ジャニーズ性加害問題の背景は同族経営の弊害 原因の1つは性嗜好異常【報告書概要全文】

ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(享年87)をめぐる性加害問題を受け、組成された「外部専門家による再発防止特別チーム」の記者会見が29日、都内で行われる。6月12日に続く2度目の会見。5月26日の組成から約3か月に及ぶ調査・検証の結果、ジャニー氏による性加害を認定。同事務所に対する再発防止策提言書の提出を発表した。

「外部専門家による再発防止特別チーム」記者会見が行われる【写真:山口比佐夫】
「外部専門家による再発防止特別チーム」記者会見が行われる【写真:山口比佐夫】

外部専門家による再発防止特別チームが発表

 ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(享年87)をめぐる性加害問題を受け、組成された「外部専門家による再発防止特別チーム」の記者会見が29日、都内で行われる。6月12日に続く2度目の会見。5月26日の組成から約3か月に及ぶ調査・検証の結果、ジャニー氏による性加害を認定。同事務所に対する再発防止策提言書の提出を発表した。

 会見前には調査報告書が配布され、ジャニー氏が1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては70年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対して、長期間にわたって広範に性加害を繰り返した事実が認められたと報告。その上で、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長辞任と同族経営の弊害防止を提言した。

<調査報告書の概要>

1.本件調査の概要

調査期間:2023年5月26日から同年8月29日まで

調査方法:被害者及びジャニーズ事務所関係者等のヒアリング(41名)、関係資料の精査、専門窓口の設置等

2.事実関係 本件調査の結果、ジャニー氏は、古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた。ジャニーズ事務所は、これまで、ジャニー氏の性加害に関する週刊文春の特集とそれに関する裁判、暴露本の出版、BBCからの取材要請等があったが、ジャニー氏の性加害の事実を調査するなどの適切な対応をしなかったことが認められた。

3.原因

(1) ジャニー氏の性嗜好異常

(2) メリー氏による放置と隠蔽

(3) ジャニーズ事務所の不作為

(4) 被害の潜在化を招いた関係性における権力構造

4.本事案の背景

(1) 同族経営の弊害

(2) ジャニーズ Jr.に対するずさんな管理体制

(3) ガバナンスの脆弱性

① 取締役会の機能不全と取締役の監視・監督義務の懈怠

② 内部監査部門の不存在

③ 基本的な社内規程の欠如

④ 内部通報制度の不十分さ

⑤ ハラスメントに関する不十分な研修

(4) マスメディアの沈黙

(5) 業界の問題

5.再発防止策

(1) 本事案の本質

(2) ジャニーズ事務所がとるべき基本的対応
ジャニーズ事務所は、組織としてジャニー氏の性加害が事実であることを認め、被害者に真摯に謝罪し、すみやかに被害者と対話を開始してその救済に乗り出すべきである。

(3) 被害者の救済措置制度
ジャニーズ事務所は、被害者に対し、被害回復のための適正な補償をする「被害者救済措置制度」を直ちに構築すべきである。

(4)人権方針の策定と実施
ジャニーズ事務所は、国際的に見て他の企業の模範ともなるべき人権方針を作成した上で、それを国内外に公表し、今後は、その人権方針を遵守し、二度と少年に対する性加害をはじめとする人権侵害を行わせないと明確に表明すべきである。

(5)研修の充実

① 人権尊重に関する研修
② 性加害の問題に関する研修
③ ハラスメントに関する研修
④ タレント(ジャニーズJr.を含む)への研修

(6) ガバナンスの強化

① ジュリー氏の代表取締役社長辞任と同族経営の弊害の防止
ジャニーズ事務所が解体的出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があり、ジュリー氏は、代表取締役社長を辞任すべきと考える。これにより、ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つである同族経営の弊害も防止し得ることとなる。

② 取締役会の活性化
取締役会が十分な監督機能を発揮できるように定期的に開催し、社内の問題点を適時に共有して適切な対応策を決定すべきである。

③ 社外取締役の活用
社外取締役に期待された役割を十分に果たすことのできる体制作りをすべきである。

④ 内部監査室の設置
内部統制システムの有効性を含め、業務の適正性と効率性を確保するために、他の部門から独立した内部監査部門を設置すべきである。

⑤ 基本的な社内規程の整備

⑥ 内部通報制度の活性化
内部通報制度を活性化させるために制度改正を行った上、内部通報の推奨を周知徹底すべきである。

⑦ 相談先の拡充とアドボケイトの配置
ジャニーズ Jr.が悩み事等を相談する相談者やアドボケイトを増やすべきである。

(7) CCOの設置
外部から人権に関する専門家を採用してCCOを設置し、「人権方針の策定と実施」や「研修の充実」の責任者とし、「内部監査室」や「内部通報制度」を統括させ、取締役会に意見を述べる権限を付与するべきである。

(8) メディアとのエンゲージメント(対話)
ジャニーズ事務所は、すみやかにメディアとのエンゲージメント(対話)を開始して、二度と同様の性加害の発生を許さないことを宣言し、そのために人権方針を定め、ガバナンス体制も整備して再出発するという強固な決意を明らかにし、今後はメディアとの相互監視、相互牽制により人権侵害の再発を防止していく姿勢を示すことが求められる。

(9) 再発防止策の実現度のモニタリングとその公表

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