現金のみの老舗喫茶店、海外客がクレカを預けたまま戻らず 信じた店長がく然…「無銭飲食」にネット絶句

現金のみ対応している老舗喫茶店。1人で来店した外国人客が支払い時に持ち合わせがなかった。ところが、「お金を下ろしてくる」と言ったきり……。身分証代わりに置いていったクレジットカードが残されたままになっている。「海外のお客様の中で無銭飲食がございました」。コーヒー1杯に魂を込めて提供し、物価高騰のあおりを受ける中で、ギリギリの経営を続けているという。心を痛める出来事。喫茶店の店長が複雑な胸中を明かした。

個人経営の喫茶店が無銭飲食に悲鳴(写真はイメージ)【写真:写真AC】
個人経営の喫茶店が無銭飲食に悲鳴(写真はイメージ)【写真:写真AC】

ホットコーヒー1杯630円「疑いたくないという気持ちがまだあります」

 現金のみ対応している老舗喫茶店。1人で来店した外国人客が支払い時に持ち合わせがなかった。ところが、「お金を下ろしてくる」と言ったきり……。身分証代わりに置いていったクレジットカードが残されたままになっている。「海外のお客様の中で無銭飲食がございました」。コーヒー1杯に魂を込めて提供し、物価高騰のあおりを受ける中で、ギリギリの経営を続けているという。心を痛める出来事。喫茶店の店長が複雑な胸中を明かした。

 現店主の両親が都内で60年代に創業。もともと常連客で店のファンだった現在の店長が「このすてきな場所を残したい」とスタッフに加わり、店主との2人体制で営業を続けている。

 2月下旬の出来事だ。「アジア系の若い男性」が、1人で来店した。旅行客に見られるような大きな荷物はなく、かばんも持っていなかったと記憶しているという。

「初見で外国籍と分かるお客様には、入店時に『We only accept cash,no credit card』(現金だけ対応していてクレジットカードは使えません)とお伝えしますが、その時は店内が混み合っており入店時にはお伝えしていません。着席後は各テーブルに置いている当店からのお知らせを読んでいらっしゃったのと、日本語で返答されたので、上記の英語での案内を省略しました。メニュー表をお持ちした時に、スマートフォンを使いながらメニュー表を見ていたので、翻訳アプリで、お知らせに記載されている『お支払いは現金で承ります』という文面を確認されていると推察しました。普段からメニュー表をお持ちする間、翻訳アプリを使って読んでおられるお客様が多いので、お声がけを省略することもあります」。店の出入口の扉にも、現金対応の旨を掲示している。

 男性客が注文したのは、ホットコーヒー1杯(税込み630円)。「その際、日本語にたどたどしさは残るという印象でしたので、やはり海外の方なのだと思った次第です」。そして、問題のお会計の場面だ。日本語でやりとりしたという。

男性「支払いは現金のみですか?」
店長「そうです」
男性(財布を見て日本語で何かつぶやきながら)「今、現金がなくクレジットカードしかないのですが、どうすればいいですか?」「現金を持っていない場合、皆さんどうしているんですか?」
店長「ATMでお金を下ろしてください」
男性「ああ……お金を下ろせばいいですね」
店長「はい。すみませんが、身分証明書をお預かりします」
男性(財布の中にあるカードを数枚見たり探したりしていた)「それじゃあ、日頃の支払いで使用しているクレジットカードを置いていきますので、これでいいですか?」
店長「分かりました。それでは、こちらのカードをお預かりします」
男性「はい、カードを置いていきますので、お金を下ろしてきます」

 男性客はクレジットカードを会計台に置いて、店を後にした。しかし、そのまま戻って来ていない。「今現在も男性のカードをお預かりしています」とのことだ。

 飲食店で代金を支払わずにうやむやにしてしまうのはあってはならないことだ。これを受けて店長は、日本語と英語で注意喚起のメッセージをSNSで発信した。投稿は反響を呼び、「無銭飲食なんて本当にショックだし悲しすぎるね」「クレカ置いて逃げる手口定番だわ…許せんわ」「現金払いのルールは守ってほしいよね」「クレジットなんて、無銭飲食人にしたら『紛失した』で再発行して解決です」「それはお店側しんどすぎるって…ちゃんと書いてあるのに無銭は普通にアウトだろ」など、無銭飲食行為に対する怒り、店側への同情の声が寄せられている。ただ、海外客への差別・偏見に結び付けることはあってはならない。

 今後の対応はどうするのか。「警察には届けていませんし、届ける予定はありません。疑いたくないという気持ちがまだあります」。苦しい胸の内を明かす。

「たかがコーヒー1杯ですが、されどコーヒー1杯です」

 日本のレトロ喫茶店はブームになっており、国内外からの人気を集めている。その一方で、個人経営の喫茶店業界は厳しさを増す実情がある。

「コーヒーが1杯630円だから、現金をわざわざATMで引き出してまで払う必要性を感じていただけなかったのだと思い、残念でした。当店はコーヒーの喫茶店です。昨今の輸入関税でコーヒー豆が高騰し、値上げを余儀なくされる中でも、コーヒーの価格だけは値上げ幅を抑える努力を続けています。毎朝、高齢の店主が始発の電車で出勤し、ネルドリップで珈琲をいれて準備をしています。たかが1杯ですが、店主が長年続けているコーヒーは、店長である私にとって大切な1杯です。質を落とさずに支出を抑えた結果がメニューの金額です」

 それに、食材や消耗品、足マットやおしぼり、氷、店内を彩る花、衛生清掃にかかる費用は、すべて現金での支払いをしている。「取引先関係各社とは現金でのやり取りがほとんどで、これが個人商店の現状です。男性がおっしゃった『現金を持っていない場合、皆さんどうしているんですか?』という一言は、『今時現金しか使えないお店は時代に合わない』と言われているようで悲しかったです」と、心苦しい思いを吐露した。

 一連の反響を受け、店長は「小さな喫茶店の投稿に多くの方々が心を寄せていただき、驚きと共に感謝しています」。

 改めて、長年の歴史を紡いできた店を守ることについて思いを深めたといい、「私は現店主が守り続けてきたこの店を大切にしています。ご存知の通り、材料費や人件費が高騰する中で、個人商店の経営者のほとんどの方がお店の存続を守り、来店いただくお客様のために日々奮闘しています。商品代金は、喫茶店だけのものではありません。喫茶店をするために支えてくれる配送業者、卸業者、生産者など多くの関係者がいることを忘れないでほしいです。たかがコーヒー1杯ですが、されどコーヒー1杯です。安い高いはありません。1円合わなければ1円合うまで考えるのが商いです。皆様からいただいた代金は、個人商店が商いを続けていくための大切な資金なのです」とのメッセージを寄せた。

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