衣装から読む「麒麟がくる」の世界 チーフ演出・大原拓氏インタビュー【前編】

現在放送中のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」。高精度な4Kで描かれた今作は放送開始当初から鮮やかな色彩をふんだんに用いた衣装が話題となり、華美に着飾っていたと言われる武士たちの姿をより鮮明に映し出している。今回はそんな「麒麟がくる」の世界観を表現するために欠かせない衣装にスポットを当て、チーフ演出の大原 拓氏に独自インタビュー。「麒麟がくる」を彩る衣装の世界について、前後編に渡ってお届けする。前編では、主人公・光秀(長谷川博己)、そして尾張に嫁ぎ信長の正室としてその手腕を発揮する帰蝶(川口春奈)が纏う衣装から、それぞれのキャラクター像にも迫る。(インタビューは書面にて敢行)

帰蝶(川口春奈)は人質から立場を変えていく【写真:(C)NHK】
帰蝶(川口春奈)は人質から立場を変えていく【写真:(C)NHK】

光秀の緑はそのままに、「落ち着き」を表現。黄色を取り入れた帰蝶は織田家の中心的存在へ

 現在放送中のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」。高精度な4Kで描かれた今作は放送開始当初から鮮やかな色彩をふんだんに用いた衣装が話題となり、華美に着飾っていたと言われる武士たちの姿をより鮮明に映し出している。今回はそんな「麒麟がくる」の世界観を表現するために欠かせない衣装にスポットを当て、チーフ演出の大原 拓氏に独自インタビュー。「麒麟がくる」を彩る衣装の世界について、前後編に渡ってお届けする。前編では、主人公・光秀(長谷川博己)、そして尾張に嫁ぎ信長の正室としてその手腕を発揮する帰蝶(川口春奈)が纏う衣装から、それぞれのキャラクター像にも迫る。(インタビューは書面にて敢行)

――美濃編では”まだ何者でもない十兵衛”が、さまざまな人物やその思想、思惑に触れ、突き動かされていきました。衣装では「すくすく伸びる竹、さらさら揺れる笹」というモチーフから、光秀の成長や清涼感を感じさせました。越前では、彩度を落としながらも美濃と同じ緑色の衣装を身に纏うことになりそうですが、越前編における光秀の衣装コンセプトを教えてください。

大原氏「越前の光秀の姿は、落延び、貧しい日常の中『何を目的に生きていくのか』を意識した造形となります。叔父光安から受け継いだ『明智家の当主』という責任を抱えつつも、夢や理想を失わずに以前のようなモチベーションを保つことが難しい。更には子もでき家族の暮らしを守るという現実も。『こんなはずでは』『このままでは…』といった壮年期になります。

 そこで、清貧と壮年を合わせた様な『落ち着き』を衣装に取り入れています。これまでのカラーベースは大きく外さずに。また『素襖(すおう)』といういわゆるスーツ的な衣装も一新しました。落ち着きのあるグラデーション素襖を纏った光秀の姿は、新たな物語の始まりを感じることができるのではないかと思います」

――帰蝶の衣装では胸元にあしらわれた大きな蝶の柄がとても美しく、目を惹きます。尾張に嫁いでからは、織田家の黄色も取り入れた衣装になっていますが、これにはどんな意図があったのでしょうか。

大原氏「信長のカラーである黄色を取り入れたのは、信長と共に歩むという意志であり、信長に守られているといった意味を持たせています。また人質的存在から、織田家の中心的存在となった帰蝶の立場を表しました。また美濃よりお金がある尾張の経済事情を反映させた、より豪華な衣装を纏っています」

――帰蝶役の川口春奈さんが、初めて帰蝶の衣装を目にした際の反応など、エピソードがあればお聞かせください。

大原氏「川口さんは、衣装に一部黄色を取り入れる事の意をより理解し、帰蝶という人物像をより深く表現していただいています。衣装を見たときは、『おっ…なるほど』といった反応だったかと。黄色も好きですと言っていたような気もしますが、共にうろ覚えです」(後編に続く)

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