田中泯「ダンスを芸術という必要はない」 農業で鍛えた肉体で踊る76歳のダンサーの哲学

田中泯(76)とは一体、どんな人物なのか。映画を観て、気になっている人は多いはずだ。「たそがれ清兵衛」(2002年)では全身から殺気を出し、唯一無二の存在感を見せた。以来、映画に引っ張りだこだが、本業はダンサー。そんな田中のダンス、生き様を追ったドキュメンタリーが「名付けようのない踊り」(28日公開)だ。飽くなき探究者、田中は「私はダンス、ダンスそのものだ」と言い切る。その真意は?

映画界に欠かせない田中泯。原点であるダンスとは何か、その考え方に迫った【写真:ENCOUNT編集部】
映画界に欠かせない田中泯。原点であるダンスとは何か、その考え方に迫った【写真:ENCOUNT編集部】

生き様を追ったドキュメンタリー映画「名付けようのない踊り」公開

 田中泯(76)とは一体、どんな人物なのか。映画を観て、気になっている人は多いはずだ。「たそがれ清兵衛」(2002年)では全身から殺気を出し、唯一無二の存在感を見せた。以来、映画に引っ張りだこだが、本業はダンサー。そんな田中のダンス、生き様を追ったドキュメンタリーが「名付けようのない踊り」(28日公開)だ。飽くなき探究者、田中は「私はダンス、ダンスそのものだ」と言い切る。その真意は?(取材・文=平辻哲也)

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「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」(04年)、「八日目の蝉」(11年)、「外事警察 その男に騙されるな」(12年)、米映画「47RONIN」「永遠の0」(13年)、「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」(14年)、「無限の住人」「DESTINY 鎌倉ものがたり」(17年)など映画界に欠かせない田中。

「これでも結構断っているんですよ。だから、相当うわさになっているんじゃないかな。僕は、俳優としての訓練、俳優としての夢なんて思ってもなかったんですから。なんでも演じてみせるわけにはいかない。イヤなものはやりたくないので、断るものは断ってきていますから。僕が断ったやつを見るのが楽しみ。これはいじわるではなく、その方が演じた方が良かったって思うことの方が多いんですよね」

「名付けようのない踊り」は、「メゾン・ド・ヒミコ」(05年)への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、17年8月から19年11月まで、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影したドキュメンタリー。田中の原点からダンスとは何か、その考え方が垣間見られる。

 田中によれば、ダンスとは踊る自分と、それを見る人の間に生まれるものだ。「そこに風が吹けば、自分と見ている人が共有することになる。でも、映画になった途端にそういう要素は欠損してしまう。だから、犬童さんには『僕が踊った通りに見せる必要はないので、好きなように編集してほしい』と言ったんです。踊りが上手に編集されているな、と思いました」

 田中は1945年3月10日、東京・中野生まれ。東京大空襲の日だった。「後に母親から『本当に大変な日に生まれた。世界中が真っ赤だった』と言われました。それが今では、まるで僕が見たかのような記憶になっています。同じ学年の中では一番遅く生まれ、未熟児だったそうです。中学が終わるまで僕が一番チビで弱かった。ただ、僕は逃げる方に精を出して、いじめにも、めげなかった。ほとんど自然の中で1人で遊んでいた。それが原点になっているし、大事な学習にもなっている」

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