「半落ち」「ツレうつ」の佐々部清監督を悼む 後輩思いの気骨の人だった

外山文治監督(左)と佐々部監督
外山文治監督(左)と佐々部監督

佐々部清監督「何のために映画を撮るのか、これは高倉健さんからの宿題」

 見ず知らずの次世代の映画監督からのお願いにも快く応じた。2017年9月には、製作から宣伝、配給まで手がけた「映画監督 外山文治短編作品集」の外山文治監督の応援に駆けつけ、トークショーを行ったこともあった。そこでの発言は印象深い。

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「最後に助監督した2作品が、高倉健さん主演の『鉄道員(ぽっぽや)』『ホタル』だった。『ホタル』の録音で健さんと2人きりになった時に、『佐々部ちゃん、映画って、何を撮るか、ではなくて、何のために撮るか、なんだよね』とおっしゃったので、『どういう意味ですか?』と聞いた。『ホタル』は2000年に撮影して、2001年公開なのですが、『世紀をまたぐ時に、あの愚かな戦争を繰り返してはいけない。それを伝えるために、映画を作った』とおっしゃった。その言葉がすごく響いて、なんのために作るのかを考えるようになった。高倉健さんからの宿題のようになってしまった」。

 代表作「ツレがうつになりまして。」は、いとこ、高校時代の友人がうつ病で自殺してしまったこと、「八重子のハミング」は老々介護の年齢が年々、あがっていく中、母親も認知症が始まったことがきっかけとなった。「こういう現実をちゃんと考えてもらわなければ、と思ったし、そういうことに直面している人たちにエールを贈りたかった」と語っていた。

 三浦貴大が主演し、知英がヒロインを務めた新作「大綱引の恋」(年内公開)は既に撮り終え、次回作も準備中だったと聞く。最近では、メジャーを離れた映画が多くなっているが、映画界の現状についても苦言を呈していた。

「東宝以外は、一社で映画を撮る体力がない。だから、製作委員会方式にして、いろんなところからお金を集めてやっている。体力がなくなった分、ヒットしないと、怖くてやれない。だから、一番浸透しているのは、少女漫画原作。若いイケメンと女の子をシャッフルしながら、壁ドンとかやっている。でも、役者は20代半ばくらいで、瑞々しくない。『半落ち』では、オッサンたちが机をはさんで、ボソボソやっている映画が当たるわけないと言われましたけども、プロデューサーは辞表をポケットにいれていた。そういう覚悟を決められる人が少なくなっている」。

 佐々部監督のこの言葉を大手映画会社のプロデューサーは胸に刻んで欲しい。もっともっと監督の気骨と愛があふれる映画が観たかった。合掌。

次のページへ (3/3) 【写真】後輩監督を応援しに駆け付けた佐々部監督
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