デスマッチとストロングの「二刀流」実践 大日本プロレスのエース目指す神谷英慶の熱き思い

「二刀流」神谷英慶が史上初のデスマッチ、ストロングの同時戴冠を目指して「GO! GO! GO!」宣言をぶちあげた。

「二刀流」神谷英慶の壮絶ファイト【写真:柴田惣一】
「二刀流」神谷英慶の壮絶ファイト【写真:柴田惣一】

柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.110】

「二刀流」神谷英慶が史上初のデスマッチ、ストロングの同時戴冠を目指して「GO! GO! GO!」宣言をぶちあげた。

 大日本プロレス「流血無双トーナメント~デスマッチヘビー級王者決定戦」を制した神谷。木高イサミ、星野勘九郎、塚本拓海そして、アブドーラ小林を退けるという見事な優勝だった。

 蛍光灯の束を投げつけ、レモン水を自在に操り、頭突きでラッシュ…デスマッチのレジェンド・小林を圧倒するファイトは、第46代デスマッチヘビー級王者にふさわしかった。

 小林も神谷を認め、ベルトをその腰に巻いてやり「神谷は底なし沼だった。スキがなかった」と最大級の賛辞を送っている。

 神谷は2016年に第8代世界ストロングヘビー級王座に君臨。大日本のストロング部門を背負って立つことを期待された。ところが、神谷本人は大日本の二本柱であるデスマッチ部門にも目を向けていた。「デスマッチのストロングスタイル」を実践してこその大日本のエースだという。

 コロナ禍の20年、無観客試合でデスマッチに挑戦を始めた。二刀流はこれまでも多くの選手が挑んでいる。現在は全日本プロレス所属の石川修司が、13年に第27代デスマッチ王者、14年に第5代ストロング王者に君臨。大日本の2大王座を獲得したただ一人の男として、その名を残している。

 だが、石川も両王座を同時には獲得していない。神谷は史上初となる両部門のベルトを独占しようというのだ。「デスマッチ王者として、すぐにでもストロング王者に挑戦したい。自信がある」。実際、現在の神谷の勢いを目の当たりにすると、うなずかざるを得ない。

 小林にトドメを刺したのは、ラリアートだった。「ストロングの選手は、みんなラリアートを使う。この技で、フィニッシュを奪えたのは良かった。ストロング部門の人たちにも、俺の気持ちが届いたと思う」と神谷は力強い。

 リング上では荒々しいブルファイトの神谷だが、普段は礼儀正しい好青年。コロナ禍以前、東京・銀座で食事会があった。まだ暑い季節、しかもカジュアルなお店なのに、神谷は襟付きのシャツとスラックスで現れた。

「襟がついたものが正式な服装だと聞いています。銀座だからと思って襟のついたシャツで来ました」と少々、はにかむ神谷に、参加していた他団体の選手から「え、俺なんかTシャツに短パンだよ…。若いのにちゃんとしていて偉いね」と称賛の声が上がった。

 神谷は多くを語らないが、今までの人生でいろいろと苦労して来たようだ。「苦は楽の種、楽は苦の種」と水戸黄門は言い、それが「人生楽ありゃ苦もあるさ」でおなじみのドラマの主題歌にもなった。

「涙の後には虹も出る。歩いて行くんだ、しっかりと。自分の道を踏みしめて」と続くが、この曲を聴く度に、神谷を思い出す。ちなみに「人生一つのものなのさ。後には戻れぬものなのさ。明日の日の出をいつの日も、目指して行こう顔上げて」という歌詞も存在する。

 得意技のひとつに「魂の体当たり」がある。猛烈な勢いで相手にぶつかるタックルだが、神谷の場合、タックルというよりは相撲のぶちかましのような破壊力がある。

「魂の体当たりは前を向いてしかできない技だから、これからも大切にして行きたい」と、決して後ろを振り返ることなく前へ前へ突き進むという、神谷の決意のこもった技だ。

 デスマッチとストロングの二刀流で頂点を目指す。苦労して来た分、大きく花開いてほしい。神谷英慶が「GO! GO! GO! だぜ!」と実りの秋を迎える。

※木高イサミの「高」の正式表記ははしごだか

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