熊本地震で梨が9割近く落下…被災者にジュースとして無料提供 「希望の梨」で新たな支援も

7月28日に発生した「令和8年熊本地震」で、最大震度7を観測した熊本県氷川町。大きな被害があった同町では、梨農園「きのみ農園」で収穫直前だった梨の9割近くが落下する事態も発生した。キッチンカー販売も手がける農家が、商品にならなくなった100キロ以上の梨を引き取り、生搾りジュースとして被災者らに無償提供したことが話題になっている。さらに梨農園を支援するため、落下を免れた梨を「希望の梨」として販売する企画も始めた。活動に携わる女性に、行動を起こした経緯や被災地の現状を聞いた。

梨ジュースの無料提供で多くの人を喜ばせたキッチンカー【写真:X(@yatsushiroSSF)より】
梨ジュースの無料提供で多くの人を喜ばせたキッチンカー【写真:X(@yatsushiroSSF)より】

地震で9割近くの梨が落下…「何かできないか」

 7月28日に発生した「令和8年熊本地震」で、最大震度7を観測した熊本県氷川町。大きな被害があった同町では、梨農園「きのみ農園」で収穫直前だった梨の9割近くが落下する事態も発生した。キッチンカー販売も手がける農家が、商品にならなくなった100キロ以上の梨を引き取り、生搾りジュースとして被災者らに無償提供したことが話題になっている。さらに梨農園を支援するため、落下を免れた梨を「希望の梨」として販売する企画も始めた。活動に携わる女性に、行動を起こした経緯や被災地の現状を聞いた。

「氷川役場にてきのみ農園さんの梨ジュースの無料提供しています!! ぜひ来てください! 収穫期の梨が落ちちゃって何かできないかなと考えて、私たちにできることをしようと思ったら、やっぱりジュース提供でしょう!!!!!」

 7月30日、こうXに投稿したのは「やつしろサニーサイドファームのあかねちゃん」(@yatsushiroSSF)の名前で発信している桑原茜さん。八代市で世界最大級のかんきつ類とされる晩白柚(ばんぺいゆ)や甘夏などを生産する「やつしろサニーサイドファーム」の代表を務める夫の桑原健太さん、4歳と2歳の娘、猫1匹と暮らしており、平日は保険会社に勤め、休日はキッチンカーの手伝いやファームのSNS広報などを担当している。

 キッチンカーを始めたのは約3年前。規格外となった甘夏をジュースにして、できるだけ多くの人に味わってもらいたいとの思いがきっかけだった。今回、落下した梨を提供した「きのみ農園」とは、SNSを通じて交流が始まった。キッチンカーを始めた当初から規格外の梨を買い取り、毎年7~9月ごろに果汁100%の梨ジュースとして販売してきたという。

 熊本地震の激しい揺れにより、きのみ農園では、収穫期を迎えていた梨の8~9割が落下した。茜さんたちはSNSで被害を知り、「落ちた梨は腐敗が早く、販売することができない。せめて氷川町の人たちに味わってもらいたい」と考えた。

 茜さん一家が暮らす八代市鏡町も大きな被害があったが、自宅は断水したものの建物への影響が比較的少なく、動ける状況だったことから支援に乗り出したという。

「うちならジュースとして提供できるので、使わせていただけないかと相談しました。きのみ農園さんにも快く了承していただき、すぐに行動に移しました」

猛暑の避難所で広がった笑顔と助け合いの輪

 地震発生から2日後の7月30日には、氷川町役場で梨ジュースを無料提供。役場には車中泊を続ける住民が多くおり、職員たちは夜通しの対応に追われていたという。翌日はキッチンカーで中学校や小学校を回り、避難している住民や支援物資を受け取りに来た人たちにジュースを配った。

「40度近い暑さが続き、ほかの飲み物はすべて常温になっていました。その中で、氷の入った冷たい梨ジュースを飲み、ほっとしたような笑顔を見せてくださったことがうれしかったです」

 きのみ農園は地元で広く知られていることから、「きのみ農園の梨だ!」「落ちて今年は食べられないと思っていたからうれしい」と喜ぶ声も多かった。何もしなければ廃棄となる梨を、おいしく味わってもらえたことに安どした。

 被災地を回った茜さんは、厳しい暑さの中では、冷たい飲み物や食べ物が喜ばれると実感したという。また、熊本県外の九州各地からも支援者が駆けつけ、被災した住民もそれぞれに「今できること」を考え、助け合っている場面を目にした。

 ただ、八代市や氷川町では断水が続き、入浴できないことが大きな負担になっているという。「断水が解消されるか、温泉施設が一日も早く復旧してほしい」。猛暑の中で不自由な生活が続いている。

 昨年の記録的な豪雨に続き、今年は大地震。「きのみ農園」に限らず、氷川町の梨農園は相次ぐ天災で多大な被害を受けた。経済的な損失は大きく、生産者の精神的な打撃も計り知れない。

 そこで茜さんと健太さんは、震度7の揺れでも奇跡的に木から落ちなかった数少ない梨を通常の5倍の価格で買い取り、「希望の梨」としてネット販売する支援策を始めた。3玉セットで1万1000円(税、配送料込み)。一見すると高く感じるが、購入を通じて全国どこからでも被災した梨農家を直接支援できる仕組みだ。販売開始から約1日で注文が100件を超えたという。

 SNS上では「これは応援するしかない!」「返礼品付きの義援金みたいなものですね」「落ちなかった梨、縁起物としていいかも」といった声が寄せられている。また、茜さんは八代市や氷川町へのふるさと納税も、生産者や地域を支える力になるとして協力を呼びかけている。被災地の傷は深いが、早くも助け合いの輪が広がっている。

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