映画「漂流ポスト」清水健斗監督インタビュー公開 「震災が物語の駒にならないことを心がけた」

「外ものが作った震災映画とは違う」

――脚本を開発する上で注意した点はどこですか?

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「震災が物語の駒にならないことを心がけました。被災者の方に聞くと、映画の題材にした時にお涙ちょうだいものの道具にしか見えないそうで、『震災っていう設定は必要?』と思うそうです。製作者の都合で震災を使うというのは僕はありえないなと思い、とにかく被災者ファーストで物語を作らなくてはいけないと思いました。被災者が実際に見てどう思うか、実際に見れるか、被災者の目線に立って考えました」

――本作で出てくる漂流ポストや主人公が他の方が書いた手紙を読むガーデンカフェ森の小舎や各地から送られてきた手紙は本物なんですか?

「全部本物を使っています。ドキュメンタリーでは色々なテレビ局が漂流ポストについて扱っていますが、フィクションでは初になります。森の中にポストを建てれば再現はできるんですが、あそこの空気感であったり、場所が持つ意味は、それでは表現できないと思ったので、なんとしてもそこで撮りたいというのと、手紙は本物を使った方がよりメッセージ性が伝わると思ったので、そこは粘り強く赤川さんと交渉してOKをもらいました」

――ドキュメンタリー的なシーンもあるとの事ですが、どのシーンですか?

「小舎の中で手紙を読むシーンは実は2回撮っているんですけれど、前日の取材の時に主演の雪中さんに劇中の衣装を着てもらい、『アングルテストをするから、役作りのために手紙を読んでて』と言って、手紙をその場で読んでもらったんです。ご本人はアングルテストだと思っているものを本編で使っているんです。演技でやったテークも良かったんですけれど、演技でやったテークと自然体で撮ったテークは内面からくる空気感だったりが違ったので、それを生かしました」

――被災地の方は、本作を見て何と言っていましたか?

「東日本大震災津波 伝承館という国営の施設で上映会を開いていただいた際に300人くらいが見ています。アンケートに答えていただき、『いい作品だ。外ものが作った震災映画とは違う。心理はちゃんと描けてると思う』と言ってくださいました」

――本作で特に注目してもらいたい部分はありますか?

「画で伝わる、音で伝わる、視覚、聴覚、五感に訴える映画にしたいと思ったので、細かい映像の持っている意味だとか音の使い方で、日常にありふれたものの大切さを描き、作品全体を通しては、震災からどう立ち直るか、などを描いています。10年前は、みんなが支えあって、誰かのことを思って、みんなが協力した、人間としてはいいサイクルだったと思うんです。コロナの時代にも通じると思いますので、映像、音、作品全体を通したメッセージからそういったものを感じてもらって、何か今後の生活の中でちょっとしたことをもっと大切にしてもらえたらうれしいと思います」

――インタビューを読んでいる方にメッセージをお願いします。

「『漂流ポスト』は、映像が綺麗なのはもちろんなんですが、風や水の音だったり日常の何げない音をピックアップして拾い、音の表現にかなり力を入れているので、ぜひ映画館で五感を研ぎ澄ませて見ていただければと思います。見ていただければおそらく心の中に引っかかるものがあると思いますので、まずは映画を感じてもらえるとうれしいです。映像で中学時代と心が曇った時代も表現し、美しい映像美を全面に出していますので、そういった部分を見ていただけるとうれしいです」

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