コロナ禍で「結婚式をやる意味があるのか」 プランナーが現場で直面する苦悩、打開策とは

佐伯エリさんは新郎新婦に丁寧に寄り添うスタイルで理想の結婚式を作り上げる 【写真:佐伯エリ提供】
佐伯エリさんは新郎新婦に丁寧に寄り添うスタイルで理想の結婚式を作り上げる 【写真:佐伯エリ提供】

結婚式は「派手・にぎやか」のイメージから「シンプルで温か」に変化

 先が見えにくい中でも、変化の兆しはある。コロナ前に計画していたカップルにとっては「縮小=つらい」の図式になるが、21年の秋ごろにプロポーズをしてこれから結婚式を考えるカップルは、「コロナ後の価値観で、制約がある中でもうまくやっていこうと切り替えている人が多い」。ある種の折り合いを付けて進めているという。

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 結婚式の現場は、感染対策をアップデート。接触の機会を少なくするため、乾杯のグラスを合わせるか合わせないか、テーブルラウンドについて親のお酌・あいさつの有無、友人席のアクリル板の設置枚数など、細かな選択肢を設けている。「オペレーションは大変さが増えています。それでも式場は人員確保・対策の徹底に懸命に努めています」とのことだ。

 これまで、結婚式と言えば、「派手・にぎやか」のイメージだったが、今は違う。友人による歌やダンスの余興は減少。「シンプルで温か」が主流になりつつある。ゲスト人数も限られる中で、どうやって人生の節目にふさわしい日に仕立てるか。佐伯さんは「人と人の思いが交差する場所」というモットーを重視し、ある手法を思いついた。「想いのタイル」だ。

「コロナ禍の結婚式は当日まで、新郎新婦が『ゲストに来てもらえるか不安』『そもそもやっていいのか』と不安でいっぱいです。そこで、ゲスト・家族の方々に、お祝いやねぎらいの気持ちを直筆でタイルのデザインのメッセージカードに書いてもらうんです。それをサプライズで、退場後の新郎新婦に手渡します。実際に『コロナ禍で大変なのに頑張ったね』『お祝いさせてもらえてありがとう』といった言葉を見ました。2人が『やってよかった』と報われれば。そう願っています」

 ここ10年の結婚式は、海外発のインスタグラム写真のはやりに乗ってしまう傾向があったという。そんな“コピペ”のような形骸化が見受けられた結婚式は、コロナ禍によって、ある意味の変革がもたらされた。「そもそも結婚式をやる意味があるのか。新郎新婦が真剣に考えて、本質に向き合う場面が増えました」という。もともと人口減社会などの危機感があったブライダル業界。コロナ禍の「不要不急」の考え方によって、ふるいにかけられる対象になってしまう懸念もある。佐伯さんはプランナーとキャプテンの人材育成コンサルサービスを立ち上げ、後進の育成にもはげむ。今後の展望はどうか。

「一番大事なのはお客様の気持ちです。結婚式はなくても生きていけるかもしれませんが、あることによって、人生の幸せの総量が増やせると思っています。正解か不正解かは私たちには分からなくて、新郎新婦が未来に決めること。その人が亡くなる直前に、『幸せな人生だったな』と思えるかどうか。私は、その幸せを構成する要素の中に結婚式は入ることができると考えています。そのためにやるべきことはたくさんあります。私たち事業者のあり方が大きく関わるので、業界全体がより本気になって取り組まないといけません」

 コロナ禍の難局打開と同時に、業界全体の底上げについても思いを巡らせている。

次のページへ (3/3) 【写真】フリーウエディングプランナーの佐伯エリさんの式場での姿
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