無観客試合だからこそできた試合の数々 WWEの底力を見せつけた2日間の「レッスルマニア」

トレーニング施設と言ってもWWEは桁外れだ。アメリカ・フロリダ州オーランドにあるWWEパフォーマンスセンターは、日本のプロレス道場にあたるスーパースター養成所。しかし今回に限っては、練習の場を年間最大のイベント会場にするしかないという不測の事態に追い込まれていた。新型コロナウイルスの影響により、パフォーマンスセンターにて無観客の大会がおこなわれることになったのだ。中止という最悪の事態を免れたのは、独自の大型施設とWWEネットワークがあったから。そう言っても過言ではないだろう。

レッスルマニアを開催したWWEパフォーマンスセンター/(C)2020 WWE, Inc. All Rights Reserved.
レッスルマニアを開催したWWEパフォーマンスセンター/(C)2020 WWE, Inc. All Rights Reserved.

久々に登場したジョン・シーナがブレイ・ワイアットと一騎討ち

 トレーニング施設と言ってもWWEは桁外れだ。アメリカ・フロリダ州オーランドにあるWWEパフォーマンスセンターは、日本のプロレス道場にあたるスーパースター養成所。しかし今回に限っては、練習の場を年間最大のイベント会場にするしかないという不測の事態に追い込まれていた。新型コロナウイルスの影響により、パフォーマンスセンターにて無観客の大会がおこなわれることになったのだ。中止という最悪の事態を免れたのは、独自の大型施設とWWEネットワークがあったから。そう言っても過言ではないだろう。

 36回目にして初めて、しかも誰も予想できなかった無観客での「レッスルマニア36」(WM36)は、4月4日&5日の2日間にわたりおこなわれた。「アメリカ・ザ・ビューティフル」が超大物アーティストにより唄われる恒例のオープニングは、過去映像の総集編で披露された(いかに大物揃いだったかが改めてわかる仕組みでもある)。

 その後、映される無観客の場内。それでも、WMはWMだ。長期ブランクから特別にリングに上がるスーパースター。彼らの登場が、祭典の特別感をさらに盛り上げる効果にもなっている。今年の「WM36」では、ジョン・シーナがそれに相当するだろう。墓場を舞台に戦ったジ・アンダーテイカー、「ロイヤルランブル」で9年ぶりに帰ってきたエッジ、スポット参戦の王者2人(ゴールドバーグ&ブロック・レスナー)も含めて祭典ならではのキャスティングと言えるのだが、なかでもリングからもっとも遠ざかっていたのがシーナである。現在はマット界からテレビ&映画界へと籍をスライドさせており、WWEで見かける機会はめっきり減った。最後の試合は19年1・14ユニバーサル王座挑戦者決定フェイタル4ウェイまで遡らなければならない。「WM」参戦は2年前、アンダーテイカーに敗れたとき以来だ。

 シーナがWWEに一時帰還したのはスマックダウン2・28だった。「今年のWMはオレ抜きでやるべきだ。みんなWWEの未来に情熱を燃やしているだろう。オレもそう感じているよ」。WMからの撤退宣言とも取れる言葉は、同時に自身が過去の存在と認めたようにも聞こえる。つい最近まで「WWEの顔」と呼ばれたスーパースターの中のスーパースター。いくらハリウッドの売れっ子とは言え、戦う姿が見られなくなるのはさみしいが……。

 その直後、場内が暗転し、“ザ・フィーンド”ブレイ・ワイアットが出現、「WM36」のボードを指さした。無言の対戦要求だ。そして、「WM36」における両者の一騎打ちが正式決定。やはり、祭典に「WWEの顔」は欠かせない。シーナはワイアットを「オマエはWWEの未来ではない」と断言したが、問題は、1年以上のブランクによる試合勘か…。

 試合は、「ファイヤーフライファンハウスマッチ」としておこなわれた。これは、ワイアットがホスト役を務める、ちびっ子向けコーナー(?)「ホタルの楽しいお家」のこと。ここからしてワイアットの世界なのだが、この楽しいお家には裏がある。ワイアットにはたびたび“ザ・フィーンド”、すなわち悪霊が憑依するのだ。2・27「スーパーショーダウン」でゴールドバーグにユニバーサル王座を明け渡したワイアット。彼の標的は翌日のスマックダウンで久々に現れたシーナに向けられた。対戦表明には、6年前の屈辱からくる“怨念”が込められていたのである。

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