あえて「生配信なし」 DEEP佐伯代表が追求するセオリーの逆を行く究極の“臨場感”

格闘技イベント「DEEP FIGHT CHALLENGE 2026 2nd ROUND」が24日、東京・恵比寿ガーデンルームで行われた。若手の育成と発掘を前面に押し出している同大会だが、DEEPの佐伯繁代表には別の“狙い”もあった。

地響きのような歓声を上げた格闘技ファンたち【写真:(C)DEEP事務局】
地響きのような歓声を上げた格闘技ファンたち【写真:(C)DEEP事務局】

原点は平成に作った「クラブイベント」の熱気

 格闘技イベント「DEEP FIGHT CHALLENGE 2026 2nd ROUND」が24日、東京・恵比寿ガーデンルームで行われた。若手の育成と発掘を前面に押し出している同大会だが、DEEPの佐伯繁代表には別の“狙い”もあった。(取材・文=島田将斗)


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 テニスコートほどの広さの部屋にケージが設置され、その周りに座席が少し。観客のほとんどは立って観戦するというスタイルを取っている同イベント。ケージと観客の距離は近く、部屋の絶妙な大きさも相まって、歓声の反響はすさまじかった。隣の人と会話しようとしてもなかなか聞こえない。セコンドの声は選手に届いているとは思えないほど、地鳴りのような大歓声が響き渡っていた。

 若手育成とともに佐伯代表が圧倒的にこだわっているのが「臨場感」だ。その原点は、2003年頃に東京・日比谷のクラブ「ディアナ」(現在は閉店)で開催していた大会にあるという。人気選手の大原樹理や元谷友貴、さらには俳優の小池栄子の夫である坂田亘なども出場していた当時のイベントは、通常の格闘技興行とは全く異なる熱を帯びていたそうだ。

「昔はリング上で、お客さんがリングに手が着けるぐらいの距離でやっていて、上からはVIPがタバコを吸いながら見下ろしている。そういう密着した見せ方をずっとやってきて、世界初のタッグマッチやタッグトーナメントなんかもやっていました。目の前の30センチ先で殴り合っているから、誰だって迫力を感じるじゃないですか。普段なら面白くないような試合展開であっても、距離が近いだけでお客さんは一喜一憂するし、全部が変わるんですよ」

メインカードでは座っていたファンが大興奮【写真:(C)DEEP事務局】
メインカードでは座っていたファンが大興奮【写真:(C)DEEP事務局】

平日夜・生配信なしの戦略「このレベルの選手を一般の人は見ない」

 近年、韓国を訪れた際に小さな会場で食事や酒を楽しみながら観戦するスタイルを見て「やっぱりいいな」と再確認。当初は机を置いて食事を提供する試みもしたが、最終的には最前列と2列目以外はすべて立ち見にし、2時間という限られた枠に熱狂を凝縮する現在のスタイルへと行き着いた。

 今回のイベントで佐伯代表が仕掛けたのは、配信を意識する現代の格闘技興行のセオリーの「逆」をいく戦略だった。広い会場ではなく、あえて都心部のアクセスが良い場所を選び、金曜日の夜に開催するのには明確な理由がある。

「みんな土日は絶対に他の大会とかぶるから、平日にやらなきゃいけない。そうなった時に、この後みんなが飲みに行ける中心部というのが絶対条件なんです。次の日が休みだからちょうど行ける。ただ、駅直結で中心地だと使用料が高いから、これだけお客さんが入って立ち見も止めるぐらい限界まで詰めても、採算的にはきついんですよ」

 驚くべきは、会場内にモニターは設置せず、生配信もあえて行わないという徹底ぶりだ。

「今日は生配信はないし、モニターもつけていない。あえて配信したところで、このレベルの選手を一般の人は見ないでしょ。コンセプトが『臨場感』だから、そもそも画面越しに伝える必要がないんです。コストカットという言い方もあるけれど、とにかくその場へ試合を見に来てもらうためのものなんです」

まさかの判定負けにうなだれる今井風快(右)【写真:(C)DEEP事務局】
まさかの判定負けにうなだれる今井風快(右)【写真:(C)DEEP事務局】

若手やアマチュアに襲いかかる“魔物”

 限界まで客を詰め込んだ会場の熱気は、出場する若手やアマチュア選手にとって時に“魔物”へと変わる。今大会、カードの半分はアマチュア戦だったが、リング上の空気は通常のアマチュア大会とは全くの別物だった。

「ちょっと見合っただけで声が飛ぶし、こう着を許さない雰囲気になっている。常に慌てなきゃいけない空気で、観客一人ひとりの声もダイレクトに耳に入る。だから、一番過激で激しい試合しかできなくなるんです」

 その言葉通り、この日の大会では波乱が起きた。修斗・パンクラス・DEEPのアマチュア3冠で無敗の今井風快は今野蓮弥にまさかの判定負け。「RIZIN甲子園」でベスト16の実績を持つ福嶋司は國分獅斗に逆転のTKO負けを喫した。データ通りにはいかず、有望な若手たちが明らかに特異な環境に飲み込まれていたのだ。

クリエーティブな発想で興行を創る佐伯繁代表【写真:増田美咲】
クリエーティブな発想で興行を創る佐伯繁代表【写真:増田美咲】

佐伯代表が描く真面目すぎない日本格闘技の形

 こうした“リアル”の面白さを受け、佐伯代表の頭の中にはさまざまな構想が広がっている。今年5月には横浜BUNTAIという比較的大きな箱でも大会を成功させたが、決してそうした規模感に固執しているわけではない。

「この間、横浜BUNTAIでやって、それはそれで良かったんだけど、『やっぱうちじゃねえな』と思う部分も正直あったんです(笑)。今はありがたいことに毎回お客さんが入ってくれていて流れが良いからこそ、今こそいろんなことを試していきたいね」

 かつては夏の海の家の横で昼間にバーベキューを開き、夜は無料の大会を開催したり、船橋の競艇場で無料イベントを打ったこともある。「通りすがりの一般の人が足を止めやすい女子格闘技の試合を見せたり、真面目なことだけじゃないこともやるのが一つだと思う」と力を込める。

 ファイターの生き様をいかに生々しく届けるか。配信主流の現代にあえて“生”を追求する佐伯代表の姿勢が、いまのDEEP人気を作っているように思えた。

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