL」リポート 豪華声優陣による朗読劇と名曲の生演奏が融合

スクリーンには「ERROR」の文字…真っ赤に染まった会場【写真:MASANORI FUJIKAWA】
スクリーンには「ERROR」の文字…真っ赤に染まった会場【写真:MASANORI FUJIKAWA】

休憩を挟み「Concert Stage」へ

 休憩中は、ふたたびオペレーター6Oとオペレーター21Oによる通信が流れ、バンカーに滞在しているかのような雰囲気に。しかし休憩開始より15分を過ぎたあたりから、不穏な通信が混ざり始める。「ノイズ入りのデータ」「定期連絡の遅延」……観客たちも異変を感じ始めたころ、オペレーターたちの会話によりウイルス侵入による汚染が起こったことを知らされる。スクリーンには赤い文字で大きく「ERROR」と表示され、会場内もライトで真っ赤に。来場者が手にしていたエミールペンライトも、すべてが赤く光っていた。どこからか笑い声が聞こえ、その声がどんどん大きくなっていったかと思うと、音声が突然途絶える。ここで、「NieR:Automata」の楽曲である「崩壊ノ虚妄」が流れ、「Concert Stage」の始まりとなった。

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「Concert Stage」の楽器編成は、ギター(後藤貴徳氏)、ベース(鈴木智氏)、ピアノ(伊賀拓郎氏)、パーカッション(野崎めぐみ氏)、ストリングス(室屋光一郎氏、徳永友美氏、島岡智子氏、堀沢真己氏)。1曲目の「崩壊ノ虚妄」では、バイオリンの透き通るような旋律が響く中、スクリーンに「NieR:Automata」のバンカー崩壊シーンが映し出された。

 11945年に起こった、バンカーへの論理汚染攻撃やヨルハ部隊への汚染拡散、居住区内の火災、融合炉付近での爆発、2Bと9Sが脱出した後のバンカー陥落までの時系列も、テロップで表示される。会場に流れていた曲は穏やかに2曲目の「美シキ歌」へと繋がり、2人のボーカル、エミ・エヴァンスとジュニーク・ニコールもステージのセンターへ登場し、会場全体に響き渡る歌声を披露した。

 どうやらこの「Concert Stage」は、「NieR:Automata」で人類会議の嘘が暴かれ、バンカーが陥落した後――いわゆる「Cルート」の物語をベースとして、ゲーム本編では公開されなかった2Bたちの記録を体験していくものになるようだ。会場全体がバンカーと化していたのも、そのためだったのかもしれない。

「Concert Stage」に登場したエミ・エヴァンスとジュニーク・ニコール【写真:MASANORI FUJIKAWA】
「Concert Stage」に登場したエミ・エヴァンスとジュニーク・ニコール【写真:MASANORI FUJIKAWA】

「NieR:Automata」と「NieR Replicant」のキャラクターが邂逅

 曲が終わると場内は暗転し、スクリーンには2BがA2に刃で貫かれる場面が流れる。続けてテロップで「第一節『記憶のない都市』」と表示されると、声優陣がステージに上り、スポットライトの光を受けながら朗読劇が始まった。

「NieR:Automata」の時系列で言うなら、この物語はCルートでウイルスに汚染された2Bが、A2に自分を殺すよう依頼し、2Bの命が尽きた直後のこと。2Bとポッド153は、色を失った見知らぬ都市に迷い込んだらしい。体に刃を突き立てられ、死んだはずの自分が行きていることを訝しみながらも、離れ離れになった9Sを探す2B。そして、都市の別の場所では、A2とエミールが出会って脱出口を探すことになったようだ。

 A2とエミールの会話に寄り添うように、ギターが3曲目の「穏ヤカナ眠リ」を奏で始める。そこへピアノ、バイオリンが順に加わっていき、さらにエミの歌声が合わさると、心安らぐ穏やかな空間が会場に広がった。

 途中で曲調が変わり、スクリーンに2000年代に起きた奇病やゲシュタルト計画など、「NieR Replicant」から「NieR:Automata」に至るまでの出来事が年月を追って描き出される。ステージにはジュニークが登場し、4曲目の「遺サレタ場所」を圧倒的な声量で歌い上げた。

 曲が終わると、声優陣による朗読劇「第二節『記憶にない邂逅』」が始まった。似たような景色が続く都市をさまようA2とエミールは、真っ白な服を着た少女、ヨナと出会う。これは「NieR:Automata」のCルートの延長線にありながら、「NieR Replicant」のキャラクターと邂逅するというかつてない展開。驚いたという人もきっと多かったはずだ。

 一方、2Bとポッド153は、ヨナの兄である青年と遭遇し、ともにヨナを探すことに。朗読劇が終わると、暗転ののち5曲目の「森ノ王国」が披露された。ハープとヴィブラフォンが奏でる幻想的なメロディにのせてボーカルのKOCHOが歌い始めると、会場内の空気が一変。エミールペンライトを含めたライティングも緑一色に染まり、まるで深い森にいるかのような雰囲気を感じさせた。

 歌が終わるとストリングスの音色が高らかに鳴り響き、6曲目の「取リ憑イタ業病」が流れる。ボーカルはジュニークに代わり、力強さの中にも荘厳さを感じさせる歌声が会場を満たした。

「Concert Stage」に登場したKOCHO【写真:MASANORI FUJIKAWA】
「Concert Stage」に登場したKOCHO【写真:MASANORI FUJIKAWA】

 続けて、朗読劇「第三節『過去と現在そして未来』」がスタート。街に潜んでいた敵からの攻撃を受け、応戦していた2Bと青年は、戦いの合間の会話がきっかけでそれぞれが生きていた年代に1万年に近いズレがあることを知る。

 一方A2たちはポッド042を発見し、その中の情報から、都市全体を統括する制御装置が中央部にあることをつきとめるのだった。暗転直後に流れてきたのは、7曲目の「カイネ」。ボーカルはエミで、落ち着いた雰囲気の冒頭から、少しずつ力強さが加わっていく名曲を抒情的に歌い上げる。歌のパートが終わると、流れる曲はそのままにヨナと青年、エミールの朗読劇が始まり、3人の出会いやささやかな暮らし、忘れることのできない大事な思い出が語られた。

 8曲目の「エミール/業苦」が始まり、ピアノだけのメロディーとKOCHOのボーカル、そこに「さみしい」「くるしい」「かなしい」のテロップで埋め尽くされた画面が重なる。曲も少しずつ楽器が加わって重厚なメロディーになり、そのまま「エミール/絶望」に移行。胸を締め付けるような音楽と言葉、舞台効果が合わさっていく。過去に「NieR Replicant」をプレイしたことがあり、青年、ヨナ、エミールの経緯を知っているファンの多くは、ここで涙を誘われたようだった。

 曲が終わると、次の朗読劇「第四節『謀略と希望』」が開始。大量の機械生命体に追い詰められ、苦戦を強いられるA2とエミールを、2Bが救うシーンからスタートだ。青年とヨナもついに再会して抱擁を交わす。しかし突然ポッド153が異常な挙動をとり、ポッド153とナレーションの声優を務めていたあきやまの声が、感情のあるキャラクターの声に変わった。その正体は、機械生命体による新たなネットワーク様態の中で生まれた、概念的存在だという。

 A2がポッド153を破壊すると、その声は消えてしまう。すべてを知りたければ「祈りの場所へ来るがいい」という言葉を残して。青年によれば、「祈りの場」とは、おそらく教会のこと。そこには9Sの自我データもあるはずだという。しかし、教会は敵の数が多い危険な場所だった。このタイミングで、9曲目「双極ノ悪夢」が流れる。これは「NieR:Automata」のボス戦時の曲であり、教会へ向かおうとする2Bたちの激しい戦いを自然に連想させた。

 パーカッションが際立つ躍動感ある曲調と、ジュニークの力強い歌声で、会場が一気に戦いの場と化す。そして、まったく印象の違う10曲目「追悼」へと繋がっていった。テロップでは、教会にたどり着いた2Bたちが都市の記憶を読み取り、いまいる場所は1万年前に存在した都市の複製品であること、そして青年とヨナの兄妹もまた、模造品に過ぎないと明かされる。古めかしいパイプオルガンのような音色が響き渡る中、美しい旋律とともに、悲しい真実が突きつけられるのだった。

最後の「Weight of the World」は3人で歌唱【写真:MASANORI FUJIKAWA】
最後の「Weight of the World」は3人で歌唱【写真:MASANORI FUJIKAWA】

最後の1曲は「Weight of the World」

 続いて朗読劇「第五節『造られたモノの覚悟』」が始まり、自分たちが模造品であることを知って、衝撃を受ける青年とヨナのシーンとなった。真の姿を暴かれてしまった都市は崩壊が始まり、脱出にはデータのみを転送するしかないと判明する。ただ、本体の存在しない青年とヨナ、そして2Bのデータ転送はできない。最後の選択を迫られる2Bは、「9Sだけは、助ける」と決意するのだった……。

 朗読劇のセリフと重なるようにして、11曲目「終ワリノ音」が流れる。落ち着いた曲調から激しい曲調に移り変わるパートでは、崩れ去っていく巨大都市をイメージさせた。続いて、12曲目の「イニシエノウタ/贖罪」では、エミとジュニークの2人が息の合ったデュエットを披露。スクリーンには、軌跡を描いて動く光の束など、データの転送を思わせるような映像が流れた。

 そしてラストを飾ったのは、エンディング曲として名高い「Weight of the World」。やはりこの曲でなくては、と感じたファンも多かったことだろう。ジュニークが哀切に満ちたメロディーを歌い上げ、大きな拍手とともに「Consert Stage」が終了した。

 興奮も冷めやらぬ中、カーテンコールを迎えたステージに岡部氏が登場。「NieR:Automata」の5周年を、素敵な観客と素敵な舞台で迎えられたことに喜びを隠せない様子で、丁寧に御礼の言葉を述べていた。

 盛大な拍手を受けた後は、演奏者の紹介が行われ、さらに素晴らしい歌声を披露してくれた3人のボーカリストと、朗読を聞かせてくれた声優が改めてステージに登場した。全員が一言ずつ御礼の言葉を告げた後、最後のお楽しみとして、ふたたび楽曲が披露される。KOCHOが歌う「NieR Re[in]carnation」の楽曲「祈リ」に始まり、「複製サレタ街」、エミが歌う「遊園施設」、「顕現シタ異物」、ジュニークが歌う「依存スル弱者」、「還ラナイ声」がメドレーで流れる。そして本当の最後の1曲となったのも、やはり「Weight of the World」だったが、こちらはエミ、ジュニーク、KOCHOが3人で歌う豪華版。最後は鳴り止まない拍手に会場が包まれ、1日目が終幕した。

 なお、2日目の公演は、朗読劇の視点が2Bから9Sに変わり、ヨナに変わって「NieR Re[in]carnation」のママ(CV:原由実)が登場するなど、がらりと違った内容となる。「Talk Stage」は全公演、「Consert Stage」は2日目夜公演のみ(有料)でアーカイブを視聴することもできるので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

 文・下田奈美子(東京テキスト)

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