「スカイ・ハイ」の軽快メロディーで入場 “千の顔を持つ男”ミル・マスカラスが叙勲

“千の顔を持つ男”ミル・マスカラスが、旭日双光章に輝き、メキシコの聖地アレナ・メヒコで11月18日、叙勲伝達式が行われた。

デストロイヤーとマスカラスの2人【写真:柴田惣一】
デストロイヤーとマスカラスの2人【写真:柴田惣一】

柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.121】

“千の顔を持つ男”ミル・マスカラスが、旭日双光章に輝き、メキシコの聖地アレナ・メヒコで11月18日、叙勲伝達式が行われた。

 昨年秋に叙勲が決まっていたが、コロナ禍もあって伝達式が延期されていたもの。メキシコ日本大使館の駐メキシコ大使からリング上で贈られた。リング上での伝達式はプロレスラーならでは。

 プロレスを通じて、日本とメキシコの架け橋となったマスカラス。外国人レスラーとしては、リングだけでなくバラエティー番組などで活躍した功績が認められたデストロイヤー以来の表彰となる。

 旭日双光章は、日本国の勲章「旭日章」の6等級のうち勲五等に相当する章で、国や公共に対し功労のある者に授与される。社会の様々な分野における功績を対象としているが、日本在住でない外国人が叙勲されるのは、顕著な功績があったということに他ならない。

「日本デビューでの成功が、あってこその私。ありがとう」と喜びと感謝を伝えた“仮面貴族”。1971年に初来日したときは「悪魔仮面」と、当時の外国人マスクマンらしく悪党のようなキャッチフレーズだったが、スタイリッシュでかっこ良く、華麗なファイトとオーバーマスクを観客席に投げ入れるなどのファンサービスで人気者となった。

 マスクをかぶりながらもファンの声援を集めるなど、日本マット界でのマスクマンのイメージを変えたが、何といっても入場テーマ曲を定着させた功績が大きい。

「スカイ・ハイ」の軽快でありながら、哀愁も漂わせるメロディーに乗ってマスカラスが登場すると、会場は大爆発。イギリスのバンド・ジグソーが映画音楽としてリリースした傑作だが、実は75年に発表されたときは、今一つだった。77年にマスカラスの登場時に全日本プロレスで流れると、一気に大ヒットしている。

 当時、全日本プロレスを中継していた日本テレビの梅垣進氏のアイデアだった。「新日本プロレスを中継していたテレビ朝日に負けたくないと、照明などで工夫していたが、入場テーマ曲の選曲にも力を注いだ。反対もあったけど、押し通した。うまくハマって良かった」と梅垣氏は振り返る。

 マスカラスの空中殺法と、空高くの「スカイ・ハイ」という曲名もマッチして大人気となったが、実は「君に愛を捧げたのに、僕に嘘をつき、僕らの愛を空高く吹き飛ばした」と失恋の歌。マスカラスが曲に乗って華麗なステップを踏む姿を披露したことで、プロレスの新たな楽しみ方を定着させた。

 11月17日には、新日本プロレス創立50周年記念イベントとして、入場テーマ曲を取り上げたミュージック・フェスティバルが開催された。多くの名曲「おまえは虎になれ」「U.W.Fプロレス・メインテーマ」「ドラゴン・スープレックス」「パワーホール」「HOLD OUT」「爆勝宣言」「風になれ」「ジャイアント・プレス」「吹けよ風、呼べよ嵐」「スピニング・トーホールド」「IRON MAN」「移民の歌(IMMIGRANTSONG)」「HIGHT ENERGY」「炎のファイター~INOKI-BOM-BA-YE~」などが生演奏され、大いに盛り上がった。

 この日は流れなかったが「スカイ・ハイ」を、好きな入場テーマ曲にあげる人は多いはずだ。もちろん「マッチョ・ドラゴン」を口ずさむ方もいるだろう。

 そのレスラーの雰囲気やファイトスタイルに合った、それぞれ個性的なテーマ曲。入場シーンがまさに「花道」となり、試合への期待感が高まる。

 着メロに好きなレスラーのテーマ曲を設定しているファンもいれば、落ち込んだときにはテーマ曲を聴いて元気になるというファンもいる。

 あなたはどのテーマ曲がお好きだろうか? 名曲が流れ、目を閉じれば、今は亡き往年の名レスラーの顔や数々の名勝負が、懐かしい思い出と共に鮮やかによみがえる。

 マスカラスの叙勲伝達式でいろいろなレスラーの入場シーンが改めて浮かんできた。プロレスの魅力は、いくつもある。「今日も一緒にプロレスを楽しみましょう!」。

(文中一部敬称略)

次のページへ (2/2) 【写真】日本プロレスで闘うマスカラス
1 2
あなたの“気になる”を教えてください