【ズバリ!近況】「カシオペア」64歳の伝説ギタリストが見せた素顔「ちょっとしたご隠居さんみたいな生活」

1979年のデビューから40年以上にわたって第一線で活躍する伝説的スーパーバンド「カシオペア」。2012年から「CASIOPEA 3rd」(カシオペア・サード)とバンド名を変更したが、今も変わらぬ超絶テクニックでファンを喜ばせている。バンドの中心人物であり世界中のミュージシャンが憧れるスーパーギタリスト・野呂一生さん。これまで演奏技術や音楽的な側面から紹介されることが多いが、今回は普段の生活ぶりやその素顔に迫った。

野呂一生の還暦を記念して特別に作ってもらったというギター【写真:山口比佐夫】
野呂一生の還暦を記念して特別に作ってもらったというギター【写真:山口比佐夫】

「ちょっと大変」が「とっても大変」になってきたギター演奏

 1979年のデビューから40年以上にわたって第一線で活躍する伝説的スーパーバンド「カシオペア」。2012年から「CASIOPEA 3rd」(カシオペア・サード)とバンド名を変更したが、今も変わらぬ超絶テクニックでファンを喜ばせている。バンドの中心人物であり世界中のミュージシャンが憧れるスーパーギタリスト・野呂一生さん。これまで演奏技術や音楽的な側面から紹介されることが多いが、今回は普段の生活ぶりやその素顔に迫った。(インタビュー・文=福嶋剛)

 都心から少し離れた静かな街が気に入って、数年前に引っ越したんです。今年で64歳。総理大臣よりも年上になっちゃいましたから余生を過ごすには良い場所ですよ。コロナ禍もあって昨年からちょっとしたご隠居さんみたいな生活を送ってます(笑)。まあ焦っても仕方がないですからね。YouTubeチャンネルを開設して演奏動画をアップしたり、絵を描いたり。母が小学校の美術の教師をしていた影響もあって子どものころから絵を描くのが好きなんですよ。

 時間があるとNetflixで好きなSF映画を見たり、動画を見てますね。「ゆっくり不動産」という変わった物件ばっかり紹介するYouTube動画があるんですけど、これが面白くてね。ほかにも「もちまる日記」というとってもかわいい子猫の動画がアップされているんですが、これを見ながら和んでます(笑)。

 1990年から始めた東京音楽大学の講師も今年で31年目。現在は客員教授として学生にギターやアンサンブル、全体のアレンジについて教えていて、現在もリモート授業が続いています。Zoomを使って学生とレッスンしていて、だいぶ対面に近い感覚でできるようになりましたが、タイムラグがあるからみんなで一緒に演奏できないんですよ。これがリモート授業で一番悔しいですね。

 やっぱり30年以上教えていると、学生も時代によって変化していて。昔は鼻にピアスを付けたりタトゥーを入れたり見た目のアピールが強い学生が多かったかな。でも授業になるとみんな真面目でしたよ。今は特にコロナ禍で学生同士の集いが減っている分、お互いに影響し合ってないからなのか割と見た目も普通ですね。あとは私と学生の年齢がどんどん離れていって、昔だったら僕がやっている音楽に近いところにいて親近感がありましたが、今の学生はYouTube世代で彼らから見ると僕なんかがやっている音楽は逆に新鮮みたいです。

 演奏技術で言うと、今の子たちはものすごくレベルが高い人が多い。「それどうやって弾いているの?」って思わず僕から聞いてしまうくらいすごいテクニックを持っている人もいますね。もちろん今も昔も練習が嫌いっていう人はいますよ。ちなみに僕も練習は嫌いでした(笑)。ただ、やらないとできないから練習してましたね。自分で書いた曲をプレイヤーとしてどうやったら格好良く演奏できるかって自分で自分を鍛えていました。

 ギターは特にこの年齢になると手を故障しない程度に練習してます。ただしトレーニングしないとあっという間に弾けなくなっちゃいますから。特にライブ前はきっちり調整していく感じです。プロ野球のピッチャーと似ているかもしれませんね。50年以上ギターを弾いているので自然と体の一部になっていますけど、やっぱり10日以上ギターを触らない日が続くとちょっと不安になりますね。でも旅行のお供にギターを持って行くなんてことはありませんから(笑)。

 ギタリストとして、「こういう演奏がしたい」と思ったことができなくなったら引退を考えますね。若いころは、かなりゴリ押しで「どーだ! 見たか!」みたいな。そんなお客さんに見せつけるような演奏が気持ち良かったのですが、今はもっと深みのある1つの音を大切にするようなシンプルな演奏や和音の響きの美しさとかを追求しています。

 12月に東京、名古屋、大阪でCasiopea 3rdの冬のライブが控えていて、通常の演奏と歪んだ音を出さないクリアな音の演奏という2種類の演奏に挑戦します。これまで40年以上にわたり数えきれないくらい人前で演奏をしてきましたが、カシオペア自体、昔からかなりハイリスクな演奏をするグループなんでね。今もドキドキで毎回緊張します(笑)。

 特に瞬間的に音を合わせたりする場面なんかは、年齢とともに「ちょっと大変」が「とっても大変」になってきました(笑)。でも、いつまで持続できるか、その緊張感が演奏家としての醍醐味(だいごみ)でもあるんです。作曲家としては、もっと内容の濃いものを作ってたくさんの人に聞いてもらいたいという願望があるんですが、60代に入ってその両方を満たすような集大成的な場面に差し掛かったのかなって思います。

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