【週末は女子プロレス♯23】元女性教師が両親に土下座してプロレス転身 83戦目の初勝利で果たした「3年の約束」

頭上の虹をつかむレディ・C【写真:新井宏】
頭上の虹をつかむレディ・C【写真:新井宏】

「背が高いってプロレスで有利だよ」教師をしながら道場で練習

「(道場のある)錦糸町だったら行けるなと思ったんですよ。それで1回体験してみようかなと思って。行ってみたらスターライト・キッドさんや中野たむさんからちょっとした筋トレのやり方を教えてもらいました。キッドさんからは『背が高いってプロレスで有利だよ』って言ってもらえたり(小柄なキッドだけに説得力十分!)、たむさんからもいろいろとお話を聞いて楽しそうだなと感じたんです。以来、教師をやりながら通うようになりました。先生はフルタイムから時間講師に切り替え、契約が終了したらプロレス一本に絞りました」

 プロレスデビューが目標になった。が、当然のように周囲は大反対。両親がスポーツ経験のない娘のレスラー転身を認めるはずもない。が、年齢的にも今しかないと考えたレディは両親の前で土下座。「3年して芽が出なかったら教員に戻る」との約束で、なんとか承諾を得た。が、入門しても練習にはなかなかついていけず、デビューまで1年かかった。

 新人は練習と並行し雑用もこなしていかなければならない。が、彼女ほどテキパキに仕事をする人がいるだろうかというほどしっかりしている。ここは社会人経験が役立ったと言えそうだ。しかもコスチュームは自身のデザインで手作り。WWEのサシャ・バンクスからインスパイアされた。「材料そろえて生地を買いに行って、型紙作って裁断して縫って直したりとかも、イチから全部やってます(笑)」。ここに掲載した琵琶湖での写真は、新日本9・4メットライフドームに出場したときに作ったビッグマッチ用のコスチューム。また、グッズ売店のポップにイラストを描いたり。とにかく多種多彩な才能の持ち主なのだ。

 が、肝心のプロレスではなかなか白星に恵まれない。「とにかく相手を倒さなきゃって思いでがむしゃらに技をかけていたんですけど、焦るばかりで…」。そんなレディに転機となった試合がある。8・29汐留で実現した“スターダムのアイコン”岩谷麻優とのシングルだ。

 このカードは、コロナ禍による大会中止の影響により5★STAR GP公式戦の日程が変更され、急きょ決定。試合ではいつものようにがむしゃらに向かっていった。岩谷がフィニッシュ狙いでムーンサルトプレスを放つも、腹部を強打しもん絶。直後にレディはコーナーに上がりジャンプ、岩谷の脳天めがけチョップを振り下ろした。いわゆる脳天唐竹割り。故・ジャイアント馬場さんの得意技で場内がドッと沸いた。その前にも脳天唐竹割りは出しており、結果的には2度目のトライとなったムーンサルトで敗れ、試合後の葉月復活宣言で余韻がかき消されたものの、長身を利用、しかもアレンジを利かせた2発でレディは確かな手応えを感じたという。

「とっさに出たんですよね。あの瞬間、この技使っていいんだ、こんなに喜んでくれるんだと思って。以来、お客さんの反応を見ながらできるようになったり、相手の動きを見ながら落ち着いて考えられるようになりました」

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