朝倉さや「ばあちゃんになっても歌い続ける」 民謡日本一の山形娘の素顔に迫る

スピッツの名曲「ロビンソン」を山形弁で歌う民謡歌手として注目され、草野マサムネ氏をはじめ、TBSアナウンサーの安住紳一郎氏や亀田誠治氏ら著名人が絶賛するシンガー・ソングライター、朝倉さやがニューアルバム「Life Song」をリリースした。民謡仕込みの美しく伸びやかな歌声と1度聴いたらクセになるユニークな楽曲が特徴で、新作は「生きる」をテーマに彼女の生い立ちから現在までの時間旅行を楽しみながら命の大切さに向き合う作品になっている。そんな唯一無二の才能を持った山形を代表する歌手、朝倉さやの素顔に迫った。

朝倉さや【写真:ENCOUNT編集部】
朝倉さや【写真:ENCOUNT編集部】

母のお腹にいる時から民謡を聴いていました

 スピッツの名曲「ロビンソン」を山形弁で歌う民謡歌手として注目され、草野マサムネ氏をはじめ、TBSアナウンサーの安住紳一郎氏や亀田誠治氏ら著名人が絶賛するシンガー・ソングライター、朝倉さやがニューアルバム「Life Song」をリリースした。民謡仕込みの美しく伸びやかな歌声と1度聴いたらクセになるユニークな楽曲が特徴で、新作は「生きる」をテーマに彼女の生い立ちから現在までの時間旅行を楽しみながら命の大切さに向き合う作品になっている。そんな唯一無二の才能を持った山形を代表する歌手、朝倉さやの素顔に迫った。(取材・文=福嶋剛)

 朝倉は山形県の民謡好きの家庭で育った。曾祖母や母親が家で歌う民謡を聴き、幼い頃から息を吸うように民謡を歌っていたという。当時の可愛らしい歌声がアルバム「Life Song」の1曲目に収録されている。

「ひいおばあちゃんも母も家で民謡を歌っていて、私も母のお腹で民謡を聴きながら生まれてきました(笑)。小さい頃から民謡に親しみ、大きくなってから幼稚園の先生に『さやちゃんは砂遊びをしながら民謡を歌っていたんだよ』って教えてもらいました。そんな当時の記録がテープに残っていたのでアルバムの1曲目に収められています。おじいちゃんたちが山形弁で『じょんだ』って言ってんですが『上手だな』って意味なんです。そうやって上手にほめられながら育ちました」

 本格的に民謡を習い始めたのもごく自然な流れだったという。

「歌うこと、民謡が好きだったから辞めたいと思ったことが1ミリもないんです。こういう話をすると山形の人はみんな民謡に親しんでいるように思うかもしれませんが、実際は学校に1人だけ民謡を歌っている珍しい子がいてそれが私みたいな感じでした」

 小中学生の頃「民謡民舞少年少女全国大会」で準優勝1回、優勝2回という輝かしい成績を残した。学校では休み時間になると隣のクラスにまで笑い声が響くような元気いっぱいの女の子。高校に進学するとカラオケ三昧の週末を過ごしていたという。

「週末になるとオープン前から友達とお店の前に並んで夜までフリータイムで歌っていました(笑)。スピッツさんやDREAMS COME TRUEさんをはじめ、演歌も歌ったり。民謡タイムがはじまると友達に『始まったよ』って冷やかされました。高校生活は楽しい思い出ばかりですね。この前、担任の先生が新校舎ができるため、通っていた校舎が無くなるということで写真を送ってくださりました。そんな思い出の校舎へのさようならとありがとうを歌にしたくてアルバム4曲目の『山商』という曲ができました」

 民謡に限らず、さまざまなジャンルの歌を歌うことによろこびを感じた朝倉は高校を卒業後、作詞作曲もできるシンガー・ソングライターを目指して上京を決意。

「東京に行ったらチャンスがあるんじゃないかという一心で上京しました。はじめは都内で会社員として働きながら、仕事終わりや休日に音楽教室に通ってみたり、オーディションを受けてみたり、いろいろとやってみたんですが、なかなか自分に合うような場所が見つからなくて。たまたまインターネットを検索していたら今のプロデューサーsolaya(ソラヤ)さんと奥様のご夫婦で経営している音楽教室に出会ったんです」

 東方神起やJUJU、Crystal Kayなどを手掛けてきた音楽プロデューサーsolaya氏との出会いによってシンガー・ソングライターとしての道が開けた。

「実はまだ自分で曲を作ったことがなかったんです。するとsolayaさんは『自分の気持ちをそのまま曲にした方が納得のいく自分らしい曲ができるからまずは書いてみよう』って。そこで毎日付けていた日記に書いてあることを曲にしてみました。『先生聞いてけろ!』って言って聴いてもらったのがデビュー曲『東京』でした」

 新作には「下北沢」という曲が収録されている。上京したばかりの大学生のことを歌っている。

「メロディーが先に出来て、同時に物語も一緒に浮かんできたんです。下北沢のはずれに住んでいる大学に通う女の子をイメージして描きました。実際に私が上京したばかりの頃に下北沢に遊びに行った時の思いや、当時の印象、今の下北沢を歩いてみて感じたことや湧いてきたイメージなんかも歌詞になっています」

フジロック初出場に「音楽そして自然を思いっきり楽しむべ!」【写真提供:Solaya Label Co.】
フジロック初出場に「音楽そして自然を思いっきり楽しむべ!」【写真提供:Solaya Label Co.】

「FUJI ROCK FESTIVAL'22」の出演が決定

 2012年、プロデューサーsolaya氏との出会いがきっかけでデビューまでの1年間、動画投稿にも挑戦した。民謡風に歌ってみた動画やアニソンを山形弁で歌う動画などをYouTubeやニコニコ動画に投稿すると反響を呼び、2013年1月「新春 全日本なまりうたトーナメント」(テレビ朝日系)に出場。歌詞を山形弁に替えてスピッツの「ロビンソン」を歌い審査員を驚かせた。これが話題となり、各局の情報番組でも朝倉が紹介され、同年4月に「東京」でデビューを飾った。

「上京する時『悔いが残らないようにやりなさい』と送り出してくれた家族だったのでデビューした時は『やりたいことができてよかったね』と声を掛けてくれました。12月に地元の山形テルサという大きなホールで凱旋コンサートをさせてもらいました。歌手デビューするまでは山形には帰らないという気持ちを歌にした『東京』という曲でデビューできて、たくさんの地元のみなさんに温かく迎えてくださり、本当に夢みたいな時間でした」

 朝倉による民謡カバーや山形弁カバーは、最新作「Life Song」にも収められている。山形弁でカバーした「さよなら大好きな人」は方言を知らない人が聴いても原曲と変わらない印象で沁みてくる。「花*花」のこじまいづみは「さやさんの言葉が重みを持つのは血がちゃんと通ってるからだと思う」と歌手としてだけでなくシンガー・ソングライターとして朝倉を評価する。また新作では同郷のユニークなコラボが実現した。「なすてだべ feat.テツandトモ」ではテツandトモに負けないお茶目な一面をMVで見せている。

「トモさんが山形ご出身ということでこれまで山形のイベントや花笠まつりでもご一緒させていただいたんですが、子どもの頃から大ファンで、今回念願だったコラボをさせていただきました。実はテツさんとプロデューサーのsolayaさんは滋賀県のご出身で高校の先輩後輩なんだそうです。それで今回、曲の途中で一瞬、関西弁に変わるところがあるのでぜひチェックしてみてください」

 2015年にリリースしたアルバム「River Boat Song-Future Trax-」が第57回日本レコード大賞企画賞を受賞。そして上京して10年目の2020年に念願のメジャーデビューの切符をつかんだ。

「2019年のツアー最終日のステージ上でsolayaさんから『メジャーデビューします』というメモを受け取ってうれしすぎてびっくりしたのを今でも覚えています。でもこれまでの作品や今まで出会ってきた人、そのすべてが宝物なので音楽への姿勢は今までと変わりません。今回のアルバム『Life Song』の制作を通じて、そういった宝物をこれからも大切に歌い続けていきたいという思いがさらに強くなりました」

 スピッツの草野マサムネ氏は「ずっと聴いていたい開放的な歌声! 唯一無二だと思います」と絶賛し、これまで何度も自身の番組に朝倉を招いたTBSアナウンサーの安住紳一郎氏は「声量で心が動くことを初めて経験した」とコメントを寄せるなど朝倉の歌には多くの人を惹きつける魅力が詰まっている。ニューアルバム「Life Song」を完成させた朝倉にこれからの「夢」について聞いた。

「私の大きな夢は『ばあちゃんになっても歌い続けること』です。きっとばあちゃんになった時、『このアルバムを作ってよかったあ』って振り返っているはずです」

 そしてこの夏、自身初となる「FUJI ROCK FESTIVAL’22」の出演が決定した。

「ほんってん(本当に)楽しみです! 心込めて歌います。生きている喜び感じながら、音楽そして自然を思いっきり楽しむべ!」

□朝倉さや 1992年6月29日生まれ、山形県出身。民謡好きの曾祖母、母親の影響で小学2年生から本格的に民謡を習い始め、小中学校時代に民謡日本一に2度輝き、18歳で上京。2013年、自身の作詞・作曲による「東京」でデビュー。週間 USEN HIT インディーズランキングで1位を記録。15年、日本レコード大賞企画賞、CDショップ大賞東北ブロック賞を受賞。2017年、NHKみんなのうた「そのままの笑顔でいて」放送。20年、1stアルバム「古今唄集~Future Trax Best~」でメジャーデビュー。22年、2ndアルバム「Life Song」リリース。9月4日、かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール(東京)で「Life Song Live」を開催。

次のページへ (2/2) 【動画】朝倉さやが歌う「さよなら大好きな人」山形弁バージョン
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