「AAA(トリプル・エー)」の宇野実彩子が4日、配信シングル「最低な君にさっきフラれました」をリリースした。失恋直後の心境を女性目線で赤裸々に描いた歌詞が切なく心に響く宇野の新境地とも言えるラブバラード。初挑戦となるドラマ仕立てのミュージックビデオ(MV)では、俳優・山田裕貴と豪華な共演が実現。さらに日本アカデミー賞受賞監督の藤井道人氏がメガホンを取り、楽曲の世界観を見事な映像美で表現している。2回にわたって新曲の魅力を紹介するインタビュー。後編は宇野と恋人役を演じた山田も迎えてMVの撮影裏話を語ってもらった。（取材・文＝福嶋剛）

　今回藤井氏にMVのオファーを行ったのは宇野。過去に藤井氏が監督を務めたAbemaTVドラマ「会社は学校じゃねぇんだよ」に出演していた経験をもとに声をかけたという。

宇野「この歌をMVで表現する際、きれいになりすぎないで人間の表と裏を絶妙に表現したかったんです。そこで映像の雰囲気がどこか優しい冷たさや闇を持っている藤井監督と一緒にできたら1つのアートとしても素敵になりそうだなって。また同い年なので共通言語も多いだろうなって。それでご一緒したいと思いました」

　一方、MVに主役として出演するのは久しぶりだと語った山田は、宇野との初共演について聞かれると笑みを浮かべながら喜びを語った。

山田「すごくうれしかったです。AAAはデビュー曲から知っていて、僕が出演した作品の主題歌も担当していただいたり。宇野さんは、すごく明るそうな人だから、(恋人役のオファーがあった時に)たぶん大丈夫だろうなって率直に思いました。MVは2日間ぐらいで一気に撮ったんですが、うれしかったです」

宇野「(初顔合わせは)衣装合わせでしたね。それまでの作品を見させていただいて、変幻自在にいろんな役をやられていてすごい柔軟な方で。だから“最高であり最低な彼氏”を演じてもらうには山田さんだなと思っていて。(撮影前から)すごく楽しみにしていて、実際に会ったらすごく気さくな方で、私は割と人見知りなタイプなんですけど、すごく話しやすかったです」

山田「最初のカットが始まったかぐらいの時に宇野さんが『緊張する』って。それで『今までドラマ仕立てのMVとかよくやってるんじゃないんですか？』って聞いたら初めてだったみたいで。一気に(緊張感で)やばいって思ったんですけど、でもやっていったらすごく自然な空気感というか、やりやすかったです」

　MVは現在から過去へとさかのぼる構成で、まるで映画を見ているような1つ１つの印象的な映像の美しさが、より一層見るものの切なさを倍増させる。特に印象的だったシーンについて聞くと2人はアドリブが飛び交う激しいケンカのシーンだったと振り返った。

宇野「あのケンカは本当に壮絶でした。ある程度設定はありましたけど、どうやって(2人が)壊れていくんだろうっていうのは私たちもやってみないとわからないという。(事前に)『ケンカする時って普通はこうだよね？』って話はしていたんですが、じゃあ私たち2人だったら、どういうケンカになる？ってやってみないと分からなかったから。いざケンカのシーンが始まったら、次に別れに持っていくっていう設定は決まっていたんですが、それを2人で見合いながらどうやってそこまで持っていくか、ものすごく心が辛くて。決まっていないからこそ、お互いが感じ取れちゃうから苦しくて。あのケンカのシーンは忘れられないです」

山田「(ケンカのシーンは)お芝居だとはあんまり思わなかったです。設定だけあって後は自然に出てくる言葉や声を聞いて受け取って返すというキャッチボールというか。すごいもうセッションでしたね」

宇野「そう！セッション。あれはあの時しか出せない」

山田「15分ぐらい回して4回ぐらいやりましたよね。あの声はリアルでした」

宇野「ちょっと震えながらとか。あれは人生史上、1番のケンカだったかも。あんなに辛いケンカはないですね」