登山道でのマウンテンバイク走行が物議 ルール制定難しく、マナー任せの現状も

10月下旬、国定公園内の登山道でのマウンテンバイク利用を疑問視する投稿が拡散、1.3万リツイート、5.7万いいねを集めるなど大きな反響を呼んでいる。その名の通り、オフロードの山道を走行することを目的に開発されたマウンテンバイクだが、国内の山域においてルールはないのか。八ヶ岳中信高原国定公園を管轄する長野県庁と日本マウンテンバイク協会に見解を聞いた。

オフロードの山道を走行することを目的に開発されたマウンテンバイク(写真はイメージ)【写真:写真AC】
オフロードの山道を走行することを目的に開発されたマウンテンバイク(写真はイメージ)【写真:写真AC】

国定公園内の登山道でのマウンテンバイク利用を疑問視する投稿が話題に

 10月下旬、国定公園内の登山道でのマウンテンバイク利用を疑問視する投稿が拡散、1.3万リツイート、5.7万いいねを集めるなど大きな反響を呼んでいる。その名の通り、オフロードの山道を走行することを目的に開発されたマウンテンバイクだが、国内の山域においてルールはないのか。八ヶ岳中信高原国定公園を管轄する長野県庁と日本マウンテンバイク協会に見解を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

「登山道でマウンテンバイクに遭遇。7名程度。ここは八ヶ岳中信高原国定公園に指定されている登山道。登山道が削られ、苔の絨毯も台無しになってしまっていた。とても嫌な気持ちになってしまった」。ツイッターに投稿された画像には、登山道とみられる山道から大きくそれて斜面に残されたマウンテンバイクの車輪の跡が映されている。

 登山道は一般的に登山者が利用するためのもの。急峻な国内の山では道幅も狭く、走行や登山者とのすれ違い、追い越しに危険を伴うところも多い。マウンテンバイクが登山道に乗り入れることに問題はないのか。また、国定公園などの保護区で登山道以外の山中を走行することにも問題はないのだろうか。

 長野県庁環境部自然保護課の担当者は「まず法的な解釈として、国定公園には自然公園法が適用されます。自然公園法上の扱いでは、登山道などの道であっても、車馬(乗り物)に該当するマウンテンバイクの運行は認められており、処罰対象となることはありません。ただ、地域によっては管理者や地権者ごとにルールを定めている場合もあり、その場合はそのルールが適用されます」と一般的な法的解釈を説明する。

 その上で「八ケ岳においてはそういった地域ルールも存在しません。今回の写真も拝見しましたが、この写真だけでは場所の特定はできず、登山道下の植生への侵入は強く自粛をお願いしたいが、県としては周囲の安全や自然環境に配慮しながら、あくまでもマナーを守って利用してほしいとしか言えないのが現状です。本当は一つ一つのエリアで協議を重ねゾーニングしていくことが望ましいですが、国定公園はあまりに広く、現実的には追いつかない。ボランティアの自然保護レンジャーによる巡回や啓発活動も行っていますが、イタチごっこというのが正直なところです」と悩ましい実情を語る。

 では、利用者側の意識はどうなのだろうか。国内におけるマウンテンバイクの普及、発展及び振興を図り、国民の心身の健全な発展に寄与することを目的とし設立された日本マウンテンバイク協会の担当者は「マウンテンバイクのルールとマナーに関しては、1980年代、アメリカから日本に入ってきた当初からの課題です」と語る。

「公道であれば別ですが、基本的に日本の山で勝手に走っていい道はひとつもないと考えます。登山道などもってのほか。管理者や地権者の許可を得た上で乗るぶんには構わないと思うかもしれないが、日本の山は権利関係が非常に複雑で、どこまでなら走っていいと一概に決められるものでもありません。我々としては、私有地で乗ることも想定はしていません」

 では、どこであればマウンテンバイクを楽しめるのか。

「各地で行われているツーリングイベントや舗装道路、林道などです。マウンテンバイクはオフロード用なので、本来であれば未舗装の道が最適で、中には有料の専用コースを設けているところもあります。ただ、これも入り口と出口を設けても、有料と知らなかったり途中で出たり入ったりして利用料を払わない方も多い。広大な山の中ではすべてを規制、管理することは難しく、マナーと良心に委ねるしかないのが現状です」

 行政と業界団体、いずれも答えの出ていないマウンテンバイクをめぐるルールとマナー。自然の中での楽しみ方が多様化するなか、制度作りが追いついていないのが現状のようだ。

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