相葉裕樹と朗読劇で恋人役 北原里英が「東京の家族」と感謝するAKB48時代の仲間とは

事故で昏睡(こんすい)状態の恋人が、1週間だけ目を覚ましたら……。かけがえのない人と過ごす時間を言葉だけで紡ぐ朗読劇「Every Day」が9月22日~24日に東京・ニッショーホールで上演される。3日間の公演には、林遣都と瀧本美織。相葉裕樹と北原里英。赤澤遼太郎と瑞季の3カップルが日替わりで出演。各日2公演のみが行われる物語について、23日に舞台に立つ相葉と北原のふたりに聞いた。

朗読劇「Every Day」でカップル役を演じる北原里英(左)と相葉裕樹【写真:ENCOUNT編集部】
朗読劇「Every Day」でカップル役を演じる北原里英(左)と相葉裕樹【写真:ENCOUNT編集部】

闘病中の幼なじみが気付かせてくれた命の重さ、「時間は無限ではない」と相葉

 事故で昏睡(こんすい)状態の恋人が、1週間だけ目を覚ましたら……。かけがえのない人と過ごす時間を言葉だけで紡ぐ朗読劇「Every Day」が9月22日~24日に東京・ニッショーホールで上演される。3日間の公演には、林遣都と瀧本美織。相葉裕樹と北原里英。赤澤遼太郎と瑞季の3カップルが日替わりで出演。各日2公演のみが行われる物語について、23日に舞台に立つ相葉と北原のふたりに聞いた。(取材・文:西村綾乃)

 朗読劇はあるカップルの日常を描いたもの。交通事故で昏睡状態になった辻村咲(北原)が、ある月曜日の朝に、恋人の三井晴之(相葉)の前に姿を現したところから物語が展開していく。「1週間だけ時間をもらった」と言う咲は、いつも通り朝ごはんの支度をして、作った弁当を晴之に差し出した。状況を飲み込めない晴之だが、弁当を手に出社。火曜日、水曜日と、いつもと変わらない日常が過ぎていく――。

北原「最初にあらすじを読んだ時は、ストレートに泣ける愛の話なのかなと思ったのですが、一筋縄ではいかない部分が多くあり、とても大人なお話だなとびっくりしました。男女が出会って恋に落ちて……。台本を読んでいる間は、『他人と一緒になるって、そういうことだよね』と共感する部分が多くありました」

 1週間という期限が設けられた再会。その後に待ち受けるものは誰にも分からない。

相葉「生と死は今作の中で普遍的なテーマのひとつでもありますし、(コロナ禍などで)死を身近に感じることが多い昨今、台本をいただいた時は、『他人ごとではないな』と感じました。愛する人との日常は、当たり前に続いていくと、どこかで思っていて、その大切さについて忘れている自分がいる。本を読み進めていく中では、晴之に共感する部分が多くあって、投げかけて来る言葉がグサグサと刺さり、涙が止まらなくなりました」

 相葉が「刺さった」「泣けた」というほど、心を揺さぶられるセリフが多くある今作。それぞれの心に残った言葉は――。

相葉「咲が『1週間だけ時間をもらった』という場面です。自分に置き換えた時、ここが一番『しんどすぎる』と感じました。幸せな時間を過ごすけれど、期限があるのは地獄だと思うから……」

北原「私は、ふたりがケンカをするシーンが残りました。台本を読んでいる時に、声のトーンや大きさなど、ケンカをしている情景が浮かんできました。ふたりを包む重たい空気なども含め、リアルに演じることができればと思っています」

 現実の世界で同じことが起きたら、ふたりはどうするだろうか。

北原「私は先の事を考えなくても良いから、1週間好きなものを好きなだけ食べたいです。1週間だとハワイに行くのも難しそうだから、日常を過ごすことを選択するかもしれないですね」

相葉「おいしいご飯を共有するのは良いですね。近所の公園を散歩したり、日常を過ごす。特別なことをしなくても、幸せに過ごすことができる相手なんだということをかみしめたい。共に過ごしている日常の大切さをかみしめたいです」

昨年9月に結婚した北原里英、「家で誰かが待っていてくれることは幸せ」と笑顔【写真:ENCOUNT編集部】
昨年9月に結婚した北原里英、「家で誰かが待っていてくれることは幸せ」と笑顔【写真:ENCOUNT編集部】

記憶の引き出しが開く瞬間は?

 ひとりで過ごしている時、大切な存在を思い出す瞬間がある。ふたりにとって記憶の引き出しが開く場面はどのような時なのだろうか。

北原「私は新潟を拠点とする『NGT48』として活動をしていたことがあるので、新潟駅を降りると楽しいこと、大変だったことなどが思い出されます。新潟に行く時は、ゆきりん(柏木由紀)と一緒のことが多かったので、ふたりの思い出が多いですね。あと当時は、(スマートフォンゲームの)ポケモンGOがはやっていたので、新潟でたくさんのレアキャラを捕まえたなーと思い出します」

相葉「僕はデビューをする前、代々木公園でストリートライブをしていたことがあるので、代々木公園の近くを通ると、記憶の引き出しが開きます。芸能界に憧れて、『デビューしたい』と燃えていた少年の気持ちに戻してくれる場所。当時の思いをかなえた今は、楽しいことだけじゃないと知っていますが、あの時は夢や希望、根拠のない自信にあふれていて、無敵だった。初心を思い出させてくれる大切な場所です」

 朗読劇では「おかえり」「ただいま」と掛け合う場面がある。愛しい人が戻って来た安堵(あんど)。帰りを待っていてくれる喜び。思いを交換する言葉に、幸せが広がっていく。

北原「私は愛知県出身なので、研究生時代は(都内で)メンバーと一緒に同居していたんです。最初は5人ぐらいで暮らしていましたが、どんどんルームメイトがいなくなり、最後は、(福岡から上京した)しーちゃん(大家志津香)と私だけになってしまった。しーちゃんは、私よりも先輩だったのですが、デビューが決まったのは私の方が先で……。高校生だったので複雑な気持ちでした。でも、ダンサーを務めていた劇場から帰ってきたら、しーちゃんが『お疲れさま』とケーキを焼いて待っていてくれたんです。私にとって、しーちゃんは東京の家族。『ただいま』と帰った家に、『おかえり』と迎えてくれるしーちゃんがいてくれたことは、とても温かかったです」

相葉「良いですね。僕も『ただいま』『おかえり』と言い合える暮らしがしたいです。いま一人暮らしなので、憧れますね。そういうやり取りが日常になるって」

北原「良いですよ。私は(昨年9月に)結婚をしたので、帰宅した家に明かりが点いているとか。家で誰かが待っていてくれることは、幸せだなと感じます」

 大事な存在と過ごす時間は「当たり前のことではない」ということを再確認できる朗読劇。相葉は大病を抱えた幼なじみとのやり取りを通じ、その大切さを痛感したという。

「幼稚園の時から親しくしている幼なじみがいるのですが、先日初めて僕の舞台を観に来てくれたんです。バイパス手術を受けることになったと聞いて、『さすがに1度くらい観に来い』と誘ったら、劇場に来てくれました。デビューして18年ほどになるのですが、1度も観に来たことがなかったのに。『また観たいから呼んで』とも言ってくれて」

北原「『次の舞台も観に来るぞ』という気持ちが、生きる力になってくれたらうれしいですね」

相葉「僕ら、生きていると大事なことを忘れがちで、ずっと続くものだと錯覚してしまうけれど、そうではないんですよね。僕は千葉が地元なのですが、実家に帰るのは、年に1回、お正月だけになってしまったし。結婚した友人も増えたので、生活が変わっていく様子を見ていると、『あと何回会えるかな』といつも思うんです。いつ死んでもおかしくない時代になってもいるし、1回、1回の時間を大事にしたいなと思っています」

台本を読んで「涙が止まらなくなった」と語った相葉裕樹【写真:ENCOUNT編集部】
台本を読んで「涙が止まらなくなった」と語った相葉裕樹【写真:ENCOUNT編集部】

北原について、相葉は「物おじしない、芯が強い女性」

 今回初共演となる両者。2018年にNGT48を卒業するまで、約10年間アイドル道を駆け抜けた北原について相葉は「物おじしない、芯が強い女性」とたくましく感じている。一方の北原は、夫の笠原秀幸と共演経験がある相葉について、「キャリアをお持ちの方なので、深みがある掛け合いができるのでは」と胸を膨らませている。

 同朗読劇に取り組む直前まで、女優や老人などひとりで何役もこなすミュージカルコメディーに出演していた相葉。よりシャープになったあごのラインについて聞くと、「公演中に5キロ痩せた」と教えてくれた。

相葉「言葉のニュアンスを、ライトにしていくのか。重たくするのか。これから稽古を重ねて、北原さんと僕だけの世界をお見せしたいです」

北原「相葉さんとは今日が初対面でしたが、稽古の間に持ち前の愛嬌を活かして、仲良くなって、長く一緒にいるカップルの空気感を作り上げて本番に臨みたいです」

■相葉裕樹(あいば・ひろき)1987年10月1日、千葉県生まれ。2004 年映画デビュー。ミュージカル「テニスの王子様」(05~08年)で初舞台。、東映制作の特撮テレビドラマ「侍戦隊シンケンジャー」の池波流ノ介/シンケンブルー役で人気を博す。主な出演作に「レ・ミゼラブル」(17・19・21年)、「アナスタシア」(20年)など。趣味は銭湯めぐり。温泉ソムリエの資格も持っている。181センチ、O型。

■北原里英(きたはら・りえ)1991年6月24日、愛知県生まれ。2008年3月にアイドルグループ・AKB48の第5期生としてアイドル人生をスタート。同年10月にシングル「大声ダイヤモンド」で初めて選抜メンバー入りを果たした。2015年に、新潟県を拠点とする・NGT48に移籍。2018年4月に卒業するまで、キャプテンとしてグループを率いた。ドラマ「家族ゲーム」、映画「ジョーカーゲーム」、舞台「『新・幕末純情伝』 FAKE NEWS」など女優としても活躍。159センチ、A型。

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