「誹謗中傷はダメ」課題解決へ新プロジェクト始動 青学大・原晋監督「スポーツ界から発信、よりよい社会を」
近年SNS上での誹謗(ひぼう)中傷や性的ハラスメントが深刻さを増す中で、SNSでの心ない投稿によってアスリートの心身が傷付けられる被害も大きな問題になっている。課題解決に向けて、現役アスリート、アスリートのOB・OG、有識者らが立ち上がった。時代に合わせた新しい応援文化の醸成と、アスリートが安心して競技に打ち込める環境づくりを推進するプロジェクト『RESPECTion!』(リスペクション)が始動し、26日に都内で記者会見が行われた。共同代表を務める、青山学院大陸上競技部 長距離監督の原晋氏は「よりよい社会を実現していくため、まずはスポーツ界から発信させていただければ」と語った。

時代に合わせた「新しい応援文化」を醸成
近年SNS上での誹謗(ひぼう)中傷や性的ハラスメントが深刻さを増す中で、SNSでの心ない投稿によってアスリートの心身が傷付けられる被害も大きな問題になっている。課題解決に向けて、現役アスリート、アスリートのOB・OG、有識者らが立ち上がった。時代に合わせた新しい応援文化の醸成と、アスリートが安心して競技に打ち込める環境づくりを推進するプロジェクト『RESPECTion!』(リスペクション)が始動し、26日に都内で記者会見が行われた。共同代表を務める、青山学院大陸上競技部 長距離監督の原晋氏は「よりよい社会を実現していくため、まずはスポーツ界から発信させていただければ」と語った。
プロジェクト発足の背景には根深い実情がある。プロジェクトの説明によると、現代のスポーツ界では、SNSの普及により選手とファンの距離が縮まる一方で、アスリートに対して、匿名性を悪用したSNS上での心ない投稿・言葉の暴力が急増。「日本オリンピック委員会(JOC)の発表では、先月閉幕したミラノ・コルティナ冬季五輪において、プラットフォーマー側へ約1900件の削除申請がありました。プレーに関係のない容姿などへの批判や、ミスを執拗に責め立てるなど、言葉の重さを無視した攻撃がアスリートの精神を追い詰めています」と言及。
また、「性的ハラスメント」「不適切な撮影・加工・拡散」についても取り上げ、「特に女性アスリートに対し、競技会場での盗撮や、競技中の画像・映像を性的意図を持って切り取ったり、編集したりするなどして拡散する行為が相次いでいます。これらはプライバシーを著しく侵害し、アスリートが競技に集中する環境を奪う重大な加害行為です」と指摘した。
課題の解消につなげようと、新たなプロジェクトをローンチ。2つの柱として、「マイナスをゼロに:暴力・暴言・ハラスメントの根絶、容姿やミスを責めない姿勢の啓発 プラスをつくる:競技に至る努力の過程を理解し、応援の力を数値や行動で可視化する環境を創出」を掲げた。
原氏は「スポーツ界だけの問題ではないことが大前提にあります。ただ、スポーツ界がより目立つ存在であるということで今回発信させていただくことで、多くの社会課題等への解決になっていくものだと思っています。よりよい社会を実現するための宣言を、まずはスポーツ界から発信させていただければと思います」と語った。
そのうえで、「(1)RESPECTをカルチャーへ:これまで積み上げてきた努力や背景を尊重する (2)心からの応援がチカラに:最高のパフォーマンスを生み出す応援を選手に届ける (3)アスリートの先に人間がいる:その言葉や画像を投稿する前に一度立ち止まる (4)チャレンジする姿勢にエールを:失敗を過度に責めず挑み続ける勇気をたたえる (5)社会を変えるACTIONに:すべての人がより尊重される未来をスポーツからつくりだす」と、力強く宣言した。
原氏は「このような体系的な組織のプロジェクトが始動すること自体が、画期的だと認識しています。誹謗中傷はしちゃダメなんだということ。何も金メダリストを取ることが賞賛される、ビリだからダメだということではなく、それぞれの立場で頑張る文化というものが浸透していく、その第一歩になると考えています」と強調した。
会見には「RESPECTion! 推進委員会」構成メンバーが登壇。推進委員で、柔道元日本代表の谷本歩実氏は「スポーツを通して、日本全体で頑張る人を応援するプロジェクトになることを願っています」とし、SNS時代の新たな応援文化の醸成を呼びかけた。
レスリング文田「すべての人が尊重できる社会を」
現役アスリートの声も上がった。プロジェクトに賛同するRESPECTion!アスリートで、レスリングの文田健一郎選手(ミキハウス)は「私たちアスリートは、アスリートである以上、その行動や結果に対してさまざまな声があることを理解しています。ただ、誹謗中傷はあってはならないことです。今回のプロジェクトを通じて、アスリートであるかどうかに関係なく、すべての人が尊重できる社会を目指していけたらと思っています」と、自身の思いを語った。
ビデオメッセージも届いた。スーパーバイザーを務める、プロ野球・北海道日本ハムファイターズ チーフ・ベースボール・オフィサーの栗山英樹氏は「今の時代はSNSの発達によって、コミュニケーションがとりやすくなったのかもしれませんが、いろんな思いが選手たちに向かってしまうことがあります。僕が監督時代にずっと選手たちに言っていたこと。人と話をする時、まずは自分から受け手の体に入って、そのことをどう受け取るのか。そういうことを考えた時に、どんなことを伝えるのかがよく分かるのではないか。それを考えていきましょうと、お願いをしてきました。これはスポーツ界だけではなく、一生懸命にやっている人に対してどんな言葉をかけるのか。それが日本人の持っている品位だと思います。そういったことを少し考えてもらいながら、みんながメッセージや思いを伝えられる。そんな社会になってほしいと願って、皆で力を尽くしていこうと思います」とメッセージを寄せた。
共同代表を務める早稲田大スポーツ科学学術院教授・弁護士の松本泰介氏は「この話を日本社会全体で考えていけることになれば、チャレンジする姿勢や応援する文化が、スポーツだけではなく一般社会に広がっていく。それは我々が望んでいることになります。そのような行動変容を生むことができれば、社会のためになるのではないかと皆で話し合っています」とプロジェクトの意義を示した。
また、会見には、推進委員で、JSPO常務理事兼事務局長の岩田史昭氏、COAS代表で弁護士の高橋駿氏、JOC事務局長の伊藤弘一氏が出席して各種の説明を行った。推進委員は他に、ミズノ株式会社・競泳元日本代表の寺川綾氏、中京大教授の來田享子氏が名を連ねている。
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