【カムカムエヴリバディ】安子とるいの衝撃的な展開 NHK「悲しみを劇的に描きたかった」

NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土曜、午前8時)の第8週・第38回が22日に放送され、ヒロイン安子(上白石萌音)と愛する娘・るいの2人の場面が終盤、衝撃的に描かれた。

あることに驚く安子(上白石萌音)【写真:(C)NHK】
あることに驚く安子(上白石萌音)【写真:(C)NHK】

22日放送の朝ドラについて制作統括と演出に舞台裏を取材

 NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土曜、午前8時)の第8週・第38回が22日に放送され、ヒロイン安子(上白石萌音)と愛する娘・るいの2人の場面が終盤、衝撃的に描かれた。

(以下、ドラマの内容に関する記載があります)

 22日の放送で、安子とるいの別れの場面が描かれ、るいから母に向けられた最後の言葉は、事故で負った額の傷を見せながら憎しみを感じさせる「I hate you」。このシーンの前には、るいが、米軍の将校・ロバート(村雨辰剛)に安子が抱きしめられる場面を見てしまうシーンもあった。制作統括・堀之内礼二郎氏と演出・安達もじり氏に強烈なインパクトを残した第38回の舞台裏を聞いた。

 るいの決別の言葉を英語としたことに堀之内氏は「もちろん脚本の藤本さんが描いていた構想であり紡いだせりふなのですが、その意味合いを考えると、安子とるいがラジオ英語講座をずっと一緒に学んできたこと、英語が2人をつなぐ絆だったということが大きいのではないでしょうか。『I hate you』は大嫌いという意味が、直訳すると『私は憎む、あなたを』となります。言葉の強さというか、とても冷たく、安子の胸に突き刺さる言葉として英語が効果的に効いたのではないかと思います」と説明した。

 安子の胸だけでなく、視聴者の胸にも深く突き刺さり、衝撃を受け、朝から重い気分になった人は少なくない気がする。堀之内氏は脚本を読んだ際、どう感じたのだろうか。

「藤本さんと一緒に物語の大枠を最初に決めていました。安子とるいの別れをどう描くかは、このドラマとどう向き合うかということと同義。それをどう描けば視聴者の皆さんに共感してもらえるか、ずっと考えていました。第38回だけでなく、第3週、4週ぐらいから別れの道筋をどう積み重ねていくか、繊細で緻密な作業が続きました。藤本さんから頂いた本を最初に読んだ時、ずっと覚悟してきたことではありましたが、衝撃でそれ以上進めないというか、本を頂いた時の感想を一文字も打てないというか、何を書いたらいいかと思ったことが心に記憶として強く残っています」

 視聴者からの大きな反響が予想されたはず。

「ありがたいことにこれまで賛の声をたくさん頂いてきましたが、否の声が少なからず挙がるだろうということを覚悟しながら…、というのが制作チームの思いです」

 安達氏はどうだろう。

「相当、悩んで議論も深めた上で藤本さんに書いていただいて、もうやるしかないという気がして。結果的にどう見えるかという計算までできないまま、とにかくやってみましょうとやってみた感じです。非常に難しい局面でした」

 第36回、37回までは安子とるいの関係はそれほど悪くなかった。第38回について安達氏に編集した作品の感想を聞くと「最後の最後まで試行錯誤の結果」としたが、「I hate you」の演出時にはどう思っていたのか。

「セットや撮影スケジュールの都合で相当に早い段階に撮ったんです。途中経過より先に撮ったので、全くわけ分からない状態で撮りました。これで合っているのかと試行錯誤しながら撮りました。撮ってみてすごく強いシーンでしたので、ああ、ここでヒロインが代わっていくんだなと感じた記憶があります」

 るいが額の傷を見せ、「I hate you」と語ったシーンには怖さを感じた人もいるだろう。安達氏に舞台裏を聞いた。

「お二人の体当たりの演技に圧倒されました。あの感じも、やり過ぎたかどうかは分からぬまま撮りましたが、あのシーンを目指して積み重ねていくという編集もできたので、いい意味で強いシーンになったと思います」

 同作は展開の速さが特徴の一つだが、第38回は、ロバートから安子へのプロポーズ、雪衣(岡田結実)の妊娠、きぬ(小野花梨)の出産、健一(前野朋哉)の帰還、成長したるい(深津絵里)の登場が一気に描かれた。何か急いで描いている印象も受けた。これは堀之内氏に事情を尋ねた。

「7週から8週にかけての大きなポイントは、安子とるいの別れ。そこを描くために、そのほかのエピソードが積み重ねられていると言っても過言ではないです。第38回にポイントを絞って話すと、安子にとって、母にとっての最大の悲しみである子との別れ、子からの拒絶があって、それと対比した、きぬや定一(世良公則)の喜びの瞬間がカットバックで交互に描かれています。全く逆の世界が対比的に描かれることで悲しみを劇的に描きたかったというのが狙いでした」

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