パラ閉会式や半沢直樹でも登場 創業70年の老舗ラーメン店がロケ地に使われるワケ

東京・笹塚にロケ地として人気を集めるラーメン店がある。東京パラリンピックの閉会式やドラマ「半沢直樹」に登場。ほかにも映画からドラマ、CM、ファッション誌の撮影でも使用されるなど、引っ張りだこだ。いったい、なぜこれほどまでに注目を集めるのか。人気の理由を店主に聞いた。

70年の歴史を誇る福寿【写真:ENCOUNT編集部】
70年の歴史を誇る福寿【写真:ENCOUNT編集部】

物々しい雰囲気だったロケ 店主は閉会式で使用とは知らず

 東京・笹塚にロケ地として人気を集めるラーメン店がある。東京パラリンピックの閉会式やドラマ「半沢直樹」に登場。ほかにも映画からドラマ、CM、ファッション誌の撮影でも使用されるなど、引っ張りだこだ。いったい、なぜこれほどまでに注目を集めるのか。人気の理由を店主に聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 東京・笹塚の十号通り商店街を直進し、緩やかな下り坂を降りた角に、目的の店「福寿」はある。昭和レトロな店構え。のれんには「創業67年」の文字。店内に入ると、カウンター席にテーブル席が3つ。昔ながらのラーメン店の雰囲気が漂っている。

 創業は1952年。昨年末に放送されたテレビ番組では「今にもつぶれそうな…」と紹介された。そんな福寿は、ロケ地として注目を集め続けている。5日に行われた東京パラリンピックの閉会式のオープニング映像に登場。わずか数秒の間で、ネット上では「パラリンピック閉会式 福寿さん登場!」「映像一瞬笹塚福寿うつったような」「やっぱり福寿だったのね!」と、書き込みが見られた。

 そんな常連の興奮をよそに、79歳になる明るい人柄の2代目店主・小林克也さんはいたって冷静だ。

「閉会式? 見てない。俺、知らないんだもん。まさか閉会式のときにやるとは思わなかった。民放のCMでやると思っていた。そしたら、みんな見た見たって言ってさ。見た人がデータを送ってくれた。常連とか友達がね」

 実はロケのとき、閉会式の撮影とは知らされていなかった。

「9月5日っていうのは聞いた。プリント見たら、9月5日放送予定って書いてあった。何にって書いてない。だけど、使われないよりは使われてよかったなと。撮ったのに使われなかったらつまらない」と笑った。

 そう言えば、ロケ中はどこか物々しい空気があった。「情報が漏れないように、店の表に黒い幕を張って表から絶対、のぞけないようにして撮影していた」。小林さん自身も麺をゆで上げるシーンが画面に映った。女の子のダンサーが音楽に合わせて激しく踊り、エキストラの客がその様子に驚く。

「女の子がダンスするの見て、すげぇなと思って。ボイパってなんだよと。俺はそばをあげているんだけど、バックグランドミュージック流れているわけ。監督から『私が6って言ったら、そば入れてパパってやってくださいね』って言われたのに早くなっちゃった。『なんで6じゃなく、5で入れるんですか?』とか言われてさ。何回も撮り直している」と頭をかく。

 監督は店内にあった「福寿」と書かれたボードをカメラに映るところに移動させた。「表にみんな黒幕を張ってるから福寿って分からないじゃない。だからわざわざライト持ってきて、福寿っていうところを浮かび上がらせた。監督がそんな気を使ってくれてるんだよ。ライトを当てて映るようにして撮ってくれた」と、エピソードを明かした。

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