爆風スランプ、35年ぶりの日本武道館へ 『大きな玉ねぎの下で』誕生の裏にあった「客席が埋まらない恐怖」

今年で結成44年目を迎えたロックバンド・爆風スランプが、8月11日に35年ぶりとなる東京・日本武道館公演を開催する。ミュージシャンの聖地である武道館は、名曲『大きな玉ねぎの下で』を生んだ彼らにとっても特別な場所。本番を前にリリースしたミニアルバム『今こそ!爆風スランプ』を手がかりに、4人が語る武道館への思いと、変わらないバンドの魅力に迫った。

インタビューに応じた爆風スランプ(左から)ファンキー末吉、バーベQ和佐田、サンプラザ中野くん、パッパラー河合【写真:増田美咲】
インタビューに応じた爆風スランプ(左から)ファンキー末吉、バーベQ和佐田、サンプラザ中野くん、パッパラー河合【写真:増田美咲】

ミニアルバム『今こそ!爆風スランプ』をリリース

 今年で結成44年目を迎えたロックバンド・爆風スランプが、8月11日に35年ぶりとなる東京・日本武道館公演を開催する。ミュージシャンの聖地である武道館は、名曲『大きな玉ねぎの下で』を生んだ彼らにとっても特別な場所。本番を前にリリースしたミニアルバム『今こそ!爆風スランプ』を手がかりに、4人が語る武道館への思いと、変わらないバンドの魅力に迫った。(取材・文=福嶋剛)


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――35年ぶりの日本武道館公演が近付いてきました。

サンプラザ中野くん「きっかけは2年前の再集結までさかのぼるんですけど、26年ぶりにツアーをやってファイナルのLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)が終わった時点で次は武道館をやりたいと考えていました」

パッパラー河合「やっぱり俺たちにとって、日本武道館は特別なんでね。『大きな玉ねぎの下で』は九段下駅の発着メロディーになっていますし」

バーベQ和佐田「渋公でやった感覚がすごく良かったんです。26年ぶりだったのにブランクを一切感じなくて、とても自然にできたことも大きかった」

中野「だから『何で俺たちは26年間も休んでいたんだろう?』って思いましたし、今後はバンドを続けていくことしか考えていなかった。それで今回の武道館公演が決まり、このミニアルバムにつながりました」

――新作には未発表曲『ええじゃないか』も収録されています。

河合「今回候補曲はいっぱいあったんだけど、みんなでワイワイ言いながら6曲に絞りました。『ええじゃないか』は、1982年に爆風スランプを結成した時に、末吉が『練習しようぜ』と言って持ってきて、一番初めにバンドで作った曲なんです」

ファンキー末吉「もともと俺と(江川)ほーじんがやっていた爆風銃(バップガン)と中野と河合がいたスーパースランプが合体してできたバンドだから、4人で何ができるか分かんなかったんですよ。それでコードがEとGだけで『ええじゃないか、ええじゃないか』って歌っているだけの素材を作って『これでなんかやろうぜ』とか言ってスタジオでみんなで作ったのが『ええじゃないか』です。俺とほーじんのファンキーなリズム、河合のキテレツなギター、中野の歌詞と歌。つまり爆風スランプの原型というか方向性が決まった曲でもあったんです」

――先行配信した「よしおと爆風の、ええじゃないか盆踊り~武道館で編」では小島よしおさんとのコラボという斬新な組み合わせが実現しました。

中野「僕たちだけで演奏しても映えないから、『ここは誰かの力を借りよう』ということで僕の大学(早稲田)の後輩にあたる小島くんにお願いしました」

河合「裸芸なのにすごい清潔感があってきれいなんだよね」

中野「そう。汗臭いイメージがないんだよ。レコーディングの時、すごくリズム感が良いなって感じた。コンプライアンスの厳しいこの時代に、競泳パンツ一丁で子どもたちをとりこにして、さらにこっちのリクエストにすぐ対応できて、やっぱさすがだなと思いました」

河合「この曲は盆踊りなんだけど、最近、盆踊りがはやっているらしいよね。去年、地元(千葉県柏市)の祭りに行ったら大通りの会場は盆踊りで盛り上がっていたんですよ」

――柏祭りといえば1986年の凱旋ライブですね。私も観客のひとりとしてその場にいました。

中野「西口ロータリーでやったライブね。もう何をしゃべったのか忘れちゃったなあ(笑)」

河合「柏祭りは毎年すごいバンドが出ていたよね」

――大御所のCASIOPEAも出演したことがありました。ただウルトラマンショー直後の出番だったので「こんなシチュエーションでライブをしたことがない」ってギターの野呂一生さんが苦笑いしていました。

中野「それこそCASIOPEAのベースの鳴瀬喜博さんがいなかったら爆風スランプは生まれていなかったんです」

河合「僕と中野はスーパースランプでバンドコンテスト(イーストウェスト)に出たんだけど予選で落ちそうだったの。そしたら鳴瀬さんが『お前ら面白いから特別に一枠増やして入れてやる』と言って。それで決勝に行けたから爆風銃と出会えたんです」

末吉「それがなかったらこのバンドもなかったもんな」

和佐田「スラップというベーステクニックがあって、昔、日本ではチョッパーと呼んでいたんだけど、鳴瀬さんがその第一人者としてチョッパーを日本で広めた功績は大きいですよ」

――ウルトラマンと和佐田さんの話題が出てきたところで『Brave Love, TIGA』の新録バージョンについても。和佐田さんが作ったウルトラマンティガのテーマ曲ですね。

中野「和佐田さんの曲を入れたいと思っていて、ティガ30周年というタイミングでもあったのでレコーディングし直しました」

和佐田「この曲はコンペだったんですけど必死に作りましたね。決まった時はめちゃくちゃうれしかったなあ」

35年ぶりの日本武道館公演を8月11日に開催【写真:増田美咲】
35年ぶりの日本武道館公演を8月11日に開催【写真:増田美咲】

爆風スランプがずっとやってきたのは“事件性”

――そして『東の島にブタがいた Vol.3』の新録バージョンも収録されています。『三匹の子豚』の寓話をモチーフに、戦争の愚かさや平和への願いをユーモアと風刺を交えて描いた、爆風スランプらしい一曲ですね。

中野「30年くらい前に作った曲で、当時は大した反応はなかったんですけど、キョンキョン(小泉今日子)が歌ってくれたことで話題として取り上げられることが多くなったんです」

――補足すると1987年に歌詞の内容を反戦ではなく冒険に変えたVol.2を小泉さんバージョンとして提供しました。ご本人はライブではVol.3をよく歌われていて、今年5月に行われた小泉さんの還暦を記念した日本武道館公演(「KK60 コイズミ記念館」)でもVol.3をライブのハイライトで歌い、反響を呼びました。

中野「日本には『音楽に政治を持ち込むな』という風潮がありますよね。でも、演歌は歴史をさかのぼると、明治時代の自由民権運動で生まれた『演説歌』がルーツだそうです。歌を通して自分の考えを伝える文化は、もともと日本にもあったんですよ。この前、SNSで『プロの音楽家にとって最も重要なのは、音楽に事件性があるかどうかであり、その音楽が人の心を動かすかどうかだ』という言葉を見て、ハッとしました。僕が歌い始めた頃からずっとやってきたのは、この“事件性”だったんだって、ようやく言語化できた気がしてスッキリしたんです。つまり、爆風スランプには常に事件性がある。ただ、キョンキョンがどういう思いでVol.3を歌ってくれたのかは、ご本人にしか分からないことなので、勝手に詮索はできませんけどね」

――大事なのはそれを聴いて心を打たれた人がいると。

中野「そういうことだと思います。音楽も何かを気付かせる媒体なんだけど、この時代にこの曲がクローズアップされるということはどういうことなのかってことですよね」

――『東京ラテン系セニョリータ 2026』は、武道館公演で大勢のダンサーとパフォーマンスを繰り広げた思い出の一曲でもあります。そして武道館といえば、やはり『大きな玉ねぎの下で』は欠かせません。武道館で待ち合わせたペンフレンドが最後まで姿を現さないという切ない物語が描かれ、昨年は映画化もされた代表曲ですが、実は1985年の初の日本武道館公演を前に、「客席が埋まらなかったら」という不安も重なって生まれた曲だとうかがっています。

河合「空席の言い訳だよね。だって本当に恐怖だったもん」

中野「だってデビューしてわずか1年で武道館だったんですよ。当時の事務所に『満員にしろ』と言われて『客席が埋まらなかったらどうしよう』というプレッシャーでつぶされそうになりながら書いた曲なんです」

――改めて40年前に書かれた歌詞を読んで今の風景とほとんど変わっていないことが分かります。

中野「すごい奇跡ですよね。千鳥ヶ淵だってあの辺の光景も変わらないですから」

――日本武道館公演まで残り1か月を切りました。

河合「でもまあ気楽にやりますよ。今はみんな健康第一だから。当時のライブ映像を見ると僕たちのステージの動きが素早いんですよ。だから歳を取ったと言われないように一生懸命体力作りに励んでいます」

和佐田「僕はステージに立ち続けることが一番の健康法です」

末吉「俺は『若い人はいいな』とか全然思わないの。だって歳を取ってもいいことはたくさんあるから。俺も和佐田としょっちゅうライブをやっているから朝から体調はいいんですよ。だから今が一番いいかな」

河合「マグロと一緒なんだよ。うちのメンバーはみんな海を泳いでないとすぐにくたばっちゃうから(笑)」

中野「僕は初めての武道館と同じくらい、今回もプレッシャーに押し潰されそうです」

――もし客席が埋まらなかったら、秘策は?

中野「そうだな……。大きな玉ねぎを5回ぐらい歌いますか」

全員「(爆笑)」

中野「みなさん、8月11日の予定が空いていたらぜひ大きな玉ねぎの下に集まってください! 爆風スランプ、第2黄金期の幕開けです」

□爆風スランプ 1982年、ファンキー末吉、江川ほーじん、サンプラザ中野、パッパラー河合の4人で爆風スランプを結成。84年にメジャーデビュー。パワフルなファンクサウンドと過激なパフォーマンスが話題を呼んだ。85年、初の日本武道館ワンマンライブを開催。88年に『Runner』をリリース。その年の『NHK紅白歌合戦』に初出場し、翌89年にヒット。同年、江川が脱退し、バーベQ和佐田が加入。『リゾ・ラバ』『大きな玉ねぎの下で』『涙2』などをヒットさせる。99年、活動を休止し、2024年、デビュー40周年を機に本格的に活動を再開。

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