“グローグーのパパ”としても人気爆発 長い下積み、40代でブレイク…ペドロ・パスカルに聞いた遅咲きへの本音
映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(公開中)で伝説の賞金稼ぎ・マンダロリアンを演じている米俳優のペドロ・パスカル。日本のファンからも“グローグーのパパ”としておなじみとなった52歳だが、決して順風満帆なキャリアではなかった。遅れてつかんだ成功への思いを聞いた。

映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』が大ヒット公開中
映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(公開中)で伝説の賞金稼ぎ・マンダロリアンを演じている米俳優のペドロ・パスカル。日本のファンからも“グローグーのパパ”としておなじみとなった52歳だが、決して順風満帆なキャリアではなかった。遅れてつかんだ成功への思いを聞いた。(取材・文=猪俣創平)
ペドロは今回、本作のワールドツアーで世界各地を巡ってきた。その終着地となった日本・東京では、プレミアイベントやテレビ出演など多忙なスケジュールをこなした。インタビューは都内のラグジュアリーホテルの一室。部屋に入ると、黒ぶち眼鏡をかけたペドロが、リラックスした表情で座っていた。
「君たちがワールドツアー最後のインタビューだね。メキシコシティ、マドリード、ロンドン、パリ、ロサンゼルス、そして日本」と指折り数え、「しっかり決めてね!」といたずらっぽく笑い、なごやかな空気の中で取材はスタートした。
今や世界中の映画ファンに知られるハリウッドスターとなったペドロ。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなく、30代までは舞台やテレビドラマなどを中心に出演し、大きなブレイクに恵まれることもなかった。
転機は2014年、米ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン4でのオベリン・マーテル役。強烈な存在感と華麗な剣技もさることながら、目をえぐられて頭蓋骨を砕かれるというショッキングな最期で一躍注目を浴びた。「あのシーンは怖かったですよね」。そんな衝撃シーンを足がかりに、主演を務めたNetflixシリーズ『ナルコス』(15~17年)や19年に誕生したドラマシリーズ『マンダロリアン』が世界的に大ヒット。その人気を決定的なものにした。
40代に入ってから大作への出演が続き、50代に入っても第一線で活躍する現在。もっと早くブレイクしたかったという思いはあるのか尋ねると、「もちろん、もっと若い頃にそうなりたかったです」と率直に答えた。
「まず理由の一つは、僕が演じてきた役はとても身体的なものが多いということです。だから、年齢を重ねれば重ねるほど、どんどん肉体的にきつい役が来るというのは、少し皮肉なことですよね(笑)」
本作では、ペドロ演じるマンダロリアンと、強大なフォースの力を持つグローグーの冒険が描かれる。今回の撮影についても、「マンダロリアンのスーツを着たまま、水の中で怪物たちと戦うことは、肉体的に最も大変だったことの一つです。だって僕は51歳ですよ!?」と苦笑交じりに振り返りつつも、感謝の言葉を口にした。
「それでも僕は作品に出演できることに深く感謝しています。なぜなら長い間、大きなチャンスのとても近くまでたどり着きながらも、届かない経験をたくさんしてきたからです。僕のオーディション経験は、あるとても大きな役を手にする目前までいったことから始まりました。その役をつかんだ俳優は、その演技でアカデミー賞候補となり、それが彼のキャリアの出発点になりました。そして僕は、自分にとって流れを変えてくれる仕事に出合うまで、約20年も待たなければならなかったんです」
長い下積みの中で、小さな役の一つ一つが特別な時間でもあったという。
「小さな舞台、テレビの1エピソード、そのすべての役が僕には奇跡のように感じられました。そうやって一つ一つの仕事に出合えた時の喜びは、今どれほど大きなことが起きても、なかなか比べられないものだと思います。今の僕は、本当に稀有な場所にいます。大きなフランチャイズ作品に参加し、最高の才能を持つ人たちと仕事をしている。僕がここにいるのは、こうした大きなプロジェクトに僕を招き入れてくれた人たちのおかげです」

“映画への愛”が結実「あらゆるところに」
落ち着いた口調で感謝を述べながら、時折見せるチャーミングな笑顔が印象的だ。
「年齢を重ねてから何かを得るということは、良くも悪くも、自分自身をよりよく知っているということだと思います。そして僕という人間は、露出や成功によってではなく、長年の困難やコミュニティーによって形作られてきたのだと思います。そのことにとても感謝しています。若い頃は、売れないことが嫌で仕方ありませんでした。学校を出た瞬間に、全てが欲しかった。子どもの頃から、それを望んでいました。でも今は、それが手に入らなくて本当に良かったとさえ思っています」
そんなペドロは、子どもの頃に映画から夢をもらい、長い時間をかけてその夢の中心へとたどり着いた。原点には、ジャンル映画への深い愛があると明かし、本作にも通じる部分があると語る。
「この映画には、そうした重要な体験がたくさん詰まっています。元祖“宇宙の母”とも言える存在が、映画『エイリアン』のエレン・リプリーであり、演じているのは本作にも出演するシガニー・ウィーバーです。彼女はSF、コメディー、ドラマといったジャンルの映画に出演していて、それが僕の夢を大きく形作りました。自分がなりたい俳優像や、参加したい映画のあり方に大きな影響を与えてくれたんです」
さらにヨーロッパやアジアの映画にも触れるようになり、世界中の映画が彼の視野を広げていった。
「年齢を重ねる中で、ハリウッドを超えて映画への愛が深まっていきました。クラシック映画を学び始め、今ある多くのインスピレーションが実際にはどこから来ているのかを理解するようになりました。それが黒澤明へとつながり、世界中の映画作家たちへとつながっていきました。スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルもそうですし、挙げればきりがありません」
俳優である前に、映画を愛する一人の観客。その思いは今も変わらないとして、本作でメガホンを取ったジョン・ファヴロー監督も同じだと強調する。
「僕は俳優である以上に、映画を見る人間であり、読者であり、芸術を愛する人間なのだと思います。スティーヴン・スピルバーグ、『スター・ウォーズ』、ジョージ・ルーカス――彼らは、僕が子どもの頃に抱き始めた夢に責任がある人たちです。そしてその後、僕は北米を超えて、さらに映画を愛し続けるようになりました。そうした先人たちへのリスペクトは、この映画のあらゆるところに表れていると思います。ジョンも僕と同じくらい映画を愛していますから」
長い時間をかけてたどり着いた現在地を、どこか軽やかに、そして誠実に受け止める。その姿勢こそが、ペドロ・パスカルという俳優の真の魅力なのかもしれない。
□ペドロ・パスカル 1975年4月2日、チリ出身。ピノチェト独裁政権を逃れて一家で渡米し、カリフォルニアとテキサスで育つ。ニューヨーク大ティッシュ・スクール・オブ・アートで演劇を専攻。卒業後、俳優の道へ。舞台とテレビドラマを中心に出演し、2014年に米ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン4のオベリン・マーテル役でブレイクを果たした。15年にはNetflixシリーズ『ナルコス』で主演を務め、19年にドラマシリーズ『マンダロリアン』で主人公・マンダロリアンを演じる。近年の主な出演作に映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(24年)、『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』(25年)、『マテリアリスト 結婚の条件』(同年)などがある。
猪俣創平
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