映画「漂流ポスト」清水健斗監督インタビュー公開 「震災が物語の駒にならないことを心がけた」

岩手・陸前高田の山奥に建てられた“漂流ポスト”を題材に、心の復興を描く公開中の短編映画「漂流ポスト」の監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督の公式インタビューが解禁となった。

清水健斗監督【写真:(C) Kento Shimizu】
清水健斗監督【写真:(C) Kento Shimizu】

「映像を使って風化を止めるような作品を作りたかった」

 岩手・陸前高田の山奥に建てられた“漂流ポスト”を題材に、心の復興を描く公開中の短編映画「漂流ポスト」の監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督の公式インタビューが解禁となった。

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 作品は、ニース国際映画祭「最優秀外国語短編映画グランプリ」、ロンドン国際映画祭「外国語長編作品部門 最優秀助演女優賞」(神岡実希)、ロサンゼルス・インディペンデント映画祭「最優秀外国語短編映画」、テキサスのプレスプレイ映画祭「最優秀短編映画及び最優秀監督」、バルセロナ国際映画祭「審査員賞」を受賞した話題作。

“漂流ポスト”とは当初、東日本大震災で亡くなった人への思いを受け止めるためのポストだったが、今では病気や事故など、震災に限らず亡くなってしまった最愛の人に向けた思いを手紙につづり、届ける場所と役割を変えた。震災から10年経った現在も多くの手紙が届き、その数は500通を超える。手紙は同じ境遇の人々にシェアされ、心の復興を助けている。

 清水監督の一問一答は以下のとおり。

――漂流ポストとは何ですか?

「岩手の陸前高田市にあるポストで、被災者の方が、3.11で亡くなったご家族や恋人や友人などに向けて想いを手紙にして届け、亡くなった方に想いをはせるポストです」

――本作の制作の経緯をお教えください。

「もともと僕がCMの制作会社にいる時に、2011年1月から岩手に通っていて、3月12日に現地でロケハンがある予定で、3.11の地震の5分くらい前まで現地の方と電話で話していたんです。僕は電話を切って5分後に東京で被災したので、東北の方は電話を切った瞬間ぐらいに地震に遭っていて、1週間後にやっと連絡がつきました。その方は無事だったんですけれど、もし1日ずれていたら僕も震災に遭っていたでしょうし、生かされているんだなとその時感じました。仕事が落ち着いたところで、ボランティアがゴールデンウイーク明けにいなくなるという報道があったので、3月に自分が行く予定だった岩手の陸前高田、大槌、釜石に長期ボランティアに行きました。その時避難所に一番長くいたので、避難所の方と一番話したのですが、心に負った傷や受け入れられない現実など生の声を聞く機会が多かったので、映像に関わっている人間としては、そういったものを伝えていかなくてはいけないなと感じて、悶々(もんもん)としていました。けれど、3年くらいすると、あれだけ被災地に行って学んできたのに、意外とそのことを忘れてしまっているとふとした時に気づいたんです。3.11の1年後、2年後、3年後と特集するテレビ番組が減っていったりだとか、風化が進んでいると実感したので、映像を使って風化を止めるような作品を作りたいなと思いました。それを考えている時にドキュメンタリーで漂流ポストの存在を知って、漂流ポストをモチーフにすれば、僕のやりたい風化を止めるような作品ができるではないかと思い、漂流ポストを管理している赤川(勇治)さんを訪ねて交渉を重ねて、映画化しました」

――脚本執筆時、どういう人たちに取材をしたんですか?

「ポストに関しては赤川さんです。実際に来た方の手紙を見せていただいて、その方がどういう動きをしていたかとかを聞きました。演技にリアリティーを出したかったので、みんな天を見るという話を聞いて、演技の中に入れたりしました。手紙を書いた人に直接連絡したいと思ったのですが、赤川さんからやめた方がいいと言われました。『答えることがマスコミ向けになってしまい、本心で話してくれないから、監督がどういうことを描きたいかだとか、手紙を読んでどう感じたのかというのを投影してちゃんと描いた方がいいのではないか』と言われました。被災者の心理は、ボランティアをやっている時に避難所にいた方ほぼ全員と話していたので、取り入れて行って、被災者の方が見ても見れるような描き方で、被害者ファーストで作ることを目指しました。昔はこうだった、あの時こうすればよかったという話は仲良くなると必然的に出てくるので、その経験を全部この映画に投影しました。主人公が友達からの電話を取れなかったというのは、僕の経験からです。3.11の5分前に電話で話したのが僕の友達で、電話に出なかったら一生の別れだったかもしれないんです。もしこうだったらと想像を膨らませていきました。劇中の携帯は実は僕が3.11の時に持っていた携帯で、自己投影も入っています」

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