【週末は女子プロレス #1】坂崎ユカ「試合後は廃人のように無」 山下実優戦で見えた“女子大トリ”の可能性を探る

人気漫画「鬼滅の刃」に影響の新技披露

「あの試合に関しては山下への怒りというか、闘争心、絶対に倒すとの気持ちしかなかったと思います」

 蹴りを得意とする山下に対抗するため用意した冠先割(カムロサキワリ)は、人気漫画「鬼滅の刃」からインスパイアされたアッパーキック。「食らわすため」に開発した蹴りをヒットさせることはできたものの、流れを傾けるには至らず、フィニッシュにこだわった魔法少女スプラッシュのバリエーションも試合を決めるまでにはならなかった。1年半ぶりの東京女子頂上決戦は、終わってみれば山下の防衛。試合後、山下が歩み寄ると坂崎が張り手をぶち込み、ぶ然とした表情で退場した。結果はともかく、握手で健闘を称え合うと思われただけに衝撃的なシーンでもあった。

「結果を認めたくなかったというのもあるんですけど、握手したら(ライバル関係が)終わっちゃうような気がして…」

 負けたままでは終われない。その気持ちが、あの張り手になって表れた。大会のエンディングではGHC王者に返り咲いた丸藤、KO-D王座を守り抜いた秋山と並び、山下が大会を締めくくった。その歴史的シーンを、坂崎はどんな思いで見ていたのだろうか?

「負けたショックが大きくて、実はまだあの大会を振り返ることができないでいるんですよ(大会2日後の6月8日に取材)。試合後は廃人のように無でしたね。エンディングでみんなとステージには行ったけど、選手がこんなにいっぱい出てたんだなあって思うくらいで、ほとんどなにも考えられない状態でした。でも、いまになってみれば自分らしい闘いはできたのかなとは思うので、これからまた自分のスキルを上げていく作業になるんじゃないかなって思います」

 エース山下との闘い、ライバル関係はまだまだ続いていく。そして再び、プリンセス王座のベルトを取りに行く日が来るだろう。「東京女子は私の宝物。その中で一番のベルトは、宝物の中の特別な宝物ですね(微笑)」。
 
 そしてなによりも、今大会の開催がとてつもなく大きなモチベーションになったと坂崎は言う。力でタイトル挑戦の権利を勝ち取った坂崎だが、これはある意味、コロナ禍の団体をまとめてきた“ごほうび”のようにも思えるのだ。そしてさらに大切なのは、女子プロのポテンシャルを山下と、そして団体全体で見せつけたことではないか。このような男女混合のビッグマッチが再び開催されるとしたら、いつの日か女子の試合が真のメインに組まれてもおかしくはないだろう。実際、世界最大のプロレス団体WWEではいまや女子の試合がメインを飾るのも珍しくなくなっている。高木三四郎社長は今大会で「業界ナンバーワンを目指す」とあらためて宣言した。それだけに、世界の流れに乗る意味でも女子メインの実現に希望が持てるのではなかろうか。そのきっかけを作ったのが山下VS坂崎のタイトルマッチ。敗れたとはいえ、坂崎も「サイバーファイトフェスティバル」主役の1人だ。

「結果こそついてこなかったですけど、次(への希望)があるということが幸せですよね。東京女子は地道に成長して認めていってもらった部分があるので、将来的には東京女子が最後の大トリを取る大会も、やりたいなと思います」

 これが実現したとき、真のメインでリングに立っている女子レスラーは坂崎か、それとも…。

次のページへ (3/3) 【写真】6・6さいたまでの山下実優戦はし烈を極めた…人気漫画「鬼滅の刃」インスパイアのアッパーキックも公開、実際の写真
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