外務省の現役職員が高校生に熱弁 「外交センスのない国は滅ぶ」

麗澤中学・高等学校(千葉・柏市)で2日、「外務省の概要と地球規模課題~保健分野の ODA(SDGs)~」と題した生徒向けの講演会が開かれ、麗澤大学外国語学部中国語学科を卒業した同省大臣官房外交史料館の小高京子(おだか・きょうこ)課長補佐が世界を飛び回る仕事の魅力を語った。

高校生に外務省の魅力を語る小高京子さん【写真:ENCOUNT編集部】
高校生に外務省の魅力を語る小高京子さん【写真:ENCOUNT編集部】

全国の高校126校で「高校講座」を開催、「女性が3割。育児休暇取れます」

 麗澤中学・高等学校(千葉・柏市)で2日、「外務省の概要と地球規模課題~保健分野の ODA(SDGs)~」と題した生徒向けの講演会が開かれ、麗澤大学外国語学部中国語学科を卒業した同省大臣官房外交史料館の小高京子(おだか・きょうこ)課長補佐が世界を飛び回る仕事の魅力を語った。

 外務省は平成7年度から全国の高校に外務職員を派遣して講演を実施する「高校講座」という取り組みをスタート。外務省職員が高校生に直接講演を行うことで、高校生の外交・国際問題に対する関心を深めるとともに、外務省の仕事に対する理解を促進して将来の進路選択の参考になることを目的としている。令和4年度は全国各地の高校126校での実施を予定している。この日は麗澤高の2年生計260人が大教室に集まり、他の学年や中学の生徒は教室内のオンラインモニターで視聴した。

 登壇した小高さんは「大学時代に中国語を勉強して中国や世界を相手に仕事をしてきました。母校に来るのは20年ぶりで楽しみにしていました」とにこやかにあいさつ。続けて、「大学4年生の時に専門職試験を受けて外務省に入り、中国の北京大学に2年間留学して中国人に日本の文化を紹介する文化交流の仕事もしました」と自己紹介。幕末のペリー来航や不平等条約について説明しながら歴史と外交の大切さを強調し、戦前、ウィルソン米大統領の側近・ハウス大佐が外交官時代の吉田茂首相に「外交センスのない国は滅ぶ」と警告した逸話を取り上げて「心して外務省の仕事をしています」と気を引き締めた。

 一方、就職先としての外務省については「霞が関の中でも桜の名所です。春になったら見に来てください」と景色の良さをアピール。総職員数は6500人で、外務本省に2800人、在外公館に3500人、また40以上の外国語の専門家がいることも紹介した。職員の3割が女性で自身は育児休暇を取得。「中学生の子どもが2人いますが、計5年間の休暇が取得でき、元の職場にも戻れました。(男女の)差別はまったくありません。男性も育児休暇を取得していますよ」と女性に“優しい”職場であることを伝えた。

 また、裏話として米ニューヨークで毎年9月に開催される国連総会に首相が出席する際、同行する外務省らの職人が100人以上に及び、会談相手国との日程調整、警備、ホテルの予約、プレスへの広報などにあたることを明かした。特にホテルは各国の首脳や同行職員が殺到するため予約が困難といい、「1年前から予約しても会場から徒歩30分ほどのホテルしかとれない。車は入れないので30分かけてホテルまで歩いて帰りました」と苦労話も。

 日本の国際貢献としては、まず日本国憲法が掲げる平和主義を強調。具体的には日本の伝統的なたこつぼ漁をモーリタニアで普及させたことで日本でもたこ焼きが食べられること、貧困率が44.9%に及ぶルワンダについては日本の洋裁技術を指導するODA(政府開発援助)を通して現地の女性の自立を支援したこと、さらに結核やマラリアを防ぐ基礎的な保健サービスの整備なども取り上げた。

 質問コーナーで生徒から「どういう人が外交官にむいていますか」と質問されると、小高さんは「誠実であること。自分だけのことを考えている人は信用されませんし、お互いがウィンウィンになるようにしないと交渉は進みません。自分の心を開いて相手の幸せを考えることがとても大切です」と語っていた。

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