「ザ・ノンフィクション」が放送1000回 制作者が語る現代ドキュメンタリーの難しさ

「ザ・ノンフィクション」第1回は野茂英雄氏だった【写真:(C)フジテレビ】
「ザ・ノンフィクション」第1回は野茂英雄氏だった【写真:(C)フジテレビ】

物語と“語り”による「化学反応」もポイント「想像がつかないほうが面白い」

 コロナ禍以前より、13人の子どもがいる大阪の大家族を密着していた。父親が新型コロナに感染し、ECMO(体外式膜型人工肺)を使用するほどにまで重篤化し、生死の淵をさまようこととなった。

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 結果としては無事に回復し、前・後編で放送したが、「恐らく他局や世界を含めてもECMOから生還した人のビフォア&アフターの密着映像は初めてなんじゃないかと思います。ECMOを装着する時に、医師が気を利かせて、家族とテレビ電話をさせてあげていたんです。その様子を家族が録画してくれていたのですが、実は音声を録り忘れてしまっていたんです。でも、そんなことはどうでもいい。本当に家族が、大切な人を失ってしまうかも……と覚悟したときのリアルな映像、すごい記録を放送できました」と印象深いという放送回を振り返った。

「ザ・ノンフィクション」では、毎週アナウンサーやナレーター、声優にとどまらず、俳優や芸人、スポーツ選手などさまざまなジャンルで活躍する人が番組の“語り”に挑戦する。「放送1000回SP」(11日、18日放送)は番組最多となる34回の出演を誇る女優の宮崎あおいが担当する。

“語り”の選定については「番組を作る以上、制作者としてはできるだけ多くの人に見てもらいたい。仕掛けとしてはできるだけ話題になる人や『この人が読んでいるんだ』って思ってもらえたらいいなというのはあります」と説明。一方で、「ナレーションも音楽と一緒で音なんです。世界観や空気を作ってくれている。物語に合った声を出せる人をあてるというのがキャスティングの考え方なんです」ともした。

 さらに、「化学反応」をポイントに挙げた。「“ダメ芸人”の話を吉岡里帆さんが読んだ時の面白さってあるんです。“ダメ芸人”のストーリーを女芸人が読んでも、多分面白くはないんです。“ダメ芸人”を無垢(むく)な声の吉岡里帆さんが語るのが結果的にすごく面白くなるし、変なアクも抜け、想像がつかないほうが面白いじゃないですか」とこだわりを明かす。

 1000回スペシャルの放送後には、また新たなストーリーを世に送り続ける。「みんなが生きる上での優先基準を迷っている時代なので、そういうことが今後もテーマになってくると思います。そういったものをちゃんと記録して、伝えていける番組であるべきだと思っています」と今後について口に。さらに、「17年取材を続けて、1回放送して終わりということもある。こんなにもすばらしいものがたった1回という気持ちもあるので、個人的には映画や配信プラットフォームなど、そういったところで届けることができないかということは考えています。今はドキュメンタリーに需要があると思うので、せっかくこんなにも長く続いてる番組なので、もう少し広げていきたいなと思います」と目標を語った。

※宮崎あおいの「崎」の正式表記はたつさき

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