宝塚に6年所属し小劇場へ、落語にも挑戦する澄華あまねの情熱 芸人志望だった過去も

若手女優やアイドルが創作落語を演じる舞台「麗和落語 ~二〇二二冬の陣~」(11月3日~6日、東京・武蔵野芸能劇場小劇場)に、昨年に宝塚歌劇団星組を退団した澄華あまねが出演している。6年を過ごした宝塚歌劇団から小劇場の舞台に転身、精力的に舞台に立ち続ける情熱と、その先の目標を語った。

落語にも挑戦する澄華あまね【写真:ENCOUNT編集部】
落語にも挑戦する澄華あまね【写真:ENCOUNT編集部】

根底にある思い「お芝居に救われて私の人生がある」

 若手女優やアイドルが創作落語を演じる舞台「麗和落語 ~二〇二二冬の陣~」(11月3日~6日、東京・武蔵野芸能劇場小劇場)に、昨年に宝塚歌劇団星組を退団した澄華あまねが出演している。6年を過ごした宝塚歌劇団から小劇場の舞台に転身、精力的に舞台に立ち続ける情熱と、その先の目標を語った。(取材・文=大宮高史)

「いざ高座に上がってみますと、舞台上1人で右を向き左を向き、と1人で噺を演じるのは普通のお芝居より難しいなと感じました。落語独特の『間』にも慣れる必要がありますし。1人で何十分しゃべり続けて噺を盛り上げて、きれいにオチもつけるってすごいスキルだなと実感する日々で、稽古が終わるといつも汗だくです」

 こう語る澄華にとって落語は初めての挑戦になるが、自らオファーをして出演に至った。「1人で何役も演じる落語の芸は、芝居での演技にも活かせると思って志願しました。俳優業のかたわらで落語そのものにも関心がありましたが、役者として研鑽を積むにも話芸の経験が活きてくるだろうと、直感で思い立ちました」との意志で、日替わり演者の1人として創作落語を演じる。出演者たちには若手女優・現役アイドル・声優などさまざまなキャリアの顔ぶれがそろった。

 2016年初舞台の宝塚時代から数えれば舞台歴はすでに6年になるが、共演者からも受ける刺激は多い。「本業が声優の方も出演しているんですが、声優らしくすごくよく通るいい声をされているんです。声だけで引き込む力がすごいと思います。高座に2人が出る『二人落語』のパートもあって、共演の方も回によって異なるので反応によって私の演じようも変わってきます。どれも絶対に笑える舞台です!」。

 実は舞台に強く惹かれる前、お笑いが好きで吉本新喜劇に入りたいと思った時期もあったそうだ。「小学生の頃、吉本がどんなところかもよく知らないで、お笑いと言えば吉本! の発想で、芸人になりたいと思っていました」と振り返るが、あるとき、宝塚卒業生の舞台『愛と青春の宝塚』を観たことで演劇の世界と出会う。「両親によると、主演でいらした湖月わたるさん(元星組トップスター)に憧れて『宝塚に入りたい!』って思い始めたそうです」。

宝塚時代について語った澄華あまね【写真:ENCOUNT編集部】
宝塚時代について語った澄華あまね【写真:ENCOUNT編集部】

宝塚2年目、芝居への情熱が目覚めた役

 夢がかなって2014年に宝塚音楽学校に合格、2年後に初舞台を踏み星組娘役となるが、入団2年目に芝居への情熱がいっそう芽生える経験をする。

「『THE SCARLET PIMPERNEL』(17年)の新人公演で、革命期のフランス王太子のルイ・シャルルという役をさせていただいたとき、少年役だったのですが、『お芝居って楽しいし奥が深くて、もっとうまくなりたい』と、初めて通しでセリフがある役を経験して目覚めました」と語るが、その次の『ベルリン、わが愛』新人公演では苦い経験もした。

「私は娘役だったのですが声が低いのと、体格的にも少年役が似合うと思われることもあって。この新人公演では『詩を読む少女』という役をいただいたのですが、普段の私とのギャップで役作りに悩んでいたときに、お芝居が素晴らしい上級生の方から教えをいただけて。そのときの私の悩みに的確に答えてくださって、以来、ずっと憧れで今でも尊敬すべき目標の方で、その方と出会えたこともいい糧です」

 以後もタカラジェンヌとして、可憐な娘役として、組の仲間と刺激を受けながら研鑽(けんさん)を重ねたが、6年目の2021年秋に「柳生忍法帖/モア―・ダンディズム!」で退団する。なぜ退団を決意したのだろうか。当時の決断をこう振り返る。

「もっとお芝居を実践する機会が欲しかったんです。宝塚ではいくらでも、貪欲に舞台や、演技を毎日の公演や上級生の方々から学ぶことができました。恵まれた環境ですが、大人数での舞台ですので1人の役者として、得てきたものをじっくりお客さまに見ていただけるチャンスには限りがあるのかもしれません。新人公演も1公演で(宝塚と東京の)2回です。生の舞台で、もっともっと演技やセリフのパフォーマンスでもって、役者として成長したい、そのためには思い切って外に出てみて、どんどんオーディションを受けて現場で経験を積もうと思いました。お芝居が好きなのは宝塚の中と外でも変わらないですし、何かあっても尊敬する上級生さんに相談することもできます。その方も背中を押してくださいました」

今後の目標を明かした澄華あまね【写真:ENCOUNT編集部】
今後の目標を明かした澄華あまね【写真:ENCOUNT編集部】

ストレートプレイを演じ続けて目指す場所

 主にミュージカルとショーを上演する宝塚なだけに、退団するとミュージカルなど、音楽がかかわるジャンルで活躍する卒業生は少なくないが、澄華は芝居、それもストレートプレイへの情熱から小劇場を中心に舞台に出続ける。演じた役柄も、サスペンスドラマの刑事、ゴシックでホラーな舞台の女王、現代劇の若者など多岐にわたる。

「私に来たオファーは全て受けて、さらに興味を持った舞台はオーディションもどんどん受けています。特に内容にこだわりはなくって、いろんなものに挑戦して自分の幅を広げたい、私が知らない世界を見てみたいというスタンスです。『麗和落語』もその一環ですね」

 澄華は東京・杉並区出身で、周辺はサブカル演劇が盛んな土地柄。「宝塚の下級生の頃、東京公演のときなどは中野や吉祥寺の劇場に通う人たちを見てきたんですが、今自分がその世界にいるので、感慨というかまたこの街に戻ってきたのも私らしいのかなと思います」。

 また自身の経歴から、華やかさや洗練された所作を期待される自覚も。それでも「まだ肩書に助けられているところもあると思いますが、私が頑張ってきた証として、引け目を感じる必要もないのかなと。そしてこれから先は私個人としての生のお芝居を見ていただき、今までのお客さまやこれから客席で会う方々の期待、そして私の目標に近づいていきたいですね」。

 ゆくゆくはもっと大きな劇場での舞台も志す。「演技をしっかり評価していただいて、新国立劇場や東京芸術劇場の大きな舞台に立つ夢があります」と話すが、目前の舞台と観客のため、生きがいである芝居に全力投球の日々が続く。

「これまでつらい経験があっても『絶対役者としての経験になるんだ』と思って乗り越えることができました。それくらいお芝居に救われて私の人生があり、どんな場所でも舞台に出続けることが何より今したいことなんですね。それが皆さんの期待に応えることでもあるし、年老いたときに人生を振り返って『良かったな』と思えることにもつながるのかな、と考えて舞台にかける毎日です」

□澄華あまね(すみか・あまね)東京都出身。2016年、宝塚歌劇団102期生として入団。2021年12月26日「柳生忍法帖/モア―・ダンディズム!」千秋楽で退団。2022年からは舞台俳優として「CRUSH KITCHEN ENTERTAINMENT VOL.3『サタデーナイトスペシャル』」、「ILLUMINUSガールズゴシックシリーズ『純血の女王』」などに出演。11月3日から6日まで「麗和落語 ~二〇二二冬の陣~」に出演する。

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