慶大卒、28歳日テレ新事業社長が「VTuber」にかけたワケ 明かした“直感”の根拠

VTuberを主役としたテレビ番組「プロジェクトV」
VTuberを主役としたテレビ番組「プロジェクトV」

会社員、学生、主婦…肩書を問わずあらゆる人がインフルエンサーとなる世の中に

 今では多数の事務所が存在するほど急成長したVTuber業界。大井氏はClaN独自の強みとして「クリエーティブの部分」を挙げる。

「キャラクターをつくるというよりは集めて、コンテンツとして、パッケージとしてどう見せていくか。そこのクリエーティブに関しては非常に強いと思っています。自分たちが作ったキャラクターだけでなく、VTuberというジャンル自体で勝負していきたい。そういったいろんな人たちを結集させ、コンテンツ化して世に送り出す。そこの機能は高いかなと思っています」

 VTuberを扱うコンテンツや企画を多数行ってきたが、中でもVTuberを主役としたテレビ番組「プロジェクトV」には“ならでは”の難しさがあった。番組の目的は、VTuberの魅力を「テレビという手段を通じて、1人でも多くの人に届ける」こと。テレビ製作は、ある種のフォーマットに出演者を当てはめていくパターンが多いが、トレンドは“ヒト”ベースの番組作りだという。

「テレビでおなじみのタレントではなく、VTuberというジャンルに特化した形で番組を作る。ここに関しては最初とても苦労しました。テレビ製作者だとどうしてもテレビ的な企画に当てはめてしまうんです。でも主役はVTuberだから、そこの魅力を掘り下げようと……。そこは製作チームで何回も議論しました。そこだけは譲れなかったです」

 あくまで出演するVTuberの魅力を伝えることが最優先。VTuberのことをよく知らない視聴者でも分かるように、紹介VTRをつくることを徹底した。また、「みんなが知っている人がVTuberを語る、評価してあげるという形。それによってそのVTuberが世間に対してもっと認められる」という番組作りも意識している。

 VTuberの魅力を発信し続けてきた大井氏は、「『プロジェクトV』だけでなく、この1年でVTuberという言葉を一般的に聞くようになりました。『Yahoo!ニュース』のトップにもいろんな形で上がりますし……ジャンルとしての浸透を感じます」と世間の目の変化を実感するようになった。

「10代とか若い世代はVTuberを見て育っているので、上の世代が抱く特殊な印象とは全然違うと思います。その感覚はその子たちが大きくなれば、それが当たり前のように存在していて、『VTuberが~』ということで注目されることも逆にない。『VTuberの○○』という認識はもうなくなっていくと思います」

 ここ1年で状況が変わるほどの変化を見せたVTuber業界。大井氏はエンタメ業界が“潮目”にあると指摘する。

「令和を代表するエンタメの1つとしてVTuber、YouTuberなどインフルエンサーがありますが、今後はいま世の中の人が思う形から変わっていく。会社員、学生、主婦、と肩書を問わずインフルエンサーになることができます。あらゆる人が影響力を持ってエンタメを発信することができる世の中になっていくのではないでしょうか」

 すべての人が影響力を持つ世界。どうしたら個人としての活動を、より多くの人に届けることができるのか。その手段の1つとしてClaNの存在がある。

「VTuberの良いところは見た目が関係無くなるところ。これは革命的ですよね。誰でもなりたい自分になれるという点で、ものすごい可能性があると思っています」

 大井氏が理想とするのは「個人の才能がより評価される社会」。ClaNでは、より多くの人を幸せにするために、「好きなことをして評価される社会」の実現を目指す。

□大井基行(おおい・もとゆき)慶應義塾大学卒。28歳。2017年に日本テレビ放送網株式会社に入社。18年に社内ベンチャーとしてVTuber事業「V-Clan」を立ち上げ、責任者として事業運営を行うほか、「プロジェクトV」など多数の番組やイベントのプロデューサーも務める。22年4月1日に日本テレビ放送網の新会社としてClaN Entertainment社を設立し、代表取締役社長に就任。座右の銘は元SMAPの中居正広の言葉から「成功は保証されていないが、成長は保証されている」。

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