【週末は女子プロレス#42】タイガー・クイーンとストロングスタイル女子の2年間 “衝撃初登場”からの快進撃

高瀬戦はクイーンのターニングポイント【写真:新井宏】
高瀬戦はクイーンのターニングポイント【写真:新井宏】

真の意味でライバルと呼べる選手の出現に期待

 クイーンが団体にとっての女子10戦目でデビューし、15戦目で彩羽と一騎打ち、初代タイガーと長与の遺伝子が激突した。対戦相手はいずれも単発も、20戦目で初めて複数回闘う選手に遭遇。25戦目の高瀬もライバル候補であり、今後何度でも闘ってほしい選手である。

 それにしても、節目の数字でクイーンが試合をしているのは何とも奇遇であり、運命的なものを感じずにはいられない。ジャガーの初参戦から女性版タイガー誕生のプロジェクトが極秘裏に進行、初代タイガーのデビュー40周年で衝撃の初登場を果たしたのもドラマチックだ。

 本人にのしかかるプレッシャーは計り知れないが、初代を思わせる四次元殺法に加え、オリジナルムーブも繰り出し、進化した虎を見せつけている。ディアナとの協力体制により、ストロングスタイルプロレス以外にもディアナ21年10・10後楽園(J・横田&○越中詩郎組VSクイーン&●西村修組。初のミックスドマッチで初の敗戦)、10・30横浜(○クイーンVS●伊藤)に参戦。通算でシングル6勝0敗、タッグ2勝1敗の成績を残しており、自身の負けはまだ記録していない。快進撃と言っていいだろう。

 とはいえ、課題もある。初代タイガーの栄光にはダイナマイト・キッド、ブラック・タイガー、小林邦明ら、ライバルの存在が欠かせない。プロレスには相手が必要、彼らなくしてタイガーマスクの大ブームはあり得なかったのだ。

 たとえば、初代デビュー戦の相手を務めたキッドが2度目に対戦したのは、1981年4・23蔵前国技館から年が明けての1・1後楽園におけるWWFジュニアヘビー級王座決定戦。これがライバルストーリーのスタートであり、メキシカンとの対戦が主流を占めたそれまでは、ある意味イントロダクションとも言えるだろう。それだけに、ストロングスタイルプロレス22年最初の本戦を終えたここから先が、クイーンにとって本当の勝負となる。

 だからこそ、3・17後楽園での高瀬戦はクイーンのターニングポイントになりえる重要な一戦だった。試合後、クイーンはバックステージで初コメント。「勝てたけど、悔しいです」の一言だったが(大会に先立つ会見でジャガーに促され、「がんばります」と初めて肉声を披露した流れがあるとしても)、これもまた進化のひとつと考えていい。

 対戦した高瀬はディアナとwaveのタッグ2冠王。アクトレスガールズのプロレス活動解散を機に完全フリーに転向。もともと激情型で感情を前面に押し出すファイトが持ち味な上に、新たなるステージでよりいっそう気合が入っている。そんな高瀬に押され気味だったクイーン。マスクの裏の感情こそ見えないものの、そこには高瀬に対するジェラシーもあったのではなかろうか。

 女子プロに求められる要素のひとつが、感情のぶつかり合い。クイーンはマスクウーマンであるため、試合中の表情でファンを惹きつけることは難しい。とはいえ、感情が伝わってくるマスクマンもいるだけに、そこは経験でカバーしていくしかないのだろう。だからこそ闘いが継続し、真の意味でライバルと呼べる選手の出現が望まれる。次はクイーン自身の10試合目。節目の試合で、何かが生まれる!?

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