東日本大震災後に寄贈され尽力したスカイライン、引退後の行方に反響…仕入れた業者の決断「今後も国内で」

引退後のスカイラインは、業者向けの中古車オークションに出品されていた。きいちろうさんは、一般の中古車と同じように市場へ流れていくことに、複雑な思いを抱いたという。

引退後が話題になっている日産・スカイライン【写真:本人提供】
引退後が話題になっている日産・スカイライン【写真:本人提供】

家族が託した愛車は仙台市消防航空隊の連絡車に

 東日本大震災の後、仙台市消防局に寄贈された日産・スカイライン。消防航空隊を地上から支え、約15年間を無事故で走り抜いた一台が、今年6月に引退した。時間が経過し、“その後の行方”が判明した。福島の中古車業者が引き取ったのだ。11月に入って、業者はある決断を行った。「できることなら今後も国内で末永く乗り継いでいただけたら」との熱い思いをつづったSNS投稿が反響を呼んでいる。引き受けた経緯と、次の持ち主に託す思いを聞いた。

人気俳優の韓国からスタートした愛車遍歴…“顔”で決めるクルマ選び(JAF Mate Onlineへ)

「正直、安値であっても、赤字になったとしても構いません」

 11月2日に仕入れを報告したのは、福島・中通りで中古車販売店「満島自動車」を営む、きいちろう(@790mqh75)さん。車両は約30年前の1997年式で、R33型と呼ばれる日産のスカイラインだ。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災で、仙台市消防局は津波により多くの車両を失った。その年、同局に寄贈されたのが、このスカイラインだったという。

 もともとは埼玉県のオーナーが大切に乗っていた愛車だった。その家族が被災地の状況や消防局の車両不足を知り、復興や消防活動の一助になればとの思いから、車を託したという。

 津波被害を受けた消防航空隊は、震災後に拠点を移した。寄贈されたスカイラインは連絡車として使われ、移転後の航空隊の毎日の連絡業務を支えた。

 15年間で10万キロ以上を走り、その間は無事故だった。車両の老朽化により、今年6月に役目を終えた。同局は、引退を伝えるSNS投稿に感謝の言葉を添えた。

「復興の歩みとともに走り続けてくれたスカイライン、心からの感謝を込めて。本当にありがとう」

仙台市消防局の航空隊で連絡車として使われた【写真:本人提供】
仙台市消防局の航空隊で連絡車として使われた【写真:本人提供】

来歴を知り、利益を度外視して仕入れを決断

 引退後のスカイラインは、業者向けの中古車オークションに出品されていた。きいちろうさんは、一般の中古車と同じように市場へ流れていくことに、複雑な思いを抱いたという。

 前の持ち主との思い出や、寄贈した家族の思い、航空隊で重ねた年月も、次の持ち主に受け継いでほしいと投稿につづった。「そうした経緯を知ると、居ても立ってもいられず、仕入れ値や利益のことは度外視し、今回の仕入れを決断いたしました」。

 きいちろうさんが実車を確認したところ、車体の各所には経年による腐食があった。保存状態の良いコレクターズカーではないという。「内外装の各所に残る使用感や年月を重ねた痕跡を見ると、この車両が15年間、消防航空隊の活動を支え続けてきたことを改めて感じます」。

 仕入れを報告した投稿には、引退後の行方を気にかけていた人から「新たなご縁がありますよう祈っております」との声も寄せられた。

 きいちろうさんは普段から、日本の自動車文化を尊重し、国産車を一台でも多く後世に残したいとの思いで仕事をしている。世界的にも人気を誇るスカイラインの車種には特別な思いを持っている。

「時代の流れとともに、かつて当たり前のように街を走っていた日本車が、年々姿を消していくことに寂しさを感じています。特にスカイラインという車は、日本の自動車史を語る上でも欠かせない存在だと思っています。そんなスカイラインが、日本国内から少しずつ失われていくことが、個人的にはとても悲しいです」と胸中を明かす。

 震災復興に奔走したこのスカイラインを引き受けたことに、強い使命を感じているという。

「これほど多くの人々の思いや歴史が詰まった車両だからこそ、なおさら、このまま日本から姿を消してしまうようなことがあってほしくないと思っています。次のオーナー様にも、単なる一台のスカイラインとしてではなく、この車両が歩んできた30年間と、そこに込められた人々の思いを大切に受け継いでいただけたらと思っています。そして、できることなら今後も国内に残り、これから先も日本のどこかで第三の人生を歩んでいってくれたら幸いです」

 現在はYahoo!オークションに出品しており、記録関係の書類については「ご理解があり記録簿、特殊車両届出書等全て破棄せずに引き渡しさせていただきましたので、そのままお渡しします」とのことだ。車の来歴を十分に理解した上で、これからも日本国内で大切に乗り継いでくれる人を探している。

次のページへ (2/2)
1 2
あなたの“気になる”を教えてください