パラ閉会式や半沢直樹でも登場 創業70年の老舗ラーメン店がロケ地に使われるワケ

メニュー表の価格は25年変わっていない【写真:ENCOUNT編集部】
メニュー表の価格は25年変わっていない【写真:ENCOUNT編集部】

「テレビの番組だけでも200本くらい出ているかもしれない」

 閉会式の映像とは聞かされていなかったが、快く応じるのはいつもの流れだ。

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 コーディネーターとなる人物やカメラマンは「たいてい、知り合いが多い。撮影日、時間を言って来てね。こちらの都合で持って『土日は嫌だよ、昼間は困るよ』って言ってる。それをくぐったらいいですよと」。

 もともと福寿の常連にはテレビ番組のプロデューサーや映画監督が多かった。その縁で、ロケ地として使用されるようになった。

 最初に使われたのは黒柳徹子の青春期を描いた映画「トットチャンネル」(1987年)だった。その後、「笑っていいとも!」(フジテレビ系)の放送初期に紹介されたことから、人気に火がついた。

 司会のタモリが学生時代、客として福寿を訪れていた。

「タモリさんが来ていたので番組に呼ばれた。古舘伊知郎さんと中尾ミエさんとタモリさんとで『福寿呼ぼう』ということになって。『俺、あがるから嫌だ』と言ったら、『周りは全部プロで固めてますから大丈夫ですよ』と言われてね。そのときの反響は全国的で、すごかった」

 お忍びで通う芸能人は多い。俳優渡辺謙や若き日のお笑いコンビ「ダウンタウン」松本人志もプライベートで訪れた。グルメリポーターの彦摩呂も仕事外で駆けつけるほど。女優や作家、音楽業界、マスコミ業界の重鎮…小林さんは膨大な量の写真を見返しながら、懐かしそうに説明を加えた。

 浅香光代さんとフィンガー5を売り出した世志凡太はそろって来店。カウンターに座る浅香さんから「マスター、私たちが仲人するから結婚しなさいよ。女は苦労した人がいいわよ」とアドバイスを受けたこともある。

「テレビの番組だけでも200本くらい出ているかもしれない」。昨年は人気ドラマ「半沢直樹」第7話で使用され、賀来賢人が来店した。グーグル翻訳アプリやGUのCMなど大手の広告にもロケ地として起用されている。

 そのたびに関心は高まり、雑誌の掲載を見た人が、大阪から「今から行くから。これと同じの作って」と日帰りで食べに来たこともある。ハワイの番組にメッセージを送ったところ、それを見た外国人が、のれんの前に立っていることもあった。「地球は狭くなったもんだと。ハワイでテレビ見て、ここまで来るかよって」と小林さんはうれしそう。最近ではファン・ジョンミンが主演する日本未公開の韓国映画に出演。日本から渡韓していち早く映画を見た女性が帰国後、食べに来たという。

 看板メニューのラーメンはしょうゆベース。「シンプルイズザベストっていう感じ」の言葉通りだ。価格も500円と良心的で、値段は「25年は変わってないかな」。「スープに関しての取材はみんな一応、断ってるんだけど、伝統的に昔からやっている70年の実績。同じものを売って70年もやってる。それで人が来る。興味を持つ人がいたらそこ」。変わらぬ味を求めて、4代続けて食べに来ている客もいる。ラーメンに魅せられ、赤坂の中華料理店を辞めたその日に土下座して弟子入りを懇願した人もいたという。

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