自粛要請も“昼飲み”密集 ルポ「東京大歓楽街」上野再訪 客「もういっか、て感じ」

昨年春に続き2回目の緊急事態宣言が出されて1週間が過ぎた東京。小池百合子都知事は陽性者数の急増に「桁が違う状態だ」と危機感を募らせ、都民に対しては特に午後8時以降の徹底した外出自粛、飲食店に対しては営業時間を午後8時までに短縮するよう要請している。しかし、そのメッセージは人々の胸に届いているのだろうか。16日午前、大歓楽街が広がる上野の街を再訪してみると、そこに広がっていた光景は“昼飲み”という快楽に酔いしれる人々の姿だった。

“昼飲み”と“夜飲み”が交錯しにぎわいは続く
“昼飲み”と“夜飲み”が交錯しにぎわいは続く

特定エリアで居酒屋の出店ラッシュ、昼飲みはコト消費―下町ならではのノスタルジー

 昨年春に続き2回目の緊急事態宣言が出されて1週間が過ぎた東京。小池百合子都知事は陽性者数の急増に「桁が違う状態だ」と危機感を募らせ、都民に対しては特に午後8時以降の徹底した外出自粛、飲食店に対しては営業時間を午後8時までに短縮するよう要請している。しかし、そのメッセージは人々の胸に届いているのだろうか。16日午前、大歓楽街が広がる上野の街を再訪してみると、そこに広がっていた光景は“昼飲み”という快楽に酔いしれる人々の姿だった。

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 電車がごうごうと音をたてて行き交う高架ガード下。周辺にはいくつもの居酒屋が密集している。午前10時53分。立ち飲み居酒屋の前ではマスク姿の30代半ばほどの男性3人が楽しそうに談笑していた。「よく来るんですか?」と声をかけると「ええ。ここはこの店とあそことあそこの3軒が人気なんですよ」と教えてくれた。同11時。開店と同時に40代ぐらいのリュックを背負った男性が1番乗りで入店すると、次から次へと客が入っていく。入口に消毒液が置いてあるが、見た限りでは手指消毒する客はまばらで、店側が検温をしている様子はまったくない。先ほどの男性客に「怖くないですか?」とたずねると、「まあ、もういっか、て感じです」と豪快に笑った。この店は普段は早朝7時に開店して夜勤明けの客でにぎわっているが、緊急事態宣言を受けて午前11時開店に変更している。

 同11時10分。カウンターは20人ほどの客ですでに埋まり、店員が慌ただしく注文を取りに走る。客同士の間隔は50センチほどでかなり近い。飛沫飛散防止のアクリル板は見当たらない。近くの居酒屋もオープンし、ビニール製の透明カーテンをくぐって客が次々と店内に入って行った。通りがかった20代とみられる男女2人が「もうやってるの?」と驚きながら店の前を通り過ぎて行った。店内の各所に消毒液のボトルが置かれているが、手指消毒をするかどうかは客に任されている。しばらくすると、この界隈の居酒屋は先を争うように次々と店を開けていった。「どうぞー、やってますよ!」。店員の呼び込む声に、待ってました!とばかりに大勢の客が入店し、周辺の居酒屋はどこも満席状態だ。

 観察していると、店によって客層が微妙に異なっていることに気付いた。立ち飲み居酒屋の特にカウンターにいる客は50代以上と見られる中高年男性ばかりで、安い瓶ビールを自らコップに注いで黙々と飲んでいる。マスクは全員外しているが、隣同士で会話を始めるでもなくスマホをいじっている人もいない。自身を慰労するかのように名物のつまみを静かに味わい、ビールを胃に流し込んでいる。「絆」という言葉の氾濫から距離を置く自由、と同時にそこには孤独の影がちらつく。

 一方、テーブル席のある店では、カウンターの座席は立ち飲み居酒屋同様、高齢層の男性客で占められているが、テーブル席は30代や40代の客も加わり始めていた。午後0時5分。30代くらいの男性3人連れがやってきた。そのうちの1人が「ここ1000円で飲めるんだ。めっちゃ安いだろ?」と得意げに話しながら店内に飲み込まれていった。別の居酒屋の店先では20代前半ぐらいの女性3人組がサワーを飲みながらおしゃべりに余念がない。おおむねカウンター席は高齢男性の1人客、テーブル席は高齢男性客同士、あるいは比較的若い層の男女という区分けができるかもしれない。相席になった知らない者同士が杯を交わし会話を弾ませる、といった光景が下町らしい。

次のページへ (2/2) やったもん勝ちな緊急事態下の居酒屋営業「うちだって可能なら夜8時過ぎも営業したいよ」
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