「自民党の底が見えた」総裁選、石破氏は本当に“嫌われ者”なの? 事情通が明かした素顔

自民党の石破茂総裁が1日の臨時国会で第102代の内閣総理大臣に指名された。新内閣では、総裁選を争った高市早苗氏や小林鷹之氏が打診のあった要職を固辞、最高顧問に就任した麻生太郎氏が記念撮影を拒否するなど、波乱が続いている。長らく“党内野党”の立場にあった石破氏は、今後どのように党内をまとめていくのか。そして、今月27日に迫った衆院解散・総選挙の展望は。政治ジャーナリストの角谷浩一氏に、石破氏の本当の人物像と石破内閣の行く末を聞いた。

“5度目の正直”で悲願の新総裁に選出された石破氏【写真:ENCOUNT編集部】
“5度目の正直”で悲願の新総裁に選出された石破氏【写真:ENCOUNT編集部】

麻生氏が記念撮影拒否、高市氏、小林氏はポストを固辞

 自民党の石破茂総裁が1日の臨時国会で第102代の内閣総理大臣に指名された。新内閣では、総裁選を争った高市早苗氏や小林鷹之氏が打診のあった要職を固辞、最高顧問に就任した麻生太郎氏が記念撮影を拒否するなど、波乱が続いている。長らく“党内野党”の立場にあった石破氏は、今後どのように党内をまとめていくのか。そして、今月27日に迫った衆院解散・総選挙の展望は。政治ジャーナリストの角谷浩一氏に、石破氏の本当の人物像と石破内閣の行く末を聞いた。

 史上最多の9人が出馬した総裁選。上位2人による決選投票では石破氏が高市氏を逆転、“5度目の正直”で悲願の新総裁に選出された。総裁選で逆転現象が起こった背景について、角谷氏は「政治の駆け引き。派閥の時代は分かりやすかったが、今回は9人も出たことに加え、世代間闘争や長老の思惑など、いろいろな要因が絡んで複雑化した」と分析する。もっともうまく立ち回った“キングメーカー”は誰だったのか。

「プレーヤーをコントロールしたという面においては、菅(義偉)さんが一番だったのでは。早いうちから上川(陽子)氏や加藤(勝信)氏を思うように動かし、決選投票にもつれ込んだ際に票が小泉(進次郎)氏に流れるように仕向けた。結果的に思惑は崩れたものの、高市氏、石破氏に絞られた土壇場で冷静に勝ち馬に乗ることができた」

 一方で麻生氏は、今回の総裁選を機に一気に求心力を失っていくのではと見ている。

「記念撮影の拒否はまるで子どもの八つ当たり。器の小ささが露呈した格好です。石破氏とは犬猿の仲と言われていますが、それは麻生氏が総理のときに石破氏が退陣を迫ったからで、何年前の話を根に持っているのかと。うまく立ち回るのであれば、総裁選直前に石破氏が元麻生派の岩屋(毅)氏を連れてあいさつに言った際に、手打ちにして収めればよかった。このままでは派閥の議員たちも、もう麻生氏の顔色ばかりうかがっていても勝ち馬には乗れないと離れていってしまうのでは。このまま引退という見方まで出始めています」

 ポストを固辞した高市氏や小林氏の振る舞いについても、得策ではなかったと角谷氏は言う。

「これも大人げない態度と言わざるを得ません。勝った石破サイドからの挙党体制の申し出を拒否したということは、自ら反主流派に行くということ。見方によっては党を脅かすことにもなり、いいやり方とは言えません。昔の自民党は闘いが終わったらノーサイドが基本、もっと器の大きい政治家が多かった。そういう意味では、自民党の底が見えた総裁選だったのではないでしょうか」

政治ジャーナリストの角谷浩一氏
政治ジャーナリストの角谷浩一氏

「求心力がない」「党内の嫌われ者」との石破評は本当?

 発足早々、党内不和が漂う新内閣。「求心力がない」「党内の嫌われ者」との石破評は本当なのか。

「石破さんは面白味がないと言えばその通り。気の利いたことを言って場を盛り上げるタイプでもなく、鉄道ファンやアイドルオタクというおちゃめな面はありますが、それで何か面白いことを言えるわけでもありません。ただ、『求心力がない』『面倒見が悪い』という石破評については違った見方もできると思います。政治の世界の面倒見とは、要はメシかカネかポストをくれるか、何か恩恵を与えてくれるのかという意味で、そのために必要になってくるのが裏金。この政治とカネが争点の総裁選で、面倒見が悪いというのは、裏を返せば清廉潔白の証明とも言えるのではないでしょうか」

 長らく党内野党の立場にあった石破氏が今後、党をまとめていくには何が必要なのか。

「反主流派が長かったこともあり、石破さんが何を考えているのかよく分からないというのが党内の概ねの評価ではないでしょうか。自身のやりたいことやこだわりなどのビジョンを、党内はもちろん国民に知ってもらう努力をしていかないといけません。分かっている人にしか分からないというのが石破さんのダメなところ。広報戦略、アピール力が圧倒的に足りていない。そういったパッションや、聴衆を引き付けるパワーがひいてはリーダーシップにつながっていくのではないでしょうか。長いものに巻かれるのでなく、党内野党の立場を貫き通すことを期待します」

 今後は27日に投開票を迎える総選挙へ向けた闘いが始まる。総選挙の争点はどこになるのか。

「現時点では、野党唯一の首相経験者でもある(立憲民主党の)野田(佳彦)さんの迫力と安定感に、石破さんがイメージ負けしている面もある。政治とカネや世襲批判など、きつい材料を突きつけられることは確実で、都市部では自民が苦戦することになると思います。一方の立憲は今回新人候補が多く、勢いで勝つしかない。共産党との協力もできなかったので、久しぶりのガチンコ対決になると思う。野田氏も石破氏も党代表になったばかりで、党内評価の見定まらないタイミング。どちらがより国民の信頼を得られるかの信用合戦になると思います」

 新総裁の手腕が問われる。

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