横浜高ボクシング部→広告代理店勤務→俳優 ド迫力アクションを生んだ異例の転身

綾野剛主演のドラマ「アバランチ」で“最狂の敵”役を演じて注目を浴びたのが、木幡竜だ。ボクサー、会社員を経て、映画「南京!南京!」で役を得たのを機に、中国映画界で活躍した逆輸入俳優。念願だった初主演の日本映画「生きててよかった」(5月13日公開、鈴木太一監督)ではセカンドキャリアに悩む元ボクサーを好演している。

元ボクサー役を演じた木幡竜【写真:ENCOUNT編集部】
元ボクサー役を演じた木幡竜【写真:ENCOUNT編集部】

木幡竜インタビュー、初主演の日本映画「生きててよかった」で元ボクサー役

 綾野剛主演のドラマ「アバランチ」で“最狂の敵”役を演じて注目を浴びたのが、木幡竜だ。ボクサー、会社員を経て、映画「南京!南京!」で役を得たのを機に、中国映画界で活躍した逆輸入俳優。念願だった初主演の日本映画「生きててよかった」(5月13日公開、鈴木太一監督)ではセカンドキャリアに悩む元ボクサーを好演している。(取材・文=平辻哲也)

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「アバランチ」で強烈な印象を残した木幡。そのプロフィールも異彩を放っている。名門・横浜高校ボクシング部(インターハイ3位)を経て、井上尚弥ら名選手を排出する大橋ボクシングジム所属のプロボクサーとして活躍。さらに広告代理店の会社員を経て、俳優へ転身。2009年、オーディションで中国映画「南京!南京!」を勝ち取ったのを機に、中国映画界に進出。アンドリュー・ラウ監督の「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」(10年)ではドニ―・イェン、スー・チー、アンソニー・ウォンらと並び、悪玉のトップを演じた。

「もともとシドニー・オリンピックを目指していたんです。オリンピックに出場するには日本で1位を取って、アジアで3位以内にならないといけない。WBA、WBCの加盟国は50か国くらいですが、オリンピックでは200か国が参加しているので本当に大変なんです。プロボクサーとしては2戦出場負けなし。大橋(秀行)さんも高く買ってくれていたので、やめることには随分反対されたんです」と明かす。

「でも、ボクサー崩れの俳優というのがイヤだったんです。映画業界とか、エンタメに興味があったので、広告代理店で2年間働いて、やっぱり俳優になりたい、と」。今や隆盛を極める中国映画界に飛び込んだのは、たまたま機会を与えてもらって「生きるためだった」と笑う。「先見の明があって選んでいった人とは違うんです。与えられた環境で、そっち側の道しかないなと思って、たまたま転んだ先が中国でした。だから、中国語のせりふが回ってくるまでは、中国語の勉強も全然やらなかったくらいでしたね」。

 そんな木幡が初めて日本映画で主演を張ったのが「生きててよかった」だ。プロボクサー・楠木創太(木幡)は、長年の闘いが体をむしばみドクターストップによって強制的に引退を迫られる。結婚を機に新しい生活を始めるも、社会になじめず苦しい日々を過ごす中、謎の男から地下格闘技のオファーを受ける……というストーリー。6年前に、木幡が映画会社社長でプロデューサーの小西啓介氏に、「ボクサーのセカンドキャリアの物語をやりたい」と直訴し、ようやく実現した。

 鈴木監督から命を受け、10キロ減量、肉体改造も行った。「やせるだけだったら、10日もあれば、落ちちゃうんですけど、筋肉を落としてはいけないので、1か月以上かけました。その前にやっていた中国映画の撮影が延びてしまったので、ジムのあるホテルに移動させてもらって、食事制限しながら、トレーニングしました。僕の体の個性は、野生のサルが野原で走り回って、できたであろう人工的ではない体つきだと思うんです。だから、器具を使った筋トレではなく、腕立て、腹筋腕立、懸垂、スクワットなど自重を使ったものです」。

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