個人で130台所有、日本屈指のカーオーナーが“終活”宣言 コレクションのラスト飾る6000万円愛車

コレクションのお宝カーはどこへ? 群馬・伊香保おもちゃと人形自動車博物館の横田正弘館長は博物館に100台、個人で30台の合計130台を保有する日本屈指のカーオーナーだ。その横田さんが、69歳になり、“終活に入った”と宣言。集めた車はどうするのか、今後の意向を聞いた。

1930年式ブガッティT51【写真:ENCOUNT編集部】
1930年式ブガッティT51【写真:ENCOUNT編集部】

12月に70歳 「欲しい車はもうないね。もう終活の年」

 コレクションのお宝カーはどこへ? 群馬・伊香保おもちゃと人形自動車博物館の横田正弘館長は博物館に100台、個人で30台の合計130台を保有する日本屈指のカーオーナーだ。その横田さんが、69歳になり、“終活に入った”と宣言。集めた車はどうするのか、今後の意向を聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 5月28日に行われた「前橋クラシックカーフェスティバル」。横田さんが主催する7回目のイベントには、合計250台の車、バイクが各地から駆けつける盛況ぶりとなった。

 横田さんが数あるコレクションの中から展示したのは、1930年式のブガッティT51だった。

「1920年代後半からレーシングカーとして作られた車なんです。クラシックカーの中ではこのブガッティとかがもう最高峰の車で、今回イベントするにあたり、このブガッティを見たいから展示してくださいというリクエストが結構あったもんですから、今回持ってきたわけでございます」

 手に入れたのは約1年前。前オーナーが亡くなり、車屋を通じて遺族から「買ってもらえないか」と依頼を受けたことがきっかけだった。持ち主は横田さんが若いころから世話になった人で、約6000万円で譲ってもらった。

 93年前の車だ。レース仕様の車とはいえ、正直、快適さはない。「ハンドルは重いし、もう乗りたくもないけど、でも、たまには乗っています。ボケ防止に」と、冗談交じりに話す。一方で、車の完成度には、驚きを隠さない。「1920年代の後半によくこんなレーシングカーみたいの作ったなって感じですね。レーシングカーだから何しろ速いですよね。やっぱり速いというのが一つの魅力ですかね」と、熱く語った。

 実は、横田さん、この車が自身のコレクションにおいて“最後の車”だと決めている。

「欲しい車はもうないね。これが最後。もう終活の年。もうそんな歳になってしまいました」と、胸の内を明かす。

 つい先日もイタリアのラリーに参戦したばかり。ブガッティの助手席には、銀色のトロフィーを飾った。「これは私が日本人で初めて、イタリアのラリーで優勝したときのトロフィーなんです」。クラシックカーのラリーが趣味で、始めて17~18年になる。「たぶん年4回でも、80回ぐらい出たんじゃないすかね」と、キャリアは豊富だ。まだまだ元気いっぱいだが、12月に70歳を迎えるため、車のコレクション収集には、一つの区切りをつけようとしている。

 博物館には少なくとも100台の車を展示している。1967年式トヨタ2000GTや38年式ダットサン、スカイラインGT-R、ホンダS800、フェアレディSP、フェアレディZ432、スカイライン2000-GT-R、スバル360、マツダキャロルなどが所狭しと並ぶ。また、プライベートでは30台を所有し、いずれも横田さんがオーナーだ。どのように“終活”する計画なのだろうか。

「博物館は、そのままだと思います。個人で持っているものは終活して。1台1台、欲しい人がいるんですよ」

 30台のコレクションは、どれも知る人ぞ知る名車。高価なものでは、「1億ぐらいするのもある」という。自動車ファン垂ぜんのお宝カーだが、すでに次のオーナーのめぼしはつけているようだ。免許返納は「運転に自信がなくなるまで」ともう少し先だが、「終活はじゃんじゃんしますよ。手放すときはもう一気に。欲しい人がいっぱいいるから」と、貴重な愛車は手放すことを示唆した。

 わずか一代で博物館を作り上げ、今や伊香保の観光名所として確固たる地位を確立している。

 きっかけは18歳のころ、1台の車からだった。「一番最初は、スズキ・フロンテという軽ですかね」。それから、興味の向くままに、台数を増やしていった。「自分でも古い車が好きで、1台ずつ集めたら増えっちゃったって感じですよね」。入手した車のうち、博物館に展示したのは半分くらい。「あとは売っちゃったり、置く場所がないので手放しちゃったりとか、そんな感じですね」と、博物館のキャパシティーも考慮して、調整した。

 ブガッティはもう1台、5~6年前に購入したものがある。まさに男のロマンを体現している横田さんは、「1人ぐらいこういう人がいてもいいんじゃないすか」と笑い、クラシックカーの未来に思いをはせた。

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