「好きな子をAVに」 写真1枚で性的動画をAI生成…無料サービスが拡散 「現状取り締まる法律がない」弁護士が見解

AI技術を応用し、他人の写真から無許可でAV動画を生成できるというサービスに波紋が広がっている。AIの顔入れ替え機能により、AV動画の出演者の顔を任意の第三者に変更できるとするサービスで、無料プランも用意されており、公式サイトでは「累計30万人以上が利用」と宣伝。「法令に準拠した安心のサービス」「法令を遵守したコンテンツ」であることを強調している。法的な面からはどのように考えられるのか。日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ樋口国際法律事務所の樋口一磨弁護士に見解を聞いた。

卒業アルバムの写真から勝手にAVを生成される懸念も…(写真はイメージ)【写真:写真AC】
卒業アルバムの写真から勝手にAVを生成される懸念も…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

AIの顔入れ替え機能により、AV出演者の顔を任意の第三者に変更

 AI技術を応用し、他人の写真から無許可でAV動画を生成できるというサービスに波紋が広がっている。AIの顔入れ替え機能により、AV動画の出演者の顔を任意の第三者に変更できるとするサービスで、無料プランも用意されており、公式サイトでは「累計30万人以上が利用」と宣伝。「法令に準拠した安心のサービス」「法令を遵守したコンテンツ」であることを強調している。法的な面からはどのように考えられるのか。日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ樋口国際法律事務所の樋口一磨弁護士に見解を聞いた。

「普通のAV見飽きたらこれ!! 好きなAVを…好きな子に変える!」

 今月中旬、SNS上でAV動画生成サービスの広告の一部が拡散。顔写真1枚からAV動画を生成できるという内容に、ネット上では「写真さえあれば勝手にAVが作られちゃうってこと?」「めちゃくちゃ怖いです」となど、懸念の声が相次いでいる。

 拡散されたサービスの公式サイトでは、利用の基本ルールとして、私的利用の範疇(はんちゅう)に留めること、18歳未満や未成年時の写真は使用しないことなど、注意事項を明記。「『個人鑑賞の範囲で楽しむこと』を前提としています」と注釈した上で、「個人利用の範囲で楽しむ分には、法律上の問題はありません」「『こっそり楽しむ用途』で安心してお使いいただけます」としている。

 実際に、他人の写真から無許可でAV動画を生成することに法的な問題はないのか。樋口弁護士は「私的利用の範囲に限れば、今の段階では法に触れない可能性が高い」と解説する。

「生成した動画を公開すれば、わいせつ物陳列、公然わいせつといった刑法に触れるほか、本人に対する慰謝料など、さまざまな責任が発生します。ただ、純粋な私的利用、個人での鑑賞の範囲に限ると、日本では現状これを直接取り締まる法律はありません。また、SNS上などに本人の意思で公開されている写真は、やはり私的利用の範囲であれば保存や加工をしても、基本的に肖像権やプライバシーの侵害にはなりません。仮に本人が何らかの形で自分の写真が利用されていることを知れば、民法上の不法行為として、精神的苦痛に対する損害賠償を請求することはできる。ただ、本人が知らない場合はそもそも訴えを起こすことができません」

 2023年には性的姿態撮影等処罰法、通称・撮影罪が施行。同意のない性的な画像や動画の撮影・公開だけでなく、公開目的での保管自体も罪に問えるようになった。樋口弁護士は、この法律が取り締まりの糸口になるのでは、と見解を語る。

「従来、刑法の網にはかからず、自治体の迷惑防止条例で対処されてきた行為を処罰するためにできた法律で、画像や映像を持っているだけでもアウトとなりうるもの。ただ、保管が処罰の対象になるのはあくまでも公開目的の場合で、これも私的利用の範囲では処罰対象にはなりません。もっとも、私的利用と主張しても状況から公開目的と評価され、警察の捜査対象となる可能性はあります」

 児童の被害も深刻だ。民間のネットパトロール「ひいらぎネット」の永守すみれ代表によると、小中学校の学校行事や卒業アルバムの写真から性的フェイク画像を生成され、いじめや脅迫、実際の性犯罪に発展する被害もあるという。名古屋地裁は今年6月、実在する児童の写真を生成AIで加工した性的ディープフェイクの所持を、児童ポルノ禁止法違反と認定。未成年の性的なAI生成物を児童ポルノとする初の司法判断が下された。

 急速に拡大する生成AIによる性的被害に対し、諸外国はすでに対策に乗り出している。樋口弁護士によると、韓国や台湾では、本人の同意のない性的ディープフェイクの作成・所持・公開を法律で禁止。アメリカやEUでも法整備が進んでいるという。AI後進国と言わざるを得ない日本の現状について、樋口弁護士も法整備の必要性を訴える。

「一般に公開されているメジャーな生成AIツールでは、性的な指示を弾くよう自主規制プログラムが組み込まれています。しかし、今回のように性的な生成物専用のAIツールが誕生してしまうと、それを直接取り締まる法律がない以上被害が拡大してしまう。利用者に対して、性的画像の生成を直接禁止したり、著作権の視点から性的目的での複製は私的利用であっても禁止とする。あるいは開発者に対し、性的なAIツールの開発や提供自体を禁止したり、自主規制プログラムの組み入れを義務付けるなど、規制の方向はいろいろと考えられます」

 急速に拡大する成人向けコンテンツでのAI利用。表現の自由や人権保護の観点から、どこまでが許容され、何に対し規制をかけていくべきなのか。早急な議論が求められている。

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