「やばい、引き返せない」 借り物の日産新型車で東京の極狭路へ 全幅1.8mの車体に冷や汗も…予想外の結末

「やばい、道を間違えた」。曲がる場所を一つ間違え、ナビが引き直したルートの先は、路上駐車で幅が削られ、歩行者が行き交う狭い一方通行だった。運転しているのは、全幅1800ミリの日産の新型「キックス」。日産自動車が都内で開いた報道関係者向け試乗会で用意された車だ。筆者は普段の移動がほぼ電車で、ハンドルを握るのは試乗会や旅行の時ぐらい。ただでさえ都内の運転に身構える筆者が、借り物の車で指定ルートを外れてしまった。軽自動車でも通るのをためらいそうな道を無事に抜けられるのか。思わぬ形で新型キックスの取り回しを確かめた。

赤の2WD車を正面から捉えた一枚。黒を基調とした大型グリルが印象的なフロントフェイス【写真:平木昌宏】
赤の2WD車を正面から捉えた一枚。黒を基調とした大型グリルが印象的なフロントフェイス【写真:平木昌宏】

「軽でも通りたくない」細い一方通行へ

「やばい、道を間違えた」。曲がる場所を一つ間違え、ナビが引き直したルートの先は、路上駐車で幅が削られ、歩行者が行き交う狭い一方通行だった。運転しているのは、全幅1800ミリの日産の新型「キックス」。日産自動車が都内で開いた報道関係者向け試乗会で用意された車だ。筆者は普段の移動がほぼ電車で、ハンドルを握るのは試乗会や旅行の時ぐらい。ただでさえ都内の運転に身構える筆者が、借り物の車で指定ルートを外れてしまった。軽自動車でも通るのをためらいそうな道を無事に抜けられるのか。思わぬ形で新型キックスの取り回しを確かめた。(取材・文=村上弥生)

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 日産自動車は6月18日、コンパクトSUV「キックス」を全面改良して発売した。新型は第3世代「e-POWER」を搭載し、4WD車には電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を採用。メーカー希望小売価格は299万9700円からとなっている。

 試乗会場で初めてキックスを見た時、まず「大きい」と思った。全長4365ミリ、全幅1800ミリ。先代より全長は75ミリ、全幅は40ミリ広がった。角張った車体もあって、数字以上に幅広く見える。

 借り物の新車を傷付けるわけにはいかない。シートとミラーを何度も調整し、最初に2WD車で走り出した。

 アクセルを少し踏むと、キックスは静かに前へ出た。エンジンで発電し、モーターでタイヤを駆動するe-POWERらしく、踏んだ分だけ滑らかに進む。アクセルを戻した時の減速も穏やかだ。大きな車体を力ずくで動かしているような重さはなかった。

 少し慣れ、肩の力が抜け始めたところで、曲がる場所を一つ間違えた。ナビはすぐにルートを引き直したが、その指示通りに進むと道幅が急に細くなった。

記者が道を間違え、東京の細い一方通行を走ることになった2WD車の赤いボディー【写真:平木昌宏】
記者が道を間違え、東京の細い一方通行を走ることになった2WD車の赤いボディー【写真:平木昌宏】

「やばい、引き返せない」

 入り込んだ道は一方通行だった。前には歩行者、道の脇には路上駐車。後ろからも車が来ている。軽自動車でも避けたいような道を、全幅1800ミリの新車で進むしかなかった。

 左のミラー、前方、右側の間隔を順番に確認し、歩くような速度で進んだ。路上駐車の横を抜けるたびに息を止める。「こすらないよね」「大丈夫、人は来てない」。気付けば、車の感想どころではなく、そんな独り言ばかり口にしていた。

 そんな状況でも、キックスは思い通りに動いてくれた。低速ではハンドルが軽く、切った分だけ素直に向きを変える。角を曲がっても、車体後部が大きく外側へ振られる感覚はない。車幅には最後まで気を使ったが、見た目から想像したほど振り回されることはなかった。

 少しアクセルを踏むとスッと進み、戻すとスッと速度が落ちる。発進から加速、減速まで、動きが途切れず滑らかにつながっていた。走りながら思わず何度も「ぬるぬる動く」とつぶやいた。この乗り味を表すには、この言葉が一番近かった。

 細い道を抜け、ようやく大きく息を吐いた。ルートを間違えたのは反省しかない。ただ、全幅1800ミリのキックスが、東京の細い道でも予想以上に素直に動くことは分かった。

電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載した青の4WD車。角張った造形が際立つフロントビュー【写真:平木昌宏】
電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載した青の4WD車。角張った造形が際立つフロントビュー【写真:平木昌宏】

今度は首都高へ ハンドルが自分で動き出した

 2WD車を無事に返し、次はe-4ORCEを搭載した4WD車に乗り換えた。今度のコースには首都高が含まれている。道を間違えないようルートを何度も確認したが、年に数回しか運転しない身にとって、首都高は細道とは別の怖さがある。合流、分岐、連続するカーブ。迷っている時間はほとんどない。

 恐る恐る本線へ合流すると、キックスは静かなまま速度を上げた。アクセルを踏み足した時も反応は滑らかで、大きな車体が遅れてついてくる感じがない。ジャンクションのカーブでも車体は落ち着いていた。

 交通量が減ったところで運転支援技術「プロパイロット」を試した。スイッチを入れて速度を設定すると、先行車との距離を保ちながら走り始める。前方に大きなトラックが入ってきても、設定に応じた車間距離を維持した。

全長4365ミリ、全幅1800ミリに拡大された新型キックス。青の4WD車を捉えた堂々たるサイドビュー【写真:平木昌宏】
全長4365ミリ、全幅1800ミリに拡大された新型キックス。青の4WD車を捉えた堂々たるサイドビュー【写真:平木昌宏】

 緩やかなカーブに差しかかると、握っていたステアリングが動いた。

「おお、ハンドルが自分で曲がっていく」

 最初は、車線中央へ戻そうとする動きに、反射的にハンドルを握る手へ力が入った。自分が思うよりも右寄りを走っているように感じ、少し怖い。だが、数回カーブを通過すると動き方が分かり、ハンドルを握る手の力を抜けるようになった。

 プロパイロットは自動運転ではない。ハンドルをしっかり握り、周囲の確認を続ける必要がある。それでも、カーブでステアリング操作を支え、先行車との距離も保ってくれる。道路標識や分岐を確認する余裕が少し増えた。

 試乗を終えると、まずボディーに傷がないことを確認した。出発前はあれほど大きく見えたキックスが、戻ってきた時には少しだけ小さく見えた。

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