「全裸監督」で一転した女優人生 森田望智「出演作を見ると毎回すごく落ち込むんです」

Netflixドラマ「全裸監督」(2019年)の“黒木香”役で強烈な印象を残した森田望智(25)。ミュージシャンの栄光と挫折を描いた映画「さよなら、バンドアパート」(7月15日公開、宮野ケイジ監督)では、主人公のバンドマン、川嶋(清家ゆきち)の運命を変えた女性・ユリ役。「全裸監督」以降、映画やドラマでオファー殺到の森田は、どう役に向き合い、何を感じているのか。

「全裸監督」出演からオファー殺到の森田望智、演技への想いに迫る【写真:舛元清香】
「全裸監督」出演からオファー殺到の森田望智、演技への想いに迫る【写真:舛元清香】

映画「さよなら、バンドアパート」出演、「与えられた環境の中でいかに頑張れるか」

 Netflixドラマ「全裸監督」(2019年)の“黒木香”役で強烈な印象を残した森田望智(25)。ミュージシャンの栄光と挫折を描いた映画「さよなら、バンドアパート」(7月15日公開、宮野ケイジ監督)では、主人公のバンドマン、川嶋(清家ゆきち)の運命を変えた女性・ユリ役。「全裸監督」以降、映画やドラマでオファー殺到の森田は、どう役に向き合い、何を感じているのか。(取材・文=平辻哲也)

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 一つの作品が、役者のその後の人生を大きく変えることがある。森田にとっての「全裸監督」がそれだ。1980年代に活躍したAV界の鬼才、村西とおる監督の半生を描く異色ドラマで、私生活でもパートナーだった女優・黒木香役を体当たりで演じた。ラブシーンもあったが、「『失敗しても失うものはない。今の自分よりは絶対マシ』って思ってやっていたので、何の迷いもなかったですね」と振り返る。

 小5の頃、フィギュアスケートをしているときにスカウトされ、芸能活動を開始。そのキャリアは15年近くに及ぶが、本人は「そんなに長いという実感はないんです」と明かす。

「最初の5、6年目は学業優先もあって、ほとんど仕事してなかったんです。高校生になって、オーディションを受ける機会が増えても、なかなか受からない。大学生になって、ようやく時間ができるようになって、女優業に向き合って、徐々にお仕事をもらえるようになってきましたが、環境や気持ちの変化が大きく変わり、女優として覚悟を持てたのは(『全裸監督』に出演した以降の)ここ3年くらいです」

「全裸監督」では、第24回釜山国際映画祭アジアンフィルムマーケットのアジアコンテンツアワード最優秀新人賞を受賞。明石家さんまがお気に入りの女性を発表する「ラブメイト10」でも10位に挙げられるなど注目を集め、映画やドラマのオファーが殺到した。

「人生がガラリと変わりましたね。オーディションを受けてもいないのに、役がもらえるのはすごく不思議です。今までの落ちた経験があるから、役を勝ち取るのがすごく難しいということを絶対に忘れちゃいけないと思っています」

 この映画のヒロイン役も監督&プロデューサーのたっての希望で決まった。「juJoe」のボーカルとギターを担当する平井拓郎の同名小説を原作に、ミュージシャンになる夢を持つ川嶋が、路上ライブからメジャーデビューを果たし、その後の挫折までを赤裸々に描く青春ストーリー。下積み時代の川嶋を支える恋人ユリ役で、関西弁にも初挑戦した。

「最初に原作を読んだのですが、せりふがポエムのようで、こだわりをすごく感じました。あまり言ったことのないせりふだったので、すごく新鮮でしたが、すごく悩みました」と明かす。

「目標は作らない、今を大事にしたい」と力強く語った森田望智【写真:舛元清香】
「目標は作らない、今を大事にしたい」と力強く語った森田望智【写真:舛元清香】

役には「これが最後かも」と思い臨む「俳優は、お仕事がいつなくなるか分からない」

 ユリにはモデルがいるが、劇中では、夢の中の女性のように描かれている。「現場には原作者の平井さんがいらっしゃいましたが、モデルの方がいるというのは知らなかったんです。私は、この子は夢の中にいるような人っていう感じたので、その感覚を大事にして、監督から頂いた、ユリさんをイメージした曲を聴きながら、自分なりに膨らませました」。

 神奈川出身の森田にとって、関西弁も難しかったことの一つ。「イントネーションだけでなく、細かいニュアンスがとても難しかったです。関西に住む親戚がいたので、確かめるのに物理的な時間がかかりましたし、ユリさんの内面を掘り下げるのも大変でした。DVを受けている設定だったので、本を読んだり、調べたり。幼少期のことを想像したり……。ユリさんは本当の、本当の本心を見せないから、いるようでいないように感じました。役作りにユリさんとしての思いをぬいぐるみに話しかけるのがいいと思って、シロクマのぬいぐるみを購入し、話しかけました」。

 撮影で印象に残ったのは、主人公・川嶋による演奏シーン。「私、あまり音楽を聴いてこなかったのですが、生の音楽をあんなに近くで聴くのは初めてだったんです。清家さんのPVを拝見していたので、すごいなとは思っていたんですが、ギターを弾いて歌っている姿がずっと残っています。これは音楽を取り上げた映画だからできることだな、と。歌の力にすごく助けられました」。

 出演作品を見ると、毎回、自分の至らなさに落ち込むという。それは高く評価された「全裸監督」での演技でも同じだという。「出演作を見ると、毎回すごく落ち込むんですよ。こうした方がよかったかな、とは思うんですけども、そんなことを言っても仕方がないので、次に同じような機会があったら、頑張るしかないと思っています」ときっぱり。

 役には「これが最後かも」と思い臨んでいる。「俳優は、お仕事がいつなくなるか分からない。だから、一つ一つの仕事に丁寧に向き合って、映画でもドラマでも与えられた環境の中でいかに頑張れるかが大事。お仕事をくださった方をガッカリさせたくない。できることはそれしかないと思っています」と言い切る。

 今後の目標を聞くと、「目標は作らないようにしてはいるんです。決めなかったら、決めてない場所に行けるかもしれない。一生懸命やっていたら、絶対にいい方向にいくと思うので、今を大事にしたい。その一方で、この世界のどこかにいるかもと思えるようなお芝居は素敵だなと思っているので、そこは目指したいなと思います」。森田は全てが体当たり。だからこそ、限界突破の演技がある。

□森田望智(もりた・みさと)1996年9月13日、神奈川県生まれ。2011年のデビュー後、19年にNetflixドラマ「全裸監督」のヒロイン(佐原恵美/黒木香)役での演技が高く評価され、第24回釜山国際映画祭アジアンフィルムマーケット アジアコンテンツアワード 最優秀新人賞を受賞。ほか、主な出演作品は「ジオラマボーイ パノラマガール」(20)、連続テレビ小説「おかえりモネ」(21)、Netflixドラマ「全裸監督 シーズン2」(21)、「さがす」(22)、「妻、小学生になる。」(22)など。

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