「扱い次第で車は凶器」 高齢者がパンクに気付かず車を運転、啓発ツイートした佐賀県警の真意

社会における交通マナーの向上が呼びかけられる中で、高齢ドライバーの事故防止、運転免許返納は社会的課題になっている。こうした中で、佐賀県警・警察本部の公式ツイッターによる情報発信が話題を呼んでいる。神埼(かんざき)警察署発で、タイヤがパンクしていた状態で車を運転していた高齢者を保護した際の啓発ツイートが反響。同県警に、SNS発信の狙い、交通事故防止や免許返納の取り組みについて聞いた。

佐賀県警による高齢ドライバーの事故防止・注意喚起ツイートが話題を集めた(写真はイメージ)【写真:写真AC】
佐賀県警による高齢ドライバーの事故防止・注意喚起ツイートが話題を集めた(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「まさに事故に直結する危険な状態」だった…佐賀県警・神埼警察署のツイッター発信が反響

 社会における交通マナーの向上が呼びかけられる中で、高齢ドライバーの事故防止、運転免許返納は社会的課題になっている。こうした中で、佐賀県警・警察本部の公式ツイッターによる情報発信が話題を呼んでいる。神埼(かんざき)警察署発で、タイヤがパンクしていた状態で車を運転していた高齢者を保護した際の啓発ツイートが反響。同県警に、SNS発信の狙い、交通事故防止や免許返納の取り組みについて聞いた。(取材・文=吉原知也)

「【神埼警察署】 タイヤがパンクした状態で運転していた高齢の方を保護しました。『気づかなかった』と説明されたため、今後の運転について御家族を交えて話し合いをしました。扱い次第で車は凶器となり得ます。体の異変や更新時期等、機会があれば運転免許返納について考えてみましょう」。8月9日、県警ツイッターに投稿された内容は、1.3万リツイート、4.2万いいねを記録し、反響を集めた。タイヤの上部がホイールから大きく外れた写真が添えられており、ネット上には「これは、怖いね…」「事故がなくて良かったですね、、」「こういうツイートありがたいです!もっとバンバンして欲しい!」「素敵な対応だと思います」などの声が寄せられている。

 まず、今回のツイートを発信した意図について、同署は文書の回答として、「交通事故を防ぐために広く県民に問題意識を持ってもらうとともに、高齢者の方々に対しては、身体機能の変化について意識してもらう契機とし、安全運転に対する理解を深めてもらうため。また、高齢者だけでなく、その家族に対しても、運転の継続(運転免許証の返納等)について話し合う機会としてもらいたいという趣旨です」と説明した。

 今回の事後対応については、その高齢者の家族に迎えに来てもらったといい、「タイヤがパンクした状態で走行するという、まさに事故に直結する危険な状態であることに気づいていないことや、『道に迷った』とも言われていることから、今後の運転継続について家族でしっかりと話し合ってほしいことを家族に伝えました」とのこと。併せて高齢者の体調や日頃の生活状況を聞き、交通事故防止に関する助言を行ったという。改めて、「高齢者の身体機能の変化に伴う交通事故が社会問題となっている中で、高齢者自身だけではなく、その家族や行政等の関係者にも考える契機としてもらいたいと思い発信しました」と強調した。

 同県警では交通事故抑止において、とりわけ子どもや高齢者を交通事故から守ることに重点を置いており、「運転免許試験場において、身体機能の変化のため運転が不安と感じられている高齢者の希望により、毎週火曜日の午後に技能試験官同乗による無料の技能教習を実施。運転免許センターのホールには、地元の自動車販売店の協力を得て、安全運転サポート車の実車を展示」などの取り組みをしている。“考えるきっかけ”にしてほしいという啓発ツイート。今回の反響を受けて、「たくさんのコメントをいただいたことで、多くの方が交通安全について考える契機になったと考えています。今後も、工夫を凝らした情報発信を行い、警察の活動についての理解と協力を得たいと思います」とのコメントを寄せた。

 同県警ツイッターは8月に、佐賀北警察署の発信として「『暑いから』『面倒だから』と、スリッパで車を運転すると交通違反になります」、他にも、武雄警察署の発信で普通車による電柱衝突事故について現場写真とともに、夏場の運転の注意喚起として「体調管理に努め、通り慣れた道こそ気を引き締めて運転しましょう!」と投稿。より伝わりやすい内容で、SNS発信を続けている。同県警は「県民の皆さんに安全安心に関する情報をいち早く届け、警察活動への理解と協力を確保することを目的にSNSでの発信をしています。県民の方々が何を求めているかを感じ取った上で、写真などを用いて、見てすぐに伝わるような『分かりやすさ、伝わりやすさ』に心がけた情報発信に努めていきたい」としている。

車は日常生活の移動手段「代替手段を確保することが課題」

○…昨今、高齢者の運転免許返納は大きな注目を集めている。佐賀県内の現状や課題、今後の取り組みはどうなのか。佐賀県警は「当県においては、日常生活の移動手段として自動車が大きな役割を果たしていることから、移動のための代替手段を確保することが課題である。このため、運転免許の返納に際して、自治体や関係機関が実施しているバスやタクシーなどの割引等の制度を周知するほか、高齢者の家族の支援が重要であることについても呼びかけていきたい」と現状を説明する。

 代理人による自主返納制度を進めており、「当県警察では平成29年の早い段階で代理人による運転免許の取り消し申請制度を導入しており、これを受けて県内のいくつかの自治体(基山町、玄海町、江北町、太良町)では、高齢運転者の負担を軽減するため、自治体の職員がその代理人となって手続きをしていることから、他の自治体に対しても導入を働きかけていきたい」との展望を示す。

 佐賀県では、高齢者の運転免許証の自主返納(正しくは申請による運転免許の取り消し申請)は、ここ数年、年間3000~4000件の間で推移しているという。返納の理由はさまざまであるものの、「高齢者自身が加齢に伴う身体機能の低下を自覚して返納に至るケースや高齢者の家族からの勧めによって返納するケースなどが多い」。同県警では、高齢運転者技能教習や安全運転相談の施策を実施。そのうえで、「何より、高齢ドライバーにかかわらず、ハンドルを握る全てのドライバーが悲惨な交通事故の加害者にならないということはもとより、被害者にもならないように気をつけてもらいたい。交通事故は決してひとごとではなく、いつ、どこで起きるものかは分からないことを強く認識し、運転をしていただきたい」とのメッセージを寄せた。

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