自分の気持ちを歌で伝える――。そんな思いがにじみ出るパフォーマンスだった。12月1日、東京･赤坂ACTシアターで開催された「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」。STU48 2期研究生・池田裕楽の初出場・初優勝が決まった瞬間、祝福の拍手を送るとともに、悔し涙を流すメンバーがいた。同じSTU48の1期生・矢野帆夏だ。今大会の彼女には、夢を追いかける力強さがあふれていた。

　3大会連続の決勝大会進出(第2回大会はけがで欠場)となった矢野は、1曲目にaikoの「KissHug」を披露。得意のバラードで勝負し、NMB48山崎亜美瑠、SKE48山内鈴蘭ら実力者の揃う第1組を2位で通過した。そして、最終決戦では渡辺美里の名曲「My Revolution」をセレクトしたが、自身が課題とする低音もあり、音域も広い難易度の高いポップ・ロックを「STU48の思いを背負って」歌い切った。

　矢野は歌唱前、「My Revolution」について「歌詞とタイトルが自分のためにあるような曲だなと思って選びました。自分の人生とか、歌に対する思いがこの曲に全部詰まっています。自分の思いをそのまま、歌に乗せて気持ち良く、楽しく歌いたい」と語っていた。

　彼女のアイドル人生は、「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」が転機となっている。

　17歳でAKB48グループの曲を一曲も知らずにSTU48に加入した当初は、選抜落ちも経験して、「自分の歌声を多くの人に届けたい」という思いがかなわない悔しさで涙したこともあった。しかし、「第1回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の7位入賞をきっかけに、2020年1月発売のSTU48 4thシングル「無謀な夢は覚めることがない」で16人体制では初の選抜入り。歌唱面でグループを引っ張ってきた。だからこそ、「私がSTU48を引っ張っていくためには、優勝しかない」と強い決意で今大会に挑んだ。