25歳デザイナー、世界的巨匠が手がけた日本車が初マイカー 「40年前と同じ状態」の奇跡

22歳で買った“人生初マイカー”は、伝説の日本車クーペ。オーナーはしかも、気鋭のデザイナーだ。1983年式の「いすゞ ピアッツァXE」を駆る後藤和樹さん(25)のスタイリッシュな愛車物語に迫った。

後藤和樹さんの人生初マイカーは1983年式の「いすゞ ピアッツァXE」だ【写真:ENCOUNT編集部】
後藤和樹さんの人生初マイカーは1983年式の「いすゞ ピアッツァXE」だ【写真:ENCOUNT編集部】

イタリアの巨匠がデザインを施した83年式「いすゞ ピアッツァXE」 希少性の高いタイプ

 22歳で買った“人生初マイカー”は、伝説の日本車クーペ。オーナーはしかも、気鋭のデザイナーだ。1983年式の「いすゞ ピアッツァXE」を駆る後藤和樹さん(25)のスタイリッシュな愛車物語に迫った。(取材・文=吉原知也)

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「デザイン好きとクルマ好きの化学反応が起きて、この1台を買ったんです。このくさび型のデザインは角張っているようで丸い。飽きがこないんです」

 イタリアが生んだ世界的巨匠ジョルジェット・ジウジアーロ氏が手がけたデザイン。そこにぞっこんだった。「(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で有名な)デロリアンDMC-12のデザイナーと言えば、一番分かりやすいと思います。他にも、初代フィアット パンダなどたくさんあります。このピアッツァは、まさにジウジアーロ氏の作品。今になっても通用するデザインで、色あせないです」。魅力を語ればキリがない。

 ミスティホワイトのボディーカラーの外装とモケット生地のおしゃれな内装はノーマルそのままで、「ほぼ40年前と同じ状態」。消耗品を取り換えただけだ。デジタルメーターを搭載しており、マニュアル仕様。より希少性が高いという。

 両親はクルマ好きではなかったが、自身は幼少期からクルマに興味を持ち始めた。カーデザインの道に進もうと、高校からデザインの勉強を始め、専門学校で学んだ。現在は、主にイベント時の企業ブースなど、空間デザイン・設計に携わっている。

 今回、自慢の愛車は「第14回 Nostalgic 2days(ノスタルジック2デイズ)」内のオーナー車両展示会に選出されたのだが、この日本最大級のクラシックモーターショーとの縁で結ばれた。初めて手にする愛車は「どうせ買うなら本命でいこう」と、デザイン性にほれ込んだピアッツァを想定していた。中古車サイトで発見したピアッツァは、毎年出展されているイスズスポーツの在庫と分かり、5年前の同イベントで初コンタクトを取った。営業担当者に熱意を語り、現車確認までこぎ着けたが、当時は就職前の学生だったこともあり、いったんは身を引いた。

 翌年、晴れて社会人になって、イスズスポーツの同じ担当者に電話をかけた。後藤さんの熱意にほだされた担当者が探した結果、運命の1台と巡り合うことができた。2019年10月に納車となった。

 自身より15歳年上の“40歳の相棒”。後藤さんのモットーは「クルマを維持するために走らせる」だ。普段使いでも乗っており、キャンプに行ったり、景色を見に行ったり。「ちょっとでも走らせて油を回していると壊れにくくなるのかな、と。大事に保管しておくより、日常的に乗るのが僕のスタイルです」と話す。

 自動車文化の現状は“若者の車離れ”と言われているが、どう考えているのか。

 後藤さんの周りにいる若い仲間は、旧車乗りが多いそうで、それも、シトロエンBX、ポルシェ914、MGBといった個性派ばかり。「あくまで僕の感覚ですが、20代はクルマに興味がある人が多く、憧れが戻ってきているのではないか、と思っています」。クルマ好きの仲間との人の輪も広がっているという。

 渋い名車ピアッツァと共に歩むカーライフとは。

「あまり考え過ぎず、普通に乗って、楽しんでいくことだと思っています。もっといっぱい一緒にいろいろな景色を見て、思い出を作っていきたいです。僕の根底にあるのは、『クルマは乗ってナンボ』なんです」。

 プロデザイナーとして思うこともあるという。

「旧車だけが好きなのではなく、自分が『かっこいいな』と思うクルマは旧車が多いんです。現代車は少し大き過ぎる気がします。それに、旧車は、今の時代の分業制の生産とは違って、1人の作り手・デザイナーの個性が造形ににじみ出ています。もちろん、僕自身、デザイナーとしては、どんどん新しいものを取り入れていった方がいいとは思いますが、クルマに関しては、古いものにかっこよさや魅力を感じています」。将来的に、そんな後藤さんのとびっきりのデザインカーを見てみたい。

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