ダンプ松本も研究 刀羅ナツコがトップヒールになるまで「子どもの頃から好きなのは悪い方」
スターダムを席巻するヒールユニット「H.A.T.E.」のリーダー、刀羅ナツコ。最近ファンになった方は知らない過去かもしれないが、彼女は「H.A.T.E.」の前身である「大江戸隊」に強制加入させられ、ヒールの道を歩むことになったレスラーだ。今や女子プロレス界のトップヒールの名をほしいまましている彼女に、今のスタイルに辿り着くまでの話を聴いた。
手探りの状態の自分は絶対に見せたくない
スターダムを席巻するヒールユニット「H.A.T.E.」のリーダー、刀羅ナツコ。最近ファンになった方は知らない過去かもしれないが、彼女は「H.A.T.E.」の前身である「大江戸隊」に強制加入させられ、ヒールの道を歩むことになったレスラーだ。今や女子プロレス界のトップヒールの名をほしいまましている彼女に、今のスタイルに辿り着くまでの話を聴いた。(取材・文=橋場了吾)
刀羅ナツコは2016年10月にデビュー。タッグ王座のゴッデス・オブ・スターダム、6人タッグ王座のアーティスト・オブ・スターダムをデビュー2年も経たずに獲得するも、2019年4月の「ドラフト会議」にて、ヒールユニット・大江戸隊に強制加入させられた。
「一旦プロレスを置いておいて……例えば、私生活でドラマを見る、映画を見る。子供の頃であれば、戦隊ものを見る。このときに好きだったのは、悪い方なんだよね。ディズニー映画でもそうなんだけど、主人公よりも主人公を苦しめる敵側がすごく好きで。それが関係あるのかはわからないけど、プロレスラーとしてヒール側に立ったときは、逆にはすぐには切り替えられなかった部分はあったんだよね。当時の大江戸隊には、花月さんや葉月がいて、なんとなくその波に乗っていればいいやみたいな感じで。だからこそ、自分がリーダーになりますよってなったとき(2020年2月)には、どうしていったらいいんだろうとすごく悩んだ時期があった。そういう時期を経て今があると考えると、もともとはヒール志向ではなかったのかもしれない」
刀羅は、今でこそ考えられないことかもしれないが、自身の求めるヒール像をどうするかを悩んでいた。
「全女時代のダンプ松本さんはじめ、男女問わずいろいろな団体のヒールレスラーを研究して、今の形になったのかな。でも正直なところ、2019年からヒールをやっていて、自分の中で確たるものができたのは本当最近なんだよね。それこそ自分が復帰してからかな(2022年10月)。自分が左ヒザを怪我して休んでいた1年間、いろいろなことを考えたよ。復帰したらどういう風に見せていこうか……だから、あの怪我は無駄ではなかったと思うね。怪我する前は、ずっと手探りだったという感じだったかな。そういう姿をリングの上では絶対見せたくなかったんだけど、今当時の自分の試合を見返すと、つまらないなあと思ってしまうんだよね」
坊主にするタイミングはずっと狙っていた
復帰してから2年弱、刀羅に絶好のチャンスがやってくる。今年7月28日に、札幌で舞華が保持していたワールド・オブ・スターダム王座への挑戦が決定したのだ。刀羅が長期欠場の原因となる怪我を負ったのも同王座戦だったこともあり、特別な意識があったようだ。
「実は、坊主にしたいという思いは前からあったんだ。でも中野たむとジュリアが髪切りマッチをやるタイミングで坊主になっちゃったら、女の大切なものを賭ける一大イベントに水を差しちゃうだろ(笑)。それで今回、赤いベルトに挑戦するタイミングで坊主にした。前日の札幌を休んだのは、それまでの前哨戦は優位に進めていたし、これ以上戦ってもしょうがないから本番でいいだろうと」
試合は刀羅が見事に王座奪取し、第18代チャンピオンに。そして試合後、大事件が起きる。試合中に舞華と共同戦線を張っていたにも関わらず、刀羅に加勢した上谷沙弥(当時はQueen’s Quest)を引き入れ、大江戸隊を解散し新ユニットH.A.T.E.を立ち上げたのだ。
「実をいうと、札幌では赤いベルトよりも、大江戸隊という名前を捨てて、H.A.T.E.という新しいユニットを作るってことの方が重要だったんだ。だからこそ、坊主にしたというのもある。とはいえ、赤いベルトは自分の手元に来たときは、やっぱり特別なベルトだから、このベルトを争っているのは不思議な気持ちがしたな。IWGP女子、STRONG女子、色々なベルトがあるけど、赤いベルトは一番偉大で価値のあるものなんだ。上谷とは……Queen’s Questからほかのメンバーを追放したときから、話はしていたよ(ニヤリと笑う)」
(16日掲載の後編へ続く)